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「音読の個別指導が難しい」という課題を,Pocket Speakingで解決 〜 生徒の主体性を引き出す音読指導の実践 〜

大阪府立桜和高等学校
東山 淳子

2026.08.03

1.はじめに

本校は,大阪府初の教育文理学科として創立5年目を迎えました。「高い志を持ち,次世代の大阪を創生する人材の育成」を教育理念に掲げ,生徒一人ひとりが主体的に学び,他者と協働しながら課題解決に取り組む力の育成を目指しています。                                                      英語科においても,他者と協働するうえで大切なコミュニケーション能力の育成を重視し,日頃からペアワークやグループワーク,プレゼンテーション活動を積極的に取り入れています。英語コミュニケーションの授業は週3時間実施しており,1年生は『LANDMARK English Communication I』,2・3年生はそれぞれ『LANDMARK Fit English Communication II』『LANDMARK Fit English Communication III』を使用しています。                                                       Pocket Speakingは導入3年目を迎え,現在では全学年で活用しています。授業だけでなく,家庭学習やパフォーマンステストの準備など,さまざまな場面で生徒の学習を支えるツールとして定着しています。(写真1)

(写真1)

2.導入のきっかけ

本校では,授業づくりのベースになっている,本校独自の「英語CAN-DOリスト」(資料1)を活用しながら,「読む・聞く」だけでなく,「話す」力の育成にも力を入れています。そのため,教科書本文の音読活動を重要な学習活動の一つとして位置付けています。                                              しかし,授業時間内に全員の音読を個別に確認することは容易ではありません。また,生徒によって練習量や到達度に差が生じやすく,教員が一人ひとりの取り組み状況を把握することにも限界がありました。さらに,発音や音読に苦手意識をもつ生徒の中には,人前で読むことに抵抗を感じる生徒もいます。家庭学習がなかなか定着しない生徒が多数を占める本校において,どのようにすれば生徒に少しでも家庭学習の時間を確保させることができるのかが,以前からの懸念事項となっていました。こうした課題を解決し,生徒が自分のペースで繰り返し練習できる環境を整えたいと考え,Pocket Speakingを導入しました。

・生徒が手元で「できたところ」「できなかったところ」を瞬時に視覚的に確認できる

・ゲーム感覚で気軽に,主体的に取り組める

・教員側も授業外の学習ログ(音読時間や回数)を確認でき,観点別評価(主に「主体的に学習に取り組む態度」)へ反映しやすい

・利用料が月100円程度と,非常に導入しやすい価格帯である

・パフォーマンステストの1つとして,音読テストに時間をかけずにできる

上記の点において,生徒側と教師側の双方にメリットがありそうだという教員間の共通認識から,本校での活用がスタートしました。自動採点機能によって生徒自身が学習成果を確認できることや,教員が学習状況を把握しやすいことも,導入を後押しした大きな理由でした。

3.授業実践例

各学年の進度や特性に合わせ,授業内活動,パフォーマンステスト,定期考査前や長期休暇中の課題としてなど,工夫して取り入れています。本稿では代表的な2つの事例を紹介します。

事例1:個人戦・団体戦 × ポケスピ

教科書本文の「内容理解」をしっかり行った後のタイミングで実施します。パフォーマンステスト前の自主練習(自宅学習)の成果を競うとともに,その取り組み度合いを「主体的に学習に取り組む態度」として評価に組み込んでいます。(写真2)

(写真2)

 【事前活動(帯活動などでの仕込み)】

本活動の実施前に,授業内ではリピーティング,リード・アンド・ルックアップ,シャドーイング,サイトトランスレーション(ペアでの日→英変換)などを行います。さらに,パワーポイントで投影した本文を映画のエンドロールのように音声に合わせてスクロールさせるなど,生徒が飽きずに反復練習できる工夫をしています。

【当日の手順】

1.課題箇所の抽選

教科書のLessonとPartが書かれた「くじ」を生徒の目の前で引き,音読箇所をその場でサプライズ発表します。

2.個人戦(3分間の個人練習 + 本番)

各自Chromebookやスマートフォンに向かって練習・録音。                                                       Wi-Fiの通信負荷軽減および端末への集音性を高めるため,教室内で「縦の偶数列」と「奇数列」に分け,交互に録音を実施します。時間内に複数回実施し,すべての点数を採点表に記入します。(写真3)

(写真3)

3.団体戦(3人1組のグループ活動)

3人1組で机を合わせ,録音用端末(Chromebookやスマートフォン)をグループに1台用意します。                                          10分間の作戦・準備時間の中で,読み方の最終確認や,読み上げる順番を戦略的に決めて練習します。                                                   本番では端末に向かって1文ずつ交代でリレー音読を行い,グループスコアを記録します。こちらも時間内に複数回挑戦し,全結果を採点表に記入します。(写真4)

(写真4)

4.振り返りシートの記入

活動を通じて,気づいたことを振り返り用紙に記入します。

【生徒の様子と反応】

個人戦では,各自が端末に向かって淡々と録音を継続しました。自宅練習の成果を発揮しようと,真剣に自分の発音と向き合う姿が印象的でした。一方,団体戦では,端末にスコアが表示されるたびに教室のあちこちから歓声や悲鳴が上がり,大変な盛り上がりを見せました。「友達に迷惑をかけたくない」という心理から,自然と互いにアドバイスし合う「学び合い」の空間が生まれていました。また,教員が「もっと練習しなさい」と促さなくても,生徒同士が自然と「ここの発音を直すともっと点数が上がるよ」などとアドバイスし合う,質の高い「教え合い」の空間も生まれていました。生徒が自ら繰り返し音読するようになりました。ゲーム性を取り入れることで,音読練習が「やらされる活動」から「挑戦したくなる活動」へと変化しています。

【生徒の感想(抜粋・要約)】

多くの前向きなフィードバックが得られた一方で,ICTならではの技術的な課題もありました。

●学習効果・モチベーション

〇「何度もやり直す中で,自分の苦手な発音や,単語の語尾にある複数形のsなどの付け忘れに画面の赤字で気づけた」

〇「お手本を細かく聞いて真似ることで,イントネーションや強弱,音のつながりを意識できるようになった」

〇「音読を繰り返すことで,結果的に教科書の文章や単語をほぼ暗記することができた」

●協働学習の価値

〇「1人だと限界があるけれど,チームだと発音の仕方を教え合えて点数が伸びた。双方にメリットがある。」

〇「みんなの英語の発音が良くて刺激をもらった。真似したい。」

〇「リレー音読はメンバーそれぞれの速度が違うので,テンポやペース配分を合わせるのが難しくも楽しかった。」

 ●システム面への要望・課題

〇「声が小さくて未読になってしまったので,声量を意識したい。」

〇「通信環境のエラーやバグで点数が反映されず,時間が足りなくなって苦戦した。」

事例2:ジグソーリーディング × ポケスピ

文章の意味を正しく理解すること(読む)と,正確に伝えること(話す)を組み合わせた活動です。(写真5)

(写真5)

【当日の手順】

1.ホームグループの結成

4人1組になり,1つのレッスンの各パート(A・B・C・D)を1人1パートずつ担当として割り当てます。

2.エキスパート活動

同じパートを担当する生徒同士で新たにグループを作ります。まず,うまく読めるように,改めて内容や文法をグループで確認します。その後,ポケスピを使ってお手本の音声を確認しながら,ワークシートに発音のポイントを記入します。

3.ジグソー活動(ホームグループへの還元)

元の4人組に戻り,自分がエキスパート活動で学んできた読み方のポイントを,他のメンバーに対して実際に音読をしながら解説します。教員は机間巡視しながらサポートを行います。

4.振り返り

グループの代表が全体に気づきを発表し,個人の振り返りシートを記入します。学習内容や気づきを共有することで,学びを定着させています。

【生徒の様子と反応】

「自分が理解して,正しく発音・説明できなければグループのメンバーが困る」という心地よい責任感が生まれるため,生徒たちの集中力は極めて高く,自発的な取り組みが見られました。自分が担当部分の「専門家」として説明する必要があるため,生徒は自然と内容理解や音読練習に真剣になります。

互いに教え合う活動やポケスピの活用には,次のような効果が見られました。

●理解の深化:説明し合うことで,教科書本文の内容への理解がより深まった

●技能の向上:自分のペースや少人数で発音を確認できるため,正しく声に出す力が伸びた

●心理的効果:人前で話す不安が和らぎ,音読へのハードルが下がった

このように,単なる音読活動で終わらせず,読んで理解したことを相手に伝える総合的な言語活動へと発展させることができました。

4.成果と課題(考察)

【成果・良かったこと】

1.家庭における「自学自習」の習慣化と音読量の増加

「パフォーマンステストや団体戦がある」という外発的動機からスタートした生徒たちですが,練習を重ねることで「スコアが伸びる楽しさ」を実感したとの声が多く聞かれました。結果として,家庭での自発的な音読習慣の定着に繋がりました。特に,発音に自信のなかった生徒からは,「何度も練習できるので安心して取り組める」「得点が上がると達成感がある」といった声が聞かれました。

2.自然発生的な「教え合い・学び合い」の定着

団体戦やジグソー活動を通じて,単なる単語の読み方だけでなく,イントネーションや音の消失まで指摘し合う姿が見られました。AIが提示する「赤字(改善ポイント)」が,効果的な振り返りとして機能していました。

3.英語学習に対する心理的ハードルの低下と成功体験

個人の最高得点を更新した喜びや,チームで高得点を出した一体感など,教室内が「英語を楽しむ空気」に包まれ,コミュニケーション活動へのポジティブな態度が養われました。

4.教員の指導・評価の効率化

教員にとっても,生徒の学習状況をデータで把握しやすくなり,個々の課題に応じた指導や公平な成績付けに繋げやすくなりました。

【今後の改善点】

1.楽しさを超えた「定着度」の測定

ゲーム感覚の盛り上がりを維持しつつ,それが4技能の定着(特にスピーキング力の向上や定期考査の記述力)にどう繋がっているか,データの蓄積と検証を進めていきます。

2.学内Wi-Fi環境の確認とエラー対策

一斉アクセスによる通信遅延や,音声が途切れるトラブルへの対策が必要です。列ごとの時間差実施などの運用の工夫に加え,システム的な負荷を減らす対策が課題です。

3.AIの採点基準を理解し,高得点に満足せず「伝わる発音・リズム」を生徒自身が追求する力を育成します。

5.おわりに

ポケスピの導入は,本校の生徒にとって家庭学習の定着と英語学習へのモチベーション維持において,強力なきっかけとなっています。 英語教育において,教科書本文を大切にした音読の地道な指導は,時代が変わっても欠かすことができません。最新のICTツールを授業の組み立てにうまく取り入れることで,生徒たちが楽しみながら,かつ自立した学習者として英語コミュニケーション能力を向上させていけるよう,今後も授業改善を重ねていきたいと考えています。

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