1.はじめに:本校の教育方針
米子北斗中学校・高等学校は,校訓「自学自律」の精神を教育の柱に据えています。自ら学び,考え,判断し,責任を持って行動できる人材を育成することは,変化の激しい現代社会において非常に重要です。本校では,困難な課題を解決していく「生きる力」を身につけ,多様な課題に対してその力を発揮し,社会の各分野で指導的役割を果たせる人材の育成に取り組んでいます。 特に,現代を生き抜くために必要な「変化への適応力」「問題解決能力」「創造性」「コミュニケーション能力」の4つの力を育むため,その礎となる「よい思考」と「よい習慣」の醸成に重きを置いています。社会がどのように変化しようとも,常に何が最善かを自分事として捉え,適切に判断し行動する姿勢を,6年間の学校生活を通じて生徒一人ひとりが着実に身につけていくことを目指しています。

2.6年間の探究学習で育む二つの視座
本校の探究学習は,中高一貫のメリットを活かした「サイエンス」と「グローカル」の二つの柱で構成しています。そして,物事をより深く,広く捉えるための「視座」を高めることを一番の学習目的としています。 「サイエンス」では,科学的な視点から物事を詳細に分析する力を養い,「グローカル」では,英語教育や多文化交流,そして地元の良さを再発見するふるさと教育を通じ,地域と世界のつながりを学びます。 中学生の時期に,「なぜ?」と問い,根拠を持って丁寧に検証していく探究のメソッドを習得します。その上で,高校生ではより専門的なテーマに挑み,自らの考えを社会へ発信し,将来の進路へつなげる発展的な探究学習へと進んでいきます。
3.実践事例
① 中学1年:シネコポータルによる生物多様性学習
中学1年生では,日本初となる「シネコポータルを活用した生物多様性学習」に取り組んでいます。これは,耕さず,肥料や農薬も使わない「協生農法」を,シネコポータルとよばれる校内の小さな圃場で実践しています。生徒たちは,さまざまな植物や生き物が共生する環境を自らの手で作る中で,多彩な疑問を抱き,グループディスカッションをしながらリサーチクエスチョンを立てていきます。 この活動では,単に植物を育てるだけでなく,観察と記録,そして根拠に基づいた検証という科学的なプロセスを重視しています。また,高校3年生まで活用する「課題研究メソッド2nd Edition」をこの段階から使い始め,探究活動のメソッドを体得します。生命や地球環境の不思議に触れながら,科学的な視点で自然界を捉える力を養う,本校ならではのユニークで重要な探究学習の導入プログラムとなっています。

② 中学2年:上淀廃寺跡を拠点とした考古学探究
中学2年生の探究フィールドは,地元米子市にある国指定史跡「上淀廃寺跡」です。地域の歴史遺産を拠点とし,出土品や遺構から当時の社会や文化を自分たちで推察していく活動を行っています。教科書で学ぶ「歴史」を,目の前にある物証から読み解くプロセスを通じて,論理的な思考力と郷土に対する誇りを育みます。この学習では,文系の視点からどのように問いを立て,証拠を集めて検証していくかというスキルを学びます。古い瓦の破片や残された壁画などから当時の技術や人々の想いへと想像を広げる経験は,多角的な視点を持つきっかけとなります。地域の方々や専門家のアドバイスも受けながら,自分たちの住む場所がいかに深く重要な歴史を持っているかを実感し,過去から現代へと続く社会の成り立ちを深く考察する機会としています。

③ 中学3年:世界と地域をつなぐグローカル探究
中学3年生では,探究学習の舞台を海外へと広げ,韓国への探究旅行を実施しています。生徒たちは事前学習として自分たちの興味に基づいた仮説を立て,現地でのアンケート調査や学校交流を通じて,その検証を行います。実際に異文化の中に飛び込み,現地の人々と対話することで,他国への理解を深めると同時に,国際社会における自分たちの役割を客観的に考えるようになります。 帰国後には,学んだ成果を地域へ還元する活動「プクトゥチルソンフェア」を開催します。韓国の魅力を伝えるための企画や運営を生徒自身が行い,地域の方々に紹介するこの取り組みは,情報の整理力や発信力を高める場となります。世界で得た気づきを地域に伝えるという循環の中で,まさに「グローカル」な視座を体験的に習得し,中学における探究の集大成としています。
④ 高校1年:未来を創るアントレプレナーシップ探究
高校1年生では,社会の課題を解決し,新たな価値を生み出す「アントレプレナーシップ(起業家精神)」について学びます。社会にどのような困りごとがあるのかを見つけ出し,それを解決するための具体的なアイデアを形にしていくプロセスを体験します。既存の考え方に縛られず,自由な発想で「社会をより良くするためのプラン」を練り上げる探究活動です。 生徒たちは,自らのアイデアを単なる夢に終わらせず,どのようにすれば社会に実装できるかを,ビジネスの視点も交えながら検討します。この過程で,他者と協力して合意を形成する力や,複雑な社会構造を理解する力が養われます。失敗を恐れずに挑戦する姿勢や,自ら価値を創り出すことの喜びを知るこの探究は,将来どのような職業に就いたとしても必要とされる,力強い実践力を育む場となっています。
⑤ 高校2年:主体性を形にする個人課題研究
高校2年生は,これまでの探究活動の集大成となる「個人課題研究」に取り組みます。生徒一人ひとりが自らテーマを設定し,先行研究の調査,仮説,検証,考察を経て,学術的な形式での論文作成に挑みます。関西探究旅行では,自らの意思で大学の研究室や企業へ赴き,専門家へインタビューを行うなど,主体的な行動力が求められる場面も多くあります。 高校2年生の探究活動の目的は,論理的な記述力と,客観的なデータに基づいた分析能力を磨くことにあります。自らの問いを徹底的に掘り下げていく中で,粘り強く真理を追究する姿勢が身につきます。完成した論文は,校外のコンテストなどに積極的に応募し,社会からの客観的な評価を得る機会としています。自ら立てた「問い」に対して納得のいく「答え」を導き出す経験は,生徒にとって大きな自信となっています。
⑥ 高校3年:学びを継続させる個人進学探究
高校生活の最終年となる3年生では,これまでの探究の成果を次のステージへつなげる「個人進学探究」を行います。高校2年次までの研究内容を振り返り,大学でどのような学びを深めたいのか,将来どのような形で社会に貢献したいのかを明確にしていきます。受験を単なるゴールとするのではなく,大学入学後も研究を継続していくための基礎知識や専門的な視点を盤石にします。 この段階では,自身の学びのプロセスを客観的に整理し,言語化する能力がさらに高まります。6年間の探究活動を通じて得た「視座」を携え,自律した一人の人間として,自信を持って未来へと踏み出していくための,最終的なブラッシュアップ期間として位置づけています。
4.学校全体で取り組む知的な教育環境
各学年の活動に加え,本校では学校全体で探究心を刺激する仕組みを整えています。
- 北斗Schola(スコーラ): 土曜日に実施される,教科の枠を超えた知的探究心を高める学習プログラムです。
- Pitchトーク: 教科横断的な言語活動として,自分の考えを論理的かつ簡潔に伝えるスキルを磨きます。
- 探究留学・語学留学: シアトル(米国)やフィリピンへの留学制度を設け,現地の文化や課題に直接触れることで,グローバルな視座を飛躍的に高める機会を提供しています。
- 探究学習成果発表会: 1年間の学びの集大成として,全校生徒が互いの成果を共有し,多様な視点からフィードバックし合う場となっています。

5.最後に
本校の探究学習は,中高6年間を通して「サイエンス」の緻密な目と「グローカル」の広い視野を往来し,その視座を高めながら,生徒の思考を深めていくオリジナルカリキュラムです。 「なぜ?」という素朴な疑問から始まり,地域や世界での実践を経て,最終的に自分自身の専門性を見出すまでの過程は,生徒一人ひとりを大きく成長させます。これらの活動を通じて培われた「よい思考」と「よい習慣」,そして確かな「視座」は,たとえ時代が変化しても,彼らが自分らしく,社会のリーダーとして歩んでいくための道しるべになると確信しています。 今後も翔英学園 米子北斗中学校・高等学校はこれからも,生徒の知的好奇心を大切にし,地域社会や世界と連携しながら,質の高い探究教育を推進していきます。





























































