1.はじめに
本校は,創立148年を迎える県内有数の伝統校である。「重厚な教養主義」を教育理念に掲げ,知識の習得にとどまらず,多角的な視点から物事を捉え,自ら判断し,発信する力を育成する教育を重視してきた。行事や部活動にも主体的に取り組む生徒が多いのも特徴である。2008年には千葉中学校が開校し,1学年320名の定員のうち,80名は千葉中学校からの進学となっている。授業においては,知識の定着にとどまらず,批判的思考力や表現力の育成に重点を置いている。ライティングの授業では「正確な英語を書くこと」だけではなく,「自分の考えを英語で論理的に発信できること」を目標とし,日々の授業はこの目標に繋がるようデザインされている。大学入試への対応はもちろんのこと,その先のアカデミックな場や社会でも通用する,実践的な英語力を育成することを重要な課題と捉えている。
2.スマコレ導入を決めた理由
英語で論理的に発信する力を培うためには,継続的・習慣的に英語を書く機会を確保することは必須である。しかし,生徒一人一人のエッセーを添削し,適切なフィードバックを返すためには,多くの時間と労力を要する。十分な添削ができなければ,生徒は「書きっぱなし」の状態になり,自分の課題や改善点に気付くことができないというのがライティング指導の大きな壁であった。 そのような中で,海外の方に添削をしてもらえるスマートレクチャーコレクション(以下スマコレ)に出会い,導入を決めた。特に魅力を感じたのは,提出した英文を丁寧に添削してもらえるだけでなく,フィードバックを基にリライトを行うことで,語彙や表現,構成を定着させることができる点である。 また,最近では生成AIを利用しての添削が可能ではあるが,スマコレは実際に海外の添削者が英文を読み,コメントを返してくれる。生徒にとっては,課題として英文を書くというよりは,実際のコミュニケーションとしてライティングに取り組むことができる。この「伝える相手が存在する」という経験は,生徒の学習意欲を高めるだけでなく,英語を学ぶ意義を実感する機会にもなっているように思う。 アウトプットの機会を継続的に確保し,質の高いフィードバックがもらえ,リライトの機会があるという表現力育成のための要素が揃っていること。そして,実際のコミュニケーションとして英語を書く経験ができること。この二点が,本校でスマコレを導入する決め手となった。 導入後の反応としては,採点者からの英語での感想が励みになる,様々なトピックについて考える機会になる,ライティング力が伸びている実感があるという声が生徒から多く聞かれ,継続して使用することとなった。
3.授業における使用方法
スマコレを,本校では2通りの方法で使用している。 一つ目は,自習課題としてトピックと締め切りを設定し,生徒が自分で取り組み,リライトまでしたものを学校に提出させる方法である。定期的に書く機会の確保を目的としている。 二つ目は,ライティングの授業にてクラスで一斉に取り組む方法である。授業で使用するトピックは,オンライン提出課題とは異なるものを選定している。昨年度は,2学年のライティングの授業において,年間5回,授業1時間を丸ごとスマコレのライティング活動に充てた。授業にてスマコレに取り組む目的は,より質の高いライティングを行えるようにするため,エッセーの型を理論として学ぶこと,また,クラスメートの作品も読み,互いに刺激を与えあうことである。 スマコレを使用する回の授業は以下のような流れで行う。まず,テキストに載っているJapan Timesの記事を読み,扱うテーマに関する社会的な背景や最新の動向を把握させる。さらに,教員が独自に調査した資料や情報も加えながら解説することで,生徒の興味・関心を高め,自分の意見を形成するための土台を築く。その後,教材に沿ってブレーンストーミングや構成づくりを進める。 ブレーンストーミングや構成の検討は,すべてペアで行う。本校の英語の授業では,対話を通して考えを深めることを重視しているためである。互いの意見を共有し,質問し合いながら考えを整理することで,一人では気付かなかった視点を得ることができ,より深みのある内容を書くことができる。 アウトラインが完成した後は,教員が作成したサンプルエッセーを全員で読み,全体の構成を確認する。トピックセンテンス,サポートセンテンス,コンクルージョンセンテンスといった基本的な概念を改めて確認し,論理的な文章構成を意識させる。また,そのトピックで使用できそうな語彙やフレーズも紹介し,「使ったことのない表現も入れて書いてみよう」と声を掛けることで,発信語彙の拡充を促している。 書き終えた後は,ペアで互いの作文を読み合い,チェックリストを用いて内容や構成,文法などを確認する。その後,教員とALTが分担して作文に目を通す。ただし,この段階で最も重視しているのは採点ではなく,「優れた作文を見つけること」(表1:女性管理職の割合)である。
以下,優れた作文である「女性管理職の割合(表1)」の基となった教員作成のサンプルエッセー【女性管理職の割合】も合わせてご覧ください。
スマコレには同級生の作文を閲覧する機能がないため,授業においては優れた作品を積極的に共有することを大きな目的としている。その後の授業にて,選定した優秀作品を紹介し,「なぜこの作文が良いのか」を具体的に解説する。論理展開の巧みさ,語彙の選択,文法の使い方,読み手を意識した表現などを丁寧に取り上げると,生徒は非常に真剣に耳を傾ける。同級生がこれほど質の高い英文を書いていることを知ることは,生徒にとって何より大きな刺激となり,「自分もこのような英文を書きたい」という学習意欲につながっている。 教員は作文を評価するだけでなく,一つの作品として価値を認め,その良さを言葉にして伝えることを大切にしている。芸術作品を鑑賞するように優れた表現を紹介し,その魅力を共有することが,生徒の表現力をさらに伸ばすモチベーションとなっているように思う。

表1
4.導入後の変化
特に大きく変化したと感じるのは,生徒が「何を書けばよいか」と迷う場面が減ったことである。エッセーライティングの基本的な型が身に付いたことで,生徒は論理的な構成を意識しながら,自信を持って英文を書き進められるようになった。 その成果は外部模試にも表れている。自由英作文の平均点は前年の学年を大きく上回り,県内1位という結果を収めた。授業で学んだ内容をスマコレで繰り返し実践し,添削とリライトを積み重ねてきたことが,生徒一人一人のライティング力向上に大きく寄与したと考えている。 現在,3年生は全国の高校生が参加するエッセーライティングコンテストにも取り組んでいる。高校生にとって決して易しい課題ではないが,2年生までにスマコレで積み重ねてきた学習経験が土台となり,全員が臆することなく挑戦できている。継続的なアウトプットとリライトの積み重ね,そして授業にて培った論理的な後ろ盾が,生徒の「書ける」という自信を育み,より高度なライティングへ挑戦する原動力となっている。
5.おわりに
本校は,特に英語教育に特化した学校ではない。しかし,生徒の多くは卒業後,英語を使って仕事をしたり,海外で学んだり生活したりすることを自然な選択肢の一つとして捉えている。また,単に「通じればよい」という英語ではなく,より適切で豊かな表現を追求しようとする姿勢が,多くの生徒に見られる。 そのような生徒たちにとって,スマコレは単なる添削ツールではなく,自分の考えを英語で発信し,それが相手に伝わる経験を積み重ねることのできる生きた学習の場となっている。添削やリライトを繰り返すことで,「書ける」という実感が自信につながり,よりよい表現を自ら模索する姿勢も育まれている。 本校では,授業で論理的な文章構成や表現方法を学び,スマコレで個々の課題に向き合いながら実践を重ねるという,それぞれの特長を生かした学習サイクルを構築してきた。授業とスマコレを補完的に組み合わせることで,自分の言葉で表現する力を着実に伸ばしていると実感している。今後も,生徒が自信を持って英語で自分の考えを発信し,多様な人々と対話できる力を育成できるよう,授業とスマコレそれぞれの強みを生かしたライティング指導を継続していきたい。
【参考文献】
・啓林館 ライティングメソッド Advanced 2nd Edition
・啓林館 ライティングメソッド Standard 2nd Edition





























































