〇はじめに
今回,本校の取り組みと現在の取り組みに至るまでの変遷についてまとめた。現在,探究活動の方向性について悩んでいる学校の参考になると幸いです。また,本校の先生方に対しても,この記事を読むことで,現在の探究に至った過程を知っていただく機会にしてほしいと思い書きました。

〇沿革
宮崎第一中学高等学校は4つの学科からなる。大学進学を目指す文理科は中学校から6年間の中高一貫教育。部活も勉強も頑張る普通科,商業系の国際マルチメディア科,工業系の電気科がある。 今回は中学校の総合的な学習の時間(以下総合)と,高校文理科の(以下文理科)の探究の時間(以下探究)について述べる。 さらに中学校,文理科の詳しい説明をする。中学校は3クラス編成で,文理科は中高一貫の習熟度編成の3クラスと高校からの編入組の4クラス構成である。 学力層について述べる。トップ層は東京大学・京都大学,難関私立大を目指す層。下位層は地方国公立を目指す層まで幅広い。そのため,中学校では国数英で習熟度別の授業。文理科では習熟度でクラス編成を行っている。
現在の総合・探究について述べる。中学校は学年で総合の内容を統一している。文理科は学年で内容を統一しても,学力の幅が大きく,同じ様な内容での実施が難しい。そのため,探究は各クラスに委ねられている部分が大きい。
〇現状と課題
高等学校で総合学習が始まった約20年前,最初は手探りで著名人を招いて,講演会を行う,大学の施設に見学に行く,などを行っていた。課題として常に,「自分事としてとらえる」ことの出来ない時期が続いた。総合選抜,学校型推薦でも肌感覚であるが,力のある生徒が合格し,ギリギリ(と思われる)生徒は不合格になる事が続いた。さらに近年では,挑戦する生徒数自体が減ってきており,教員間でも,いわゆる“コスパが悪い”と考えるのか,一般入試を生徒に勧める雰囲気が醸成されている様に感じ,この流れを打開したいと考えている。 本校では,総合選抜,学校型推薦において, 「出願者を増やす」こと, 「旧帝大以上の合格者を出す」ことを目標に掲げ,目標達成のために必要と思われる,以下の仮設を立て,対策を考えた。
〇仮説1:手続きの煩雑さを回避出来ればよいのではないか
一般入試と総合選抜,学校型推薦の大きな違いは,生徒個人はもちろん,担任や推薦担当の負担増である。それに加え,一般入試では普段の授業から教科担任がある程度力の把握が出来るのに対し,総合選抜,学校型推薦は合否の見極めが難しく,合格すると思った生徒が不合格になることも多。また,宝くじ的な部分も否定出来きず,結果,不合格で一般入試に回るのであれば,最初から一般入試を目指した方が良いという考え方も理解できる。さらに,小論文指導,志望理由書,推薦書と高校3年夏からではもちろん,高校3年進級時からでも準備の時間は限られ,一般入試への勉強時間を削ってしまっている。このような事から本校では総合選抜,学校型推薦への出願が遠のいているのだと考える。 そこで以下の対策を考えた。 まず,志望理由書,小論文指導,推薦書の早期からの意識付けである。「先取りすればよい」や「早くからやればよい」という安易な事を言いたいわけではなく,学校全体として見た時に,早くから生徒はもちろん,教員にも意識付けをする事には一定の効果があると考える。そこで3年間の教員の準備として,「令和7年度 探究年間計画(文理科)」(資料❶)を準備した。 調査書の記入準備をデジタルデータで残すなど,またまだ改善の余地はあると思うが,入力が義務となると,それは仕事を増やすことになるので,検討中である。このスケジュールではやることは決まっているが,やることが多すぎて煩雑になってしまい,浸透には至らなかった。
〇仮説2:目標の欠如
総合,探究を始めた当初は特に学校としての目標設定をしておらず,入試の方法の一つとしか考えていなかった。そのため熱を入れる教員と,そうでない教員の差が大きかった。その影響を受け,入試結果にも年度でばらつきがあり,「推薦,AOは大変」という雰囲気になっていったと考えられる。 そこで本校では昨年度,目標として,「国公立大学の受験者増」を目標に掲げた。1年間の様子であるが,浸透には至らなかったと思う。原因として考えられるのは仮説3に詳しく述べるが,具体的な方法の欠如であると考えられる。目標は決まり,準備もしやすくなったが,何をどうすれば国公立大学に総合型選抜,学校推薦型選抜で合格出来るのかを示せていなかった事が原因だったと思う。 そこで次に目標として設定したのは,「旧帝大以上の大学に総合型選抜または学校推薦型選抜で合格者を出す」である。昨年度,九州大学,筑波大学に合格者を出した教員の意見で,「旧帝大クラスに総合型,学校推薦型で合格者を出すためには,前提として,教員が勉強しなければならない。そして生徒に書くという作業をさせなければならない。」という仮説が設定された。詳しくは仮説3で述べる。
〇仮説3:具体的な方法の欠如
仮説2でも述べたが,「国公立大学の受験者増」の目標設定後に具体的な方法がそれぞれのクラスに任されていたため,結果や目に見える変化には繋がらなかった。ただし,昨今の大学入試のニュース報道などの影響も大きいが,総合型選抜,学校型推薦への意識付けには一役かったと思う。そして,「旧帝大以上の大学に総合型選抜または学校推薦型選抜で合格者を出す」の目標を掲げ,具体的な取り組みを以下の3点に定めた。
①中学校の総合,文理科の探究を進めるうえで,柱となるような,困ったときに何をすれば良いのか,指針となるものの設定
・啓林館: 課題研究メソッド 2nd Editionを使用

これまでの中学校の総合,文理科の探究は調べ学習の類になってしまうことが多く,それは中学校初期段階には必要な事であるが,探究になってもそれでは困る。そこで中学校段階では「読む」こと,「書く」事に力を入れ,それぞれの体力を付けたい。体力をつけながら,調べたり,まとめたりの方法も同時に学ばせたい。その時の教科書として啓林館の課題研究メソッドを採用している。探究用のテキストはたくさん出版されているが,こちらのテキストは中高ではもちろん,大学入学後,社会人になってからも辞書として使わせたい内容になっているので,生徒に1人1冊持たせたい。 また,書く力の醸成のためには,読む力が必要である。まず,読む力を育成するために20年ぶりに中学校に読書の時間を復活させた。また,教員による「第一中学校高校に入学したら読んでほしい100冊」(資料❷)を編集し,読む力を,学校を挙げて付けたいと考えている。ちなみに,「第一中学校高校に入学したら観てほしい映画50」(資料❸)もあります。
②旧帝大クラス合格を出すためには職員も力をつけなければならない。研修を職員の力で行う
「現在,各種研修を自前で出来るように,教頭,進学指導部を中心に取り組んでいる最中である。外部に頼ることは悪いことではないが,どうしても”お客様”になってしまい,「自分事」になりにくい。例えば教員間での実施した勉強会の例として,先日は高2学年の教員が展開した小論文指導の実践や,生徒の取り組みを見ていて気づいた点などを高1学年の教員と共有する会をもった。今後は,大学のゼミで輪読をしたように,教員がテーマごとに(例えば環境,社会,科学,国際……)学んで得た知見を発表し,互いに学び合う会を定期的に実施していこうと考えている」。
③これまでの文理科の強みである「面談力」を軸に生徒との対話を通してともに総合,探究を進める
ここまでは全く触れていなかったが,文理科の強みは「面談力」にある。各学校にそれぞれの強みがあるが,本校には生徒と教員の「2者面談」をたびたび行う空気がある。昼休みや放課後,探究に取り組んでいる間など,教員は時間を見つけて生徒と「話」をしている光景がある。 内容は進路指導や成績など様々であるが,そこで重視しているのは,教員が指示をしたりアドバイスを与えることを中心とするよりは,教員との対話を通して生徒自身が考え,行動に移すためのきっかけづくりの場として,生徒の成長を促していくという点である。総合,探究の活動においても,自走できる探究者をどんどん増やしていけるよう,面談を生かしていきたいと考えている。
④志望理由書はもちろん,小論文や推薦書にも必要な「書く力」を生徒,教員ともに身につける(資料❹)
〇現状の課題
本校は,最初に述べた通り,進学系,スポーツ系,商業系,工業系が混在し,中高一貫の生徒もいる。学力層も幅が広いため,様々な行事で,どうしてもクラス単位で動かざるを得ない部分が多い。例えば,大教室で学年全体に探究を!!とやった際に基本的な事や,全員に必要な事などのレベルは浸透させやすいが,細かい部分や,レベルの高い話やレベルを合わせたい話,丁寧に説明したい部分がどうしてもクラスで異なってしまい,大教室での一斉指導や学年で同じ取り組みは生徒の力をつけにくい。そのため本校はマンパワーを頼るしかない。そのため,これまでもこれからも,紆余曲折がありながら,総合・探究も変化していかなければならないと思う。生徒を育てるための教員のパワーを大きなものにするために,学年間のコミュニケーションや学年を越えて共有ができるような雰囲気づくり,空気づくりをこれまで以上にすすめていかなければならない。教員間のコミュニケーションの機会を増やし,各担任や教科担任のマンパワーを強くしていきたい。そのためにそれぞれが学問の基本である「書く」こと,そしてその前提にある「読む」ことを今まで以上に大切にしていきたい。





























































