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数学

ICT活用実践報告

常翔学園中学校・高等学校 中林 高志

1.はじめに

本校は中学・高校ともに,2017年度の新入生から一人一台のiPadによるICT教育を開始した。各教員にはiPadが配布され,教室にはマグネットホワイトスクリーン,プロジェクターが設置されている。導入から半年が経過した今,現時点で考える授業スタイルと導入メリット・デメリットをお伝えできればと考えている。

2.実践の概要

授業支援アプリとしてロイロノートスクールを利用した。“時間短縮”と“理解の共有”を考えた普段の授業スタイルの一つである。今回は高次方程式の分野にある“1の虚数立方根ω”についての1/1時限目である。

3.実践の流れ

①小テスト
②小テスト解説・提出
③本時の内容
④演習と理解共有

4.本時の場面①(小テスト)

4人1組のグループ学習スタイルで授業を行っている。グループ内には定期テスト等で成績が良かった生徒(テストごとに入れ替わることになる)をリーダー・サブリーダーとして配置しており,理解のサポート役として活躍する。この取り組みによって生徒は“次はリーダーになりたい”と考えるようになり競争心を駆り立て効果的であると感じる。

授業開始のチャイムと同時にロイロノートの機能である“カードを配信”を使って小テストを行った。開始5分まではグループ体系で静かに受験し,その後3分ほどでレクチャータイムを入れており,リーダーを中心に班のメンバーに解法のヒントを与える時間を設けた。導入以前は小テストを実施するにも席に座らせ,プリントを数えて配り行き届いたことを確認してから開始をするため数分はロスしていたと思われる。また,本実践でのロスはなく,その分困ったメンバーが質問できる時間に変わったと言える。

5.本時の場面②(小テスト解説・提出)

ロイロノートの機能にある教員が操作している画面を生徒に共有できる“画面配信”を使った解説である。あらかじめ用意した解説プリントを使って,今どこを解説していてどこが大切なのかをポインターを使って即座にレクチャーすることができ,解説プリントもカード配信を行って生徒の手元に送ることができる。

その後,カメラで自分が採点した小テストの答案を撮影し,提出機能を使って提出箱に提出をさせる。

教員としては,回収の手間がなく,提出された画像を比較するなどして,より深い理解につなげる授業展開も行える。

6.本時の場面③(本時の内容)

小テストを通して内容に関わることを確認してからの本時の内容であることから比較的スムーズに理解を落とし込めた。ここでは,機器を使用せず板書を中心にωの性質等に触れ,簡単な例題を解説した。

以前は内容を伝えるために画面配信機能を使って解説を行っていたが,解説が一度にすべて表示されると生徒は思考が停止し,解説を読む作業に変わることが分かったため理解と共に進行できる板書スタイルに変更した。これは板書の利点といえる。授業者の方を見て集中することは,常に相談できる授業スタイル取っている中でメリハリをしっかりつける役割を果たしているといえる。

私の授業では板書をノートに取ることを一切強制していない。ロイロノートのカメラ機能を使ってカードにして加筆しノートにしてまとめていくなどして,できるだけ授業に集中し,理解に努めるよう指導している。

良くない事例としてよくあることだが,ノートの細部にこだわるあまり,授業での話をきちんと聞いていない生徒が何割か現れる。このような現象は見られなくなり,今までよりスピーディーに授業進行が為せようになったのはメリットといえる。

7.本時の場面④(演習と理解共有)

板書で習った内容の問題をiPadで配信して演習する。問題を板書せずとも即時配信できるのは時間的優位といえる。このとき,班の中では例題を理解し演習にとりかかるリーダー等とそうでないメンバーがいる状態になっている。4月当初,このスタイルで学習を始める際にラーニングピラミッドの話に触れ,学習効果が最も高いのは“教え合うことである”と知っている彼らは,このタイミングで教え合いを始め,理解の共有が為される。演習をさせても手が止まって,こちらの解説を待つ生徒がいたのはおそらく例題を理解していないことが原因であると考えられる。そんな生徒が救われることになり,教えている生徒も,より効果的な学習につながり一石二鳥である。

演習の解答はあらかじめ用意したスライドを使って,画面配信を行い解説した。授業時の例題の解説とは異なり,流れが理解できていることから解説に目を取られ,こちらの伝えたいことを聞き逃すことはなく,これで十分理解させることができる。また,このスライドも配信することでノートとしてまとめていける。

その後,+αの問題としてωを利用した因数分解の問題に触れた。最終的には2003年の京都大学の前期の問題をチャレンジ課題として設定をし,解けた者は提出するスタイルで授業を終えた。上位の生徒を退屈させず,理解が追いつかないメンバーも周りからサポートを受けられるよう工夫してみた。

8.導入におけるメリット・デメリット

メリット

教員の立場で

生徒の立場で

デメリット

教員の立場で

生徒の立場で

9.最後に

iPadに限らず電子機器を生徒たちから遠ざける行為は時代への逆行だと捉えている。導入をされるのであれば生徒たちが機器とどのように付き合っていくのかを,その生徒たちに合わせて柔軟に対応していくことが望まれる。本校においても,いわゆる進学コースと普通コースとでは利用ルールは異なっている。現場の先生方の判断を考慮しつつも調べ学習や反転授業のツールとしても役立つという事実を認識して,生徒の未来の可能性を引き出す新たな“文房具”としての扱いがよいのではないだろうか。本実践が,少しでも導入検討校・導入校の方々の役に立てば幸いである。