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論理的な文章の組み立てへ ー ライティングメソッド『Legacy』の活用 ー

東京都立西高等学校
会坂 一馬

2026.05.07

1.はじめに

「英作文,とくにエッセイライティングの力をいかに伸ばせるか」。これが,担任学年の生徒が入学して以来,一貫して抱く強い期待である。複数の学校で指導してきた経験上,リーディングに関しては指導方法がある程度,定着している場合が多い。生徒にとっても自学自習で,一定時間をかければ能力伸長が見えやすい。リスニングも数多くの教材があり,授業で使用するのが定番である。スピーキングを苦手とする生徒が多いものの,ALTやJETと触れ合う機会もあり,オンライン英会話も普及し,取り組み方次第ではいくらでも訓練できる時代になった。                                                                                                                                               それらと比較すると,ライティングは,指導者側が相当な計画を立てない限り,「なんとなく書いて終わり」「練習問題やっただけ」という状況に陥りやすい。そして,入試や英語の各種検定試験向けて必要性が生じた生徒は,個別添削を依頼するという流れになる。                                 学年全体の指導をどうすべきか。入学前に一つの大きな課題であると認識したうえで,以下のような計画を立てた。

2.一年次は100語の作文に慣れ親しむ

学年全体(8クラス320人)のライティング強化に何ができるのか考えた結果,以下のような流れを計画した。                                                                                                   一年次は,長文問題集で読んだテーマに関連した題目で,100語程度の感想や意見文を自由に書く。長文に慣れ始める学年なので,論理性については作文では求めすぎず,まず読解の中で意識させることを優先する。その上で,ライティングでは100語の作文を書くための抵抗感をなくし,短時間で書き上げることを目標とした。                                                                             実際の授業では,長文解説が終わった後,作成したワークシート(資料1)をJET(アメリカ人)に使用してもらい,授業内で追加情報や背景説明があり,関連したお題を提示し,その場で100語程度の作文を書かせる。提出は学習支援クラウド「ロイロノート・スクール」を使用した。これを年間9本こなすことで,一年次秋には生徒たちもある程度,エッセイライティングに慣れてきた。一方で,論理的な文章を意識した書き方ではないので,二年次の目標は「いかに論理的に,アカデミックに書けるか」となっていく。

3.三カ年計画の中でのLegacy導入

二年次の授業計画を立てる際に,スマートレクチャーコレクションシリーズ(以下,スマコレ)のライティングメソッド『Legacy』(プランA=5題)の使用を組み込んだ。理由としては二点あり,一つ目はライティング指導の授業準備をゼロから始めず,信頼できる教材をベースにしたいためである。一年次のライティング指導に向けた準備が,授業2コマの内容に対して時間がかかりすぎることがあった。やりがいがあり,興味を持って取り組める準備ではあるが,授業の中心となる活動にはなり得ないのも事実。負担軽減のために,エッセイライティングのための教材を探していて,本校二年生に適した内容とレベル(英検準1級~2級)が『Legacy』であった。                                                               二つ目の理由は,本格的なライティング指導をする際,JETに過度な負担をかけずに,添削サービスつきのスマコレを使うためである。学年320人規模の添削を,年間通しておこなうことはかなりの負担となる。JETに協力してもらいつつ,過酷な作業を押しつけることも避けたい。その点で,有料であってもスマコレの利用価値は高いと判断した。

4.授業計画から実践へ

(1) JETとともに授業計画を打ち合わせ

一年次2月から3月にかけて,別のJET(化学の博士号を持つニュージーランド人)と綿密な授業打ち合わせを進めた。論理・表現II(2単位)では,2クラス3展開の習熟度授業を5人の日本人教師と1人のJETで実施している。JETは,各展開教室を順番に回る。したがって,生徒は授業3回のうち1回でJETの指導を受け,その時間がエッセイライティングとなる。JETが英語で授業をし,日本人教師はチームティーチングで臨む。5人の日本人担当者同士でも,授業の様子や進め方について日常的に情報交換をし,準備できる点は,学年全体指導のうえで大きな強みとなる。                              その基本的な枠組みの中で,『Legacy』のうち,Lesson 1,4,6,8,10を教材に選定した。トピック内容を吟味するだけでなく,年間計画としては,語数で慣れている100語から練習を始めて,最終的に200語まで段階的に無理なく難度を上げていく狙いがある。次に,一つのレッスンを3時間(Lesson 8と10は,授業回数の関係で2時間。以下,各時間をPartで表記)で完結する授業展開を考え,実践した。

(2) 実際の授業展開例(LegacyのLesson 4)

Lesson 4を例として取り上げる。エッセイの問いは,The number of immigrants to Japan is likely to increase in the coming decades.  Introduce and explain both the benefits and the drawbacks of living in a multicultural society. (90-110 words)である。                                              Part 1は導入なので,講義形式に近い。Legacyの文章を予習で読ませ,Exerciseの答え合わせをする。ワークシート(資料2)を配布し,JETはパワーポイント(資料3)を教室内でスクリーンに提示しながら,講義をする。必ず毎時間,エッセイのトピックを確認し,問いに即したエッセイが書けるよう,生徒に働きかける。その後,関連する文章(JETの書き下ろし。生徒に難解な語彙や表現の有無も,事前の打ち合わせで確認済み)を授業内で読み,トピックに対する見識を深めつつ,その場でiPadを利用して簡単な調べ学習もし,背景知識を増やす。生徒同士のディスカッションも必ず入れ,スピーキング活動も随所に取り入れる。ワークシートのCまでをPart 1で終える。                                                     Part 2は,初稿に取り組む時間となる。Part 1の復習から,さらに見識を深める情報を提供する。ワークシートDとEを進め,FのOutlineの説明に移るが,GでDraftを書き始めるにあたり,アカデミックなエッセイを書く上での技術として,必ず課題を設定した(表1)。Lesson 4では,引用の仕方を学び,エッセイの中に “According to <A>,”や “A study by <A> showed…”を必ず盛り込むように指示を出す。

表1

Draftは,Part 2の授業内で終えることが理想であるが,習熟度別クラスのうち標準クラスでは書き終えない生徒もいたので,その場合は宿題とした。Draftは,ロイロノート・スクールで提出させ,Part 3までにJETが簡単に添削し,返却した。JETに負担をかけすぎないことを重要視していたが,JETの厚意に甘える結果になった。                                                                      Part 3では,あらためてエッセイの問いを確認し,Draftが適切な解になっているかどうかを生徒に意識させる。次に,JETが添削している中で気づいた傾向や誤りをGeneral Feedbackとして紹介する。Common Errorsの列挙も,生徒たちがエッセイを修正する際に,大きな役割を果たす。JETが多数のCommon Errorsを含むエッセイ見本を提示し,生徒たちがiPad 上で訂正していく活動も,非常に効果的である。その後,同じ視点で生徒が自身のエッセイを見直し,別生徒と交換して確認した後に,最終稿の書き出しとなる。JETが添削したDraftを,Part 3で意識した視点を持って書き直すので,格段にエッセイがよくなる場合が多い。Part 3の授業内で書き上げ,スマコレに提出することが望ましいが,時間が不足する生徒も多く出た。その場合は,宿題として,期日を設けてスマコレに提出させた。

(3) 事後指導と成果の確認

スマコレでの添削が終わると,生徒は講師のコメントを見て,リライト作業をする。ただし,リライトまでの指導が徹底できていないので,今後の課題になる。JETが一度添削をしたうえでスマコレに提出しているので,やや特殊な形態になっていることは否めない。書きっぱなしにしないための工夫と指導が必要になることは,いかなる場合も意識したい。                                                          定着度を測るために,年間5回の定期試験では必ず,類題のエッセイを出題した。JETが採点するので,授業で学んだ技術がどの程度,理解し,短時間で書き上げられるのかを確認することは可能だ。Lesson 4の類題は,以下のとおりである。                                           In recent years, the number of international tourists visiting Japan has increased significantly.  In 2023, a total of 25.1 million people visited, this increased by 47% to 36.9 million in 2024.  While some locals welcome the increase in tourism, others are worried about the negative impacts of overtourism.                                                   Introduce and explain one benefit and one drawback of restricting the number of international tourists to Japan.  Write you answer in English in 60-80 words.                                                                                Content,Clarity,Structureの3観点,計10点で採点はおこなう。一般的な模試よりもはるかに難度の高い定期テストではあるが,多くの生徒がエッセイの解答欄を埋めてくるので,制限時間が短い中で瞬時に構成を考え,文章をつなぐ能力は着実に向上した。                                   一つの成果として,客観的に紹介できるデータがある。二年次(2025年)11月の進研模試において,「表現力」(和文英訳と,短いエッセイ)の大問で,学年平均得点率が66.8%であった。校内の過年度比較でも数値が大きく上向いただけでなく,進研模試の同一回を受験した他都道府県の公立トップ校の得点率よりも,5~10ポイントも上回った。一度だけの結果で勝敗のような見方をするのは危険であるが,生徒たちが1年半かけて慣れてきたエッセイライティングに対して,相当な自信を持って臨んでいることは喜ばしい限りである。

5.オンライン英会話でのアウトプット活動

本校は,東京都教育委員会から「Tokyo Metropolitan Global Education Network School Premier 20(以下,「GE-NET 20」)」に指定されている。以下のサイトで,4.2を参照していただきたい。(https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/school/content/global)                                            東京グローバル人材育成指針に基づく東京都におけるグローバル人材育成に係る取組の充実を図る事業の中で,授業内で実施する生徒対象のオンライン英会話がある。この授業を,『Legacy』で仕上げたエッセイのアウトプット場面とした。生徒自身のエッセイをフィリピン人講師と共有し意見交換したり,フィリピンの状況や日比の二国間比較をディスカッションしたりする(写真1)。その活動では,時間をかけて調べて書いたエッセイを頭で考えて終わるのでなく,あらためて音声で伝えることで内容を確認し,表現を覚え直し,講師との質疑応答でさらに見識を深める機会となる。ライティングとスピーキングの両活動を融合させ,エッセイの総仕上げとして位置づけた。英会話の事前準備段階でエッセイを見直す際に,スマコレにログインさせ,英会話向けのワークシートにエッセイを書き写させることにもつながった。その点で,スマコレやエッセイの事後指導として,オンライン英会話を有効活用できた。

写真1

6.おわりに

二年次のエッセイライティング指導が終わるにあたって,授業実践記録として公開することは,本校だけでなく,全国多くの学校の生徒たちに,少しでも『Legacy』を使った授業の経験を還元できればという願いと関係している。ライティング指導に特化し,豊富なトピックを有する教材『Legacy』に巡り合い,優秀なJETと年間を通して試行錯誤しながらも楽しく授業準備をし,5人の同僚で常に情報交換しながら足並みをそろえてきた環境があってこそ,一年間の指導を終了できた。高校二年生対象とはいえ,英語学や英米文学を専攻する大学生向け講座に匹敵するくらいの授業を展開してきた。三年次には,演習形式でさらに多種多様なエッセイに取り組む予定となっている。                                                   高校生のライティング指導は,まだまだ改良の余地がある領域だが,AIの発展により自動翻訳は精度が急激に高まり,書くことの重要性が軽んじられる未来が待っているであろう。それらの技術は状況に応じて活用すべきではある。ただし,現時点ではAIには出しづらい個性や特色が,ヒトの考えた文章には必ず現われる。そうした文章を書ける素地を,高校生のうちに培ってもらいたい。

 

 

 

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