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Practice Makes Progress! スマコレを活用して「伝わる英語」を書く!

神奈川県立大和高等学校 
本郷 真由美

2025.05.28

 

1.はじめに

「継続は力なり」と言いますが,啓林館のオンライン英作文添削システム「スマコレ」を導入して2年,生徒たちが着実に英作文の力を伸ばしていることを実感しています。練習すればするほど成果が出ることを日々目の当たりにし,パラグラフ・ライティングの機会を増やしたことは正解だったと確信しています。今回,大和高校での実践事例を紹介することで,英作文指導に悩む先生方と情報を共有できれば幸いです。

1.導入の経緯・・・オンライン導入でパラグラフ・ライティングの機会を増やす
神奈川県立大和高校は,「知・徳・体ともにそなえた円満にして実践力のある人材の育成」を教育目標としており,生徒達は学習だけでなく,行事や部活動にも積極的に取り組んでいます。四年制大学への進学希望者が多く,神奈川県の学力向上進学重点校エントリー校に指定されている伝統校です。また,平成31年から神奈川県の教育課程研究開発校(「総合的な探究の時間」に係る研究)の指定を受け,論理的思考力や創造力の育成にも力を入れています。
英語教育においても,論理的思考力や判断力・表現力の育成に取り組んでおり,中でも自身の意見を表現するライティング活動は重要な位置を占めます。本校では1年生から「自身の意見を理由や例をあげて説明する」パラグラフ・ライティングの指導を行っていますが,パラグラフ・ライティングは「テーマ設定」「資料作成」「添削」と,教師の負担が大きいのが課題でした。そんな時,「スマートレクチャーコレクション(以下 スマコレ)」について知り,学年全体で導入することで,パラグラフ・ライティングの機会を増やすことができました。スマコレを選んだポイントは以下の3点です。

・リライト機能
・自分のペースで作文に取り組める
・文法・語彙だけでなく,構成へのアドバイスや励ましのメッセージがある

特に重視したのはリライト機能です。英作文は書くだけでなく,添削後に書き直すことで,修正内容をより深く理解し,記憶に定着させることができます。間違いを「他人事」ではなく「自分事」として捉え,能動的に学習することで,同じミスを繰り返さなくなると考えました。
また,オンラインで提出できるので,生徒は自分のペースで作文に取り組むことができます。生徒のタイピングのスピードは個人によりかなり違うので,授業中だけで書き終えられない場合でも,じっくり考えて後で提出することができます。
さらに,海外の添削者からタイムリーなフィードバックを受けられるのも魅力でした。添削者からのメッセージも,生徒の学習意欲を高める効果があると考えました。

2.授業での活用例

(1) 指導方針
導入初年度は,まず学年全体の英語担当者で「スマコレ」の扱い方を話し合いました。授業で扱うか,宿題にするか,成績評価に含めるか,どの観点で評価するかなど,方針を年度初めに決められたことで,その後の指導の統一がしやすくなりました。
スマコレには教科書に準拠した「Vision Quest」コースとパラグラフ・ライティングを重視した「ライティング・メソッド」コースがありますが,本校では1年次は「ライティング・メソッド」Standard コース,2年次は「ライティング・メソッド」Advanced コースを選びました。「ライティング・メソッド」コースには,約70ページのナビゲーションブックが教材としてついており,パラグラフ・ライティングの指導に役立つテンプレートが豊富な点が,本校の目的に合っていました。回数は,1,2年ともに年間 5回コースを選択し,授業内での活用を重視しました。これは,パラグラフ・ライティング指導の中で「アイデアの出し方がわからない。書き方がわからない。」という生徒が多かったためです。ナビゲーションブックを活用することで,ブレインストーミングを行い,構成のコツをつかむことができます。授業でブレインストーミングと構成指導を行い,個別にライティングに取り組むという流れを確立しました。

(2) レッスンの選択
スマコレは前期に2回,後期に3回実施しました。1年次ではなるべく教科書の内容と関連するトピックを選びました。2年次では,大学入試や英語4技能試験を意識して,社会問題に関する条件英作文(指定語5語の中から2語を選んで書く方式)を多く選びました。例えば,「日本の地域活性化にはどのような方策が有効か」というトピックでは,地域問題への関心を高め,多角的な視点から意見を書く練習になりました。

1年目に選択したレッスン。教科書のトピックに関連するものを中心に選びました。

1年次 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目
Writing
Method
Standard
Lesson1
日本のおすすめの
観光地
Lesson3
修学旅行は海外
がいい?
Lesson 6
子供のインターネットの使い方
Lesson8
地域社会に潜む問題
Lesson9
自転車事故を
減らすには
語数 60~80語 60~80語 80~100語 80~100語 80~100語

2年目に選択したレッスン。社会的な問題に関する条件英作文を多く選びました。

2年次 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目
Writing
Method
Standard
Lesson 1
ドローンによる
課題解決
Lesson 6
地方の医師不足
Lesson 7
大学教育の無償化
(条件英作文)
Lesson 8
再生可能エネルギー(条件英作文)
Lesson 10
地域活性化
(条件英作文)
語数 80~100語 120~150語 120~150語 120~150語 120~150語

(3)授業案
実際の授業は,以下のような時間配分・手順で行いました。本校は65分授業で,最初の10分は単語テストやリスニングテストを実施し,残りの約50分をスマコレに充てています。
Standardコースのナビゲーションブックには,トピックに関連した語彙リストがついていたので,生徒は作文の中ですぐに使えて便利でした。例えば,「自転車事故を減らすには」というトピックでは,関連語彙リストに「law」「fine」「violation」などの単語が掲載されており,生徒はこれらの単語を参考にしながら,自分の案について具体的に記述することができました。
Advancedコースにはトピックに関連した読み物「Column」が載っていますが,「蚊が媒介する感染病を塗料の技術で防ぐ」工夫に関する話など,興味深い内容も多く,ブレインストーミングで活用できました。例えば,「ドローンによる課題解決」というトピックでは,関連コラムにインドネシアでのドローン利用に関する記事が掲載されており,生徒は記事の内容を参考にしながら,日本での活用について考えることができました。
また,「模範作文」が管理者サイトからダウンロードできるので,事前にダウンロードしておいて印刷または配信して提示しました。書き出し方やつなぎ言葉の使い方等,良い例文を真似ることで,自然な英語表現を学べるようにしました。

<教師が準備するもの>
① ナビゲーションブック
② 模範作文(管理者サイトからダウンロード)
③ PCとモニター(電子黒板)
<生徒が用意するもの>
① PC
② ナビゲーションブック
<授業案>(一例)

題材:Lesson 1 次の問いに80語~100語程度の英文で答えなさい。
How can we use drones to solve problems in Japan?
「ドローンで日本の問題をどのように解決できるか。」
展開 学習活動と内容 教員の指導と留意点
導入
5分
・最新のドローンの映像を見せ,教師が英語で簡単にドローンの説明をする。
・生徒はペアでドローンについて自分が知っていることを話し合う。
・画像・動画を活用し,簡潔に説明する。
・ドローンの様々な画像を投影して話し合いを促す。
展開
20分
ナビゲーションブックを使った活動
・ドローンの活用例について読む(Column)
・ブレインストーミング
・付属動画の視聴
・テンプレートを活用し,論理的な文章構成を学んだ後,下書きを書く。
 

・ペアやグループで話し合い,多角的な視点を養う。
・ナビゲーションブックに直接書き込ませる。

ライティング
20分
・ダウンロードしておいた模範作文を配付する。
・オンラインで書き始める。
・提出前に下書きを保存する。
・模範作文は参考程度にし,書き出しや表現の手本とする。
・必ず一度下書き保存するように指示する。
提出または保存
5分
・提出。時間内に提出できなかった生徒には,提出期限を示す。再度「下書き保存」をしておくように指示する。 ・語数が少なくても多すぎても提出できないので,必ず提出済みになっているか確認させる。
翌週・・・添削状況をチェックし,リライトをする時間を設ける。(時間が取れない場合は,リライトの提出期限を提示する。)

(4)評価
提出とリライトを評価対象としています。(作文の内容を得点化はせず,提出したかどうかだけを評価)リライトも評価に入ることは生徒にも前もって提示しています。観点「主体的に学習に取り組む態度」に,提出とリライトの両方を加えています。学年全体の提出状況一覧がCSVファイルで一括ダウンロードできるので,Excelに変換して集計しています。

3.スマコレ活用で発見!学年の弱点分析

使ってみて初めて「これは役立つ!」と思ったのが,スマコレのフィードバック機能です。これは,生徒の英作文を文法・語彙の観点から分析し,生徒別,クラス別,学年全体で集計します。具体的には,文法項目(前置詞,冠詞,時制など),語彙レベル(CEFR-J)が分析されます。これにより,学年の弱点を把握し,指導に活かすことができます。
例えば,右の表はあるレッスンの学年フィードバックですが,この結果から,前置詞の間違いが多いということが分かりました。そこで,授業で前置詞の説明を扱ったり,定期テストでも前置詞の穴埋めを出したりと,前置詞に重点を置いた指導をすることができました。

4.添削者との交流会

スマコレでは,添削者からの温かいメッセージやプロフィール紹介がありますが,本校ではこの2年間,添削者との交流会を実施しました。この交流会は,生徒が普段オンラインで添削を受けている添削者と実際に交流することで,英語学習へのモチベーションを高め,異文化理解を深めることを目的としています。
1年目はバングラデシュの添削者の方,2年目はネパールの添削者と運営管理の方に来ていただきました。どちらの方も,自国の文化や特色についてプレゼンテーションをして下さり,生徒の質問に丁寧に答えていただきました。例えば,バングラデシュの添削者の方は,伝統的な衣装や文化について紹介してくださいました。ネパールの添削者の方は,ネパール語の文字や,ネパール料理について紹介してくださいました。バングラデシュでは,公用語はベンガル語ですが,若者の多くがビジネスレベルの英語を話すことができることや,ネパールの私立高校では英語のイマージョン教育が盛んなことを聞いて,多くの生徒達が驚いていました。普段なじみの少ないアジアの国々の実情を知り,日本との違いを考える良い機会になりました。
参加した生徒は,英語の添削者と実際に出会い,英語で会話できたことで,自分の意思を伝えたいというモチベーションをさらに向上させました。また,添削者からスマコレの感想を尋ねられると,「いろいろな国の人に添削してもらえて面白い。」「自分の作文に対して,励ましの言葉がもらえて,嬉しい。」とのことでした。添削者との交流は,生徒・教員にとって,英語についてだけでなく,異文化について学ぶ貴重な経験となりました。
この交流会を通して,生徒たちは英語学習へのモチベーションを高めるだけでなく,国際的視野を広げることができたと思います。

5. スマコレ導入の成果

スマコレを導入した結果,語彙力だけでなく,論理的に書く力と表現力が伸びました。
① 語彙力の向上
レッスンごとに語彙レベルがCEFR-Jで表示されるので,比較することで生徒の語彙力の変化や指導効果を検証できました。CEFR-Jとは,外国語の習熟度を測る国際的な基準であるCEFRを,日本の英語教育向けに調整したものです。下のグラフは半年間の生徒の語彙スコアの変化です。グラフを見ると,語彙スコアの伸びがわかります。これは授業の中でのライティング活動を通じて,生徒の表現力が段々と向上していることを示しています。それが実際に数値として表れてくることで,「書く」ことによる語彙力の定着と向上を確かめることができました。

最初の語彙スコア

半年後の語彙スコア

② 論理的に書く力の向上
自分の考えを整理して「論理的に書く」力が目に見えて向上しました。パラグラフ・ライティングを何度も経験したことにより,基本的な文章の構成パターンが自然と身につき,社会的なテーマでも論理的な文章を書ける生徒が増えました。

③ 読み手を意識した文章表現
添削者は毎回,生徒の作文に対して,添削だけでなく温かいメッセージを送ってくれます。例えば,日本を紹介した文に対して,”Wow, that’s a nice choice! Kyoto is such a nice place because there are many historic buildings there.”のような具体的なコメントが返ってくるので,生徒はまるで手紙の返事をもらったみたいな顔で読んでいます。自分の書いた文を読んで,コメントしてくれる人がいることを意識して,なるべくわかりやすく,そして読む人の心に届く文章を書こうとする姿勢が身につきました。

外部模擬試験の結果からも,学年の特徴として「表現力が強み」であると分析され,上記の成果が客観的にも裏付けられました。

6.終わりに

生徒の英作文を添削していると,「伸びたな。」と実感する瞬間が何度もあります。それは,単に文法的な正確さが増したというだけでなく,「相手やトピックを意識して,いかに分かりやすく伝えるか」という意識が芽生え,それが文章に表れるようになった時です。2年生の後半から,そのような生徒が急増し,彼らの成長に目を見張るばかりです。相手に合わせて,自分の意見を分かりやすく伝えようと努力する姿勢は,グローバル化が加速する現代社会において,生徒たちにとって非常に重要なスキルであると確信しています。書く先に,読んでくれる人がいる。この意識が,生徒たちに変化をもたらしたのではないでしょうか。
“Practice makes perfect.” という諺がありますが,完璧(Perfect)に到達することは容易ではありません。しかし,「書く」という実践の積み重ねが,生徒たちを着実に前進(Progress)させていることは間違いありません。”Practice makes progress.” この言葉を胸に,今後も生徒たちの成長をサポートしていきたいと思います。

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