1) はじめに
今年で教職歴12年目であるが,日々手探りの状況である。今回は私が授業・課外等でやっていることについてであるが,私は現任校に来て3年目である。現任校に来て1年目の年に教職10年目を迎えた。悉皆研修の年であるため,自分自身今までの頑張りと思っていたが,異動直後で生徒の実態が分からない。現任校の生徒理解やどのようにして生徒の学力をより一層伸ばすことができるか必死に考えた年であった。現任校は普通科・理数科と別れているが,どちらも1年生で物理基礎が2単位,2年生で物理(選択者のみ)が2単位,3年生で4単位である。そのような状況の中,1年生で教科書を生徒に思考を促しながら教科書を終わらせなくてはならず,なかなか実験を重点的にできないという悩みがある。さらには,他にも2年生で2単位であるため,3年生のスタートは波動の単元からとなり,進度が首都圏の中高一貫校に比べて遅い。そのことから今まで通り,板書中心の授業でもいいのかと考えた時に,進度をしっかり終えることがメインになっており,生徒の理解や興味関心を深めるには工夫が必要であると感じた。そこで,より多くの生徒に我々の考えが行き届くような手立てとして,授業の様子や問題の解説動画を生徒に共有できればと考え,ICTを用いてやってみようと考えた。以下は私の実践例である。
2) 授業・課外における実践例
(1) 授業での実践例 ~運動の法則をGoogleスプレッドシート~
まず,この単元は生徒実験の準備が大変である。物理の教員であれば多くの方が1~3年まで担当するため,なかなか授業準備が難しい。実習の先生がいらっしゃる学校でも物理の分野を苦手とする方が多いため,結局,自分自身で準備しなければならないことが大いに考えられる。私自身少しでも,教員負担を減らすことと,より生徒自身が思考できるようになって欲しいという思いがある。実験のプリントを作成し,特に煩雑なのが解析の部分である。私自身もそこまでICTが得意なわけではないが,県の教育センターにて実施されている「ICTを用いた実験・実習生講座」に参加した際に,Googleスプレッドの活用を御教授いただいた。実験のデータを解析する手段としてGoogleスプレッドを利用することは有効であると考える。プロジェクターがある学校が多いので,全体共有も非常に容易になった。

(実際に使用してみて)
Googleスプレッドシートを利用してから,大きく2つのメリットがあると感じている。
① 生徒が考察しやすくなった
→ 数値を入力すると,グラフ上に自動で座標がプロットされていくため,視覚化され班内での考察が非常に良い。
② 教員が各班の進捗状況を把握しやすい
→ 従来の実験であれば教員の机間巡視が必要であったが,Googleスプレッドシートはリアルタイムで教員生徒間で情報共有ができるため,この班がうまくいって,支援が必要な班が可視化された。
良い面もある一方で,デメリットもある。

私自身,最初の時間にこのことを知らずに授業を進めたところ,教員は入力できるが生徒の端末からは入力できないということが起きた。事前に共有の部分を生徒も編集できるよう権限設定をしておかなければならない。
(2) Google Classroomを用いた解説動画の提供
これが一番時間を要した部分である。通常授業においては,教科書傍用問題集センサー物理基礎・物理の解説動画,課外においては受験用問題集の解説動画をGoogle Classroomで生徒と共有している。動画はGoogle Driveにアップすれば,Google Classroomに容易にアップできる。また,解説動画を作るきっかけは,
①私自身が理解していない問題を生徒が質問することも稀に起きるからである。今までの経験上,教員が苦手とする分野はどうしても説明が雑になりがちである。それでは,生徒の学力が上がらないと考えた。
②生徒が解説を読んでもわからないケースが発生することを防ぐ
私自身勉強は多少は生まれ持った才能や能力も必要であることは否定しないが,大きくは問題解決能力を問われていると考えている。分からない問題を分からないままにしたまま試験に臨むことが苦手意識を増す原因であると考えている。それ以外にも私自身が会議や部活動でなかなか日々生徒の質問したい時に,職員室に常駐できるわけではない。
以上の利用により,試験範囲の問題を書き込み式にしたプリントを作成し,その該当問題を全て解説動画としてGoogle Classroomに載せることにした。


尚,解説動画を導入したことにより,圧倒的に生徒の理解力並びに,質問も動画についての質問になるなど教員の負担が軽くなっている。しかしながら,現在の勤務校1年目の時に8月から1日4~5題ペースで動画を撮り続け,完成したのはその年の2月ごろである。本音を言えば,最初はものすごく根気もいるし何より莫大な時間を要した。しかし,一度動画を作成してしまえば,労力が減る上に,試験範囲の問題作成の際にどの問題を参考にしたら生徒の学力が上がるのか要点を押さえた問題作成ができるようになる。私自身作問は決して上手ではないので,自分が解説した問題なのでどの問題を抑えるとよい問題が作成できるかも想像しやすい。
尚,課外についても,受験用問題集を購入してGoogle Classroomにて解説動画を共有している。2年生の夏の段階で動画の提供を開始し,3年生の1学期までに,力学の分野が各自学習できるような環境づくりをしている。

(3) 終わりに
私はあまりもICTを使うことが主になって生徒の理解が疎かになってはいけないと考えている。ICTを使うはっきりとした目的が各教員にあれば間違いなく授業力は向上すると考える。しかしながら,私自身も今現在課題を抱えており,課題解決に向けて試行錯誤しているところである。
● 成績最下層の生徒
物理にそもそも目が向かなくなっている。物理に対して,どのように興味を持たせるかが悩ましい。
今後はICTを用いた授業や課外を通して,このような生徒に対しても何か良い手立てを考え,物理に対して苦手意識の強い生徒を少しでも減らしていけるようにしていきたい。
【参考文献】
・植松恒雄 他(2022年)『考える物理基礎』新興出版社啓林館
・株式会社 新興出版社啓林館編集部(2022年)『センサー物理基礎3rd Edition』新興出版社啓林館
・株式会社 新興出版社啓林館編集部(2023年)『センサー物理3rd Edition』新興出版社啓林館
・数研出版編集部(2023年)『2024重要問題集物理基礎・物理』数研出版




























































