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数学

球の体積・表面積
~実験から公式を~

兵庫県立星陵高等学校 中田 和彦

1.はじめに

数学・理科においては,今年度(平成24年度)から新学習指導要領の先行実施が始まった。この新教育課程では表題の単元『球の体積・表面積』は中学1年生へと移行されているので,高等学校では扱われないことを先にお断りしておく。

平成23年度まで実施の数学Ⅰには,単元『球の体積・表面積』が存在した。この球の体積・表面積の公式を厳密に証明するためには,数学Ⅲの学習まで待たねばならず,数学Ⅲを履修しない多数の高校生にしてみれば,生涯の中で公式を丸呑みにした形で学習を終えてしまうのが現状である。

2.実践内容

数学Ⅰ『球の体積と表面積』(旧課程)

3.目的

厳密には証明できない球の体積・表面積の公式を,実験により成り立つことを体験させること。

実験を通して公式を学ばせることにより,着実な定着を図る。

4.実験の原理

球の体積測定

… 水で満たしたバケツに球を沈めたとき,押しのけた水の量が球の体積である

球の表面積測定

… 球の表面を覆うように巻き付けたロープを面積が求められる他の図形に敷き詰めたとき,
その面積が球の表面積である

5.実験教具作りに使用したもの

  • 球(今回は,発泡スチロール製のものを使用)直径約10cm
  • PPCシート(透明で曲げやすい厚さのもの)
  • 下敷き
  • フラワースタンド
  • 漏斗
  • バケツ(球が完全に入れられる位の大きさ)
  • ふるい(上記のバケツが乗るくらいの大きさ)
  • ロープ
  • ボトル
  • スタンプ台などの補充インク
  • 接着剤(PPCシートと下敷きを接着する)
  • (100円程度で用意できるものですべてまかなった。)

6.実験教具の作成

(1)スタンド作り【図1】

フラワースタンドにロープを渡し,漏斗→ふるい→バケツの順に乗せる。

図1

(2)球の体積を測る円筒容器作り【図2,3】

  • ① 球の直径を計測する。
  • ② PPCシートで球がちょうど収まる筒を作り,下敷きに接着剤で固定する。
  • ③ 円筒の3等分線を側面に書く。
円筒容器のサイズ
高さ=球の直径=底円の直径
図2・図3

(3)球の表面積をロープで覆う【図4,5】

  • ① 両面テープを球の上半分を覆うように貼り付ける。
  • ② 半球を覆うようにロープを渦状に巻いていき,両面テープに貼り付ける。
図4・図5

(4)円の面積をロープで覆う【図6】

  • ① 下敷きに球の直径と同じ直径の円を4つ描く。
  • ② 下敷きの4つの円のうち,2つの円に全面に両面テープを貼り付ける。
  • ③ 球に巻き付けたロープと同じ長さのロープを用意し,2つの円の両面テープに貼り付ける。
図6

(1)(2)で球の体積を,(3)(4)で球の表面積を測定する。

7.実験手順

(1)球の体積測定

(2)球の表面積測定

8.授業の展開

今回は,教卓上でクラスの代表生徒に実験をさせ,教卓の周囲に他の生徒を集めた。

(1)球の体積での操作

(2)球の表面積での操作

簡単な図とともに,以下の内容を板書し,公式とした。

9.授業実践後の感想

生徒の反応は概ね良好であった。高校数学の授業は講義形式ばかりで展開されてきているから新鮮であったと思う。このときばかりは,日頃授業では見せたこともない積極性を見せてくれる生徒も多い。この授業に関しては「楽しかった,面白かった,次もこんな授業が良い」等の感想をもらえた。

私もこの実験が好きであるから,この単元を実施するたび,必ず実験してきた。その都度,少しずつ授業展開も変えたり(教卓の上で生徒の代表者を選び実験させたり,グループを作らせ,グループごとに実験器具を使って公式を導かせたり)して,同じ実験でも毎回異なる授業をしているような感覚であった。また,最初にこの実験を行ってから7年経っても毎回「こうすればもっと良かったんじゃないか」「次はこうしよう」という気づきがあり,次回の修正に役立っている。こういうところも私自身がこの実験が好きな理由だと考える。その中で,初回実験時からの相違点・改善点を挙げてみた。

初めて実施したときと今回実施の相違点

初回 今回 理由
実験に用いる球の直径を計測させた 直径の計測をしなかった 時間の短縮のため
円筒容器に溜まった水の高さをものさしで計測させた 円筒容器の側面に3等分線を入れた 公式の確認に充分であったため
直径5cm程度の球を使用した 直径10cm程度の球を使用した 誤差を小さくするため
(初回時は,3回計測し,平均値を出させた)

10.おわりに

実際に机上で証明できることに感動し,数学の面白さを感じてもらえるように授業することがまず大事と考える。一方,紙面から飛び出してやってみようという今回の試みは,生徒のためであるとは言いつつも私自身にも大いに面白さ・奥深さを与えてくれたのは間違いない事である。