高等学校の教科書・教材|知が啓く。教科書の啓林館
数学

一人一台端末を活用した数学の授業について

岡山県立岡山一宮高等学校 数学科

1 はじめに

本校はスーパーサイエンスハイスクール指定校であり,「科学知」を統合し行動するリーダー育成を目的として教育活動を行っている。そのため高校3年間で身につける力をiコンピテンシー(一宮で身につける5つの資質能力)とし次のように定めている。

  • Ⅰ 情報分析活用力
  • Ⅱ 論理的思考力
  • Ⅲ コミュニケーション力
  • Ⅳ 自律的に行動する力
  • Ⅴ 垣根を越える力

2年で行う課題探究を中心に,全ての授業で探究型授業(iコンピテンシーを身につける授業)を行っている。また,令和3年度より1,2年生全員と教員全員がChromebookを所有しており,教室の無線LANが整備されている。今回は令和2年度から数学科が取り組んでいる一人一台端末を活用した探究型授業の実践例を紹介する。

2 授業実践例

(1) Kahoot! (オリジナルクイズの作成)を用いた小テスト

主に育成するiコンピテンシー:Ⅰ 情報分析活用力・Ⅲ コミュニケーション力
Kahoot!はWeb上でゲーム感覚で学べる無料の学習プラットフォームであり,次のことができる(https://kahoot.com)。

教員のPCと生徒のPCでは画面が異なるため,教員PCはプロジェクターで教室のスクリーンに投影し,生徒は自分のPCで解答を行う。まぐれでの正解を防ぐため「時間切れ」と「わからない」を選択肢に入れている。

教員PCの画面

生徒PCの画面

(2) 予習動画を用いた反転授業

主に育成するiコンピテンシー:Ⅲ コミュニケーション力・Ⅳ 自律的に行動する力
Google Classroom に予習動画を投稿し,生徒はその動画を見て,予習を行い授業に臨む。新しい知識はすでに動画で説明しているため,授業では主に発展的な問題をペアやグループで考える時間にしている。この授業形式により生徒にとって「何を予習すればよいか」が明確になり,ほとんどの生徒が予習できるようになった。動画の長さは,扱う内容によって異なるが5分程度のものを作成している。

動画の例
動画は整理して保存されるので定期考査前等に復習として見返すことが可能。

(3) Google フォームを用いた小テスト

主に育成するiコンピテンシー:Ⅰ 情報分析活用力
主にアンケートの集約をするGoogle フォームを用いて小テストを作成した。数式が入力できないため問題は別紙にて配布。数式を含む問題文を画像データとして貼り付ければ別紙は不要である。正答率や多かった誤答がすぐにグラフ化されるので生徒の理解度をスピーディーに把握することができる。

Google フォームで作成した小テスト

(4) Google Jamboardを用いた共同学習

主に育成するiコンピテンシー:Ⅱ 論理的思考力・Ⅲ コミュニケーション力・Ⅴ 垣根を越える力
Google Jamboardとは共同編集することができるWeb上のホワイトボードアプリである。下の図は,ベクトルの分野の「点の存在範囲」を授業で扱ったものである。
35人を7つのグループに分け,各グループ用の書き込み用のGoogle Jamboardを配信する。各グループで書き込みながら,解答を考えさせた。また,生徒を指名し,書き込ませながら説明もさせた。他のグループのシートも開かせておくことで,他のグループの考え方も見られるようにした。

生徒の作成したGoogle Jamboard

(5) アプリ「Kami」を用いた復習動画の作成

主に育成するiコンピテンシー:Ⅰ 情報分析活用力・Ⅳ 自律的に行動する力
KamiはPDFに書き込みができるChrome 拡張機能である。Google ドライブと連携したファイルの読み込みや保存がサポートされている。Kamiを利用し,PC画面を録画,それを解説動画として配信した。

Kamiで書き込みをしたPDF

(6) Google Classroomで共通テスト対策

主に育成するiコンピテンシー:Ⅰ 情報分析活用力・Ⅱ 論理的思考力・Ⅴ 垣根を越える力
毎週火曜日と金曜日に数学のプリントが入ったかごが職員室前に設置される。プリントには1問だけ問題があり,プリントは20枚しか印刷しないため先着20名のみ解くことができる。問題の解答は出題された日の夕方にGoogle Classroomの3年生全員が入っているクラスに掲載される。生徒はその解答を見て答え合わせを行う(提出は行わない)。また,翌日までに他の教員によって別解や類題が投稿される。1つの問題に対して複数の解答を示すことで多角的に見方を育てることを目的としている。なお,別解については教員の有志で投稿されている。

教員Aによる解答

教員Bによる別解

教員Cによる別解

(7) Google フォームを用いた問題の振り返り

主に育成するiコンピテンシー:Ⅰ 情報分析活用力・Ⅱ 論理的思考力
問題を解いた後,その問題の「考え方」を生徒に考えさせる(Focus Goldの問題の下にある「考え方」を生徒自身に作らせるイメージ)。次回同じような問題を解いたときにどのように考えるのかを意識して3段階で記述させている。全ての問題で「考え方」を作らせており,重要な問題はGoogle フォームを用いて入力してもらう。他の生徒がどのような「考え方」を作ったのかを全体で共有し,振り返りをさせることで知識の定着と活用を図る。

生徒の作成した「考え方」

3 最後に

数学科の多くの教員がChromebook を活用した探究型授業に挑戦している。毎年11月に「いちのみや探究デー」という公開授業と教科研修会がある。日頃から探究型授業について教員同士で情報交換を行う文化が根付いているため,今回多くの実践事例を集めることができた。なお,ChromebookやWindowsタブレットやiPad等のどの端末でも実施可能な実践例をまとめている。また,いずれも無料で利用することができる。今回は実践の報告だけであり検証がまだ十分にできていない。数学の授業でiコンピテンシー(一宮で身につける5つの資質能力)がどれほど身に付いたのか,どの取組が効果的であったかを分析する必要がある。そのためにも数学の授業における「iコンピテンシールーブリック」を現在開発中である。完成したらこれを用いて検証を行っていきたい。