1.はじめに
「災害級」と報じられた異例の豪雪。2026年1月の積雪167cmは青森市にとって戦後初の記録であり,2月1日には183cmに達し,公共交通機関であるバス,鉄道がすべて運休となる事態に至った。そして,生徒の安全確保という観点から,1月21日(水)から2月4日(水)まで臨時休校措置が取られ,自宅学習を余儀なくされた生徒たちへの学習機会の確保として,一部の教科担当者によるZoom授業が実装されたという経緯である。本記録は,授業者である私と生徒のZoom授業に関する振り返りアンケートの結果から,対面授業との比較およびZoom授業の今後とその可能性を考察したものである。
2.本校の生徒観について
本校は青森市にある公立学校であり,県内の有数の進学校である。東京大学,東京科学大学,東北大学,弘前大学など,在籍する生徒の進路先は多岐にわたり,文部科学省からスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定を受け,校内外,国内外のフィールドワークを積極的に実施し,探究学習にも力を入れている。本校数学科では,各大学で担当者を割り振り,個別添削指導,口頭試問・面接指導を行っている。令和7年度3学年理型では,4月から習熟度別の「2クラス3展開」授業を行い,私は「最難関大志望者クラス」を担当した。
3.実施時期と指導対象・内容について
大学入学共通テストが終わると,2次試験対策授業に移行する。上記の「最難関大志望者クラス17名(理型)」を通年で指導し,2次試験対策授業では8名(文型4名,理型4名)を指導した。
Zoomによる遠隔授業を実装したのは,その真っ只中である2月2日(月)から2月23日(月)までであり,使用教材は,通年でオリジナルテキスト「最難関大理系数学(全3冊)」「最難関大文系数学(全4冊)」である。3年前のコロナ禍をきっかけに,自分の担当授業と大学入試問題解説を動画撮影し,You tubeにアップロード・一般公開(チャンネル名:∴全体集合Uスケ)するようになり,アーカイブという形で生徒が適宜復習できる環境を作っている。そのため,今回のZoom授業にあたり,新たに準備する機材はなかった。その点で,本校生徒にとって配信された授業動画の視聴・復習は日常であり,Zoom授業への抵抗は特になかったようである。
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4.Zoom授業の概要
(1) 必要物品(下写真の通り)
・スマートフォン(Zoom授業用)
・スマホスタンド
・iPad (配信画面確認用)
・Wi-Fi環境
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他教科の場合,作成したスライドを用いて,授業プリントを進めることができるが,数学の場合はリアルタイムでの板書・解説が必要である。そのため,手元撮影が必要となったが,iPadでは影ができてしまい見づらくなったため,私物のスマートフォンを使用した。(普段の授業は私物のスマートフォンで撮影している)それゆえ,勤務校でのWi-Fi接続ができず,全授業を自宅から配信する形をとった。実装してみて,Zoomによる生配信で必須だと思ったのが配信画面確認用のiPadである。手元に集中すると板書が画面外に出ることが多々あり,気付かないからだ。板書をしながら,逐一iPadで配信画面を確認しなければならない。
(2) 時間割
2次試験対策授業に移行してからは,「最難関大理系数学」,「最難関大文系数学」を担当していた他,生徒数名に個別指導を入れていたため,そのコマすべてでZoom授業を行った。
ミーティングIDとパスワードは全授業で共通しているため,あらかじめ提示しておくことで,生徒たちは問題なく入室できた。
9:00 ~ 9:50 最難関大数学(文理共通)
11:00 ~ 11:50 個別指導
13:00 ~ 13:50 最難関大理系数学
15:00 ~ 16:00 個別指導
17:00 ~ 17:50 質問受付
当日,受講できない生徒に対しては,配信をHD設定で録画し,アーカイブという形で動画のURL・パスワードを共有した。
ただし,無料版の場合,1回の配信が上限40分であり,スマホ本体への保存となる。有料版(Zoom-Pro)の場合,配信時間の上限はなく,クラウド上に動画ファイルが自動で保存される仕様である。
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(3)集団授業 授業者 (私):画面・音声をオン
受講生徒 :画面・音声をオフ
50分の中で適宜演習を入れて進めるため,受講生徒全員の進捗把握で重宝したのが右図の「リアクション機能」である。
「方針が浮かんだ人はリアクションお願いします。」
「方針が浮かばない人もリアクションお願いします。」
「最後まで解き終えた人はリアクションお願いします。」
というように用いた。直接見えない生徒の表情を顔スタンプで確認できる点は,クラス全体を同時に机間指導している感覚に近い。
(4)個別指導
授業者 (私):画面・音声をオン
受講生徒 :音声のみオン
集団授業よりも自由度が高い。提出された解答をその場で添削して共有することができる他,生徒が途中で質問しやすく,即対応できるのが最大のメリットである。普段の個別指導とほぼ変わらない感覚である。
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5.指導側から見た対面授業とZoom授業
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6.生徒側から見た対面授業とZoom授業
アンケート結果(1)(2)(3)
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(4)Zoom授業の板書について改善してほしい点はありますか?
・赤ペンの板書が見づらかったです。
・指数が見づらく,3乗が2乗に見えることがありました。
・+,―,=,≡の判別がしづらかったです。
・定積分の上端下端,対数の底が少し見えにくかったです。
・見えにくい部分でも,口頭で数式を話してくれるので理解できました。
(5)Zoom授業全体を通して,感想,要望はありますか?
対面授業との比較
・対面授業では座席位置により板書が見にくいことがあるが,Zoom授業では見やすくて快適でした。
・一人称視点に固定した板書なので,とても見やすかったです。
・休日や学校外でも受講できるのはありがたいです。
・対面授業よりもテンポが良く,より多くの問題数をこなせるのが嬉しかったです。
・対面授業の方が質問しやすいと感じますが,自宅でも先生の解説が聞けたことがとても良かったです。
・対面授業よりも,近い距離で板書を見ることができるため,非常に良いと思いました。
・状況に応じた授業形式をとるのは良い試みだと思いました。
・先生の記述が直で見ることができて,新鮮で分かりやすかったです。
今後の課題
・自分が書き終わる前に,次の板書にいってしまったことがあるので,確認してから進めてほしいです。
・他の科目のオンライン授業と時間が被りそうになったので,教科担当者同士で時間割を共有してほしいです。
・iPadだと仕方のないことですが,1人で受講していると孤独を感じるうえ,目が疲れてしまいます。
・リアクションで答えるのが少々もどかしいです。
7.おわりに
今回のZoom授業・対面授業との比較を通して,改めて各授業の在り方を考えることができた。「授業は対面授業に限る」と話す先生方が多い中で意外だったのは,アンケート項目の「どちらの授業を受講したいですか?」に対する結果が半々であったことである。Youtubeによる解説動画配信,映像授業が学習ツールとして確立されている今日,生徒にとってZoom授業は受け入れやすいものだったのかもしれない。ただし,「Zoom授業を受講したい」と回答した生徒は皆,数学が得意または計画的に自学し自力解決できる生徒であったことは注視しなければならない。やはり,数学が不得意または解答解説を見ながら解きなおす学習に終始する生徒の中では「対面授業を受講したい」という回答が多かったため,対象生徒の学習段階に応じて使い分ける必要があるのは間違いない。
一方で,授業者側の準備としては,配信環境の整備・機材の確保が大前提となり,教職員間の連携が必須となるため,「明日から実践しよう!」と思い立っても実装は難しい。また,Zoom授業をはじめとするオンライン授業には,対面授業とは異なる緊張感があるため,慣れが必要である。さらに,生徒とのコミュニケーションが取りづらいという点でも,「普段から対面授業をしている先生だから受講しよう」,「この先生の授業は受けたい」という教師・生徒間の信頼関係も重要だと考える。個人的には,Zoom授業でのお互いの声しか聞こえない環境下だからこそ,明快な解説,洗練された板書計画が必須となるため,授業者の教科指導・授業展開のスキルアップにもつながると感じた。
以上の授業実践記録が,各先生方が現行の授業を振り返りながらより良いものに高めていただける一助となれば幸いです。様々な授業スタイルの中から先生方ご自身と生徒たちが最も納得し,学んでいけることが重要だと思いますので,正解はないと考えます。全国津々浦々,指導環境は様々であり,生徒の希望進路・特性も多岐にわたりますが,「数学を通して生徒を育てる」という目的は変わりませんので,お互いに刺激し合いながら,より良い教育を目指していければと思っております。ご精読ありがとうございました。





























































