1.はじめに
本稿では,今年度本校特進コース「英語コミュニケーションⅡ」における「1レッスン(タイトル)1冊子方式」の授業実践をご報告いたします。まず私が授業で行いたいと考えていることを示し,次に「1レッスン1冊子方式」に至った経緯を述べます。その後,具体的な準備,実際に行った授業の展開をお伝えします。
2.授業で行いたいと考えていること
私の授業のベースには,本校で作成している英語CAN-DOリスト*資料1があります。4技能5領域に理解可能文法や産出可能文法を加え,本校が独自に3年間分作成したものです。これらのチカラをバランスよく伸ばすことを目指す授業,つまり4技能5領域を抜け漏れなく,体系的に,生徒に学びやすく教えられる授業を行いたいと考えています。 本校の特進コースには,入学時すでに英検準2級を取得している生徒から,英語が苦手な生徒までさまざまな生徒がいます。「得意・不得意はどの学校でも同じ。4技能を正しい順序で教えて,丁寧に指導し,抜け漏れを見逃さずにフォローしていけば,一人でも多くの生徒の英語力を伸ばすことができる。」というのが私の考えであり,そのための授業準備を目指しています。
3.「1レッスン1冊子方式」に至った経緯
前項で述べた授業を目指し,生徒の学力形成を以下の活動を通じて行おうと考えました。

これらの活動を行うためのプリントを毎時間分用意し,授業に当たっていました。しかし継続的に活動を行う上で問題となったのは,以下の2点です。

こうした問題を解消するため今年度考えたのが,「1レッスン1冊子方式」による授業です。その名の通り,教科書の1レッスン(タイトル)ごとに使用するプリントを最初から「1冊の冊子」として配ることなのですが,これにより,以下のメリットがあると考えました。

また,小冊子形式を取るにあたり,これまで手作業で行っていた多くの部分を,教科書に付属するデータを活用しながら,必要な部分だけ教員が加筆・編集することにしました。これらにより,本校生徒により適したプリント集(冊子)を,より短時間で作成できるのではないかと考え,「1レッスン1冊子方式」を取ることに決めました。
4.冊子の具体的な準備
今年度私が担当している英語コミュニケーションでは,3学年とも“ELEMENT English Communication”を使用しています。教科書付属のデータを編集し,1レッスンを小冊子1冊で指導できるようにしたものがこちらです。 *資料2(“ELEMENT English Communication” Lesson6 IT and Life内Reading “A Long Way Home”指導用) 作成にあたり使用したのは,教科書付属のデータから「本文データ」「本文の訳例」「本文の内容理解問題」の3つです。本文データの下にメモ欄を配置し,生徒は板書をメモできるように,教員は進度状況や出した課題をメモできるようにしています。本文の内容理解問題は,基本的にそのまま使っています。Share your Ideasという会話を伴う活動では,生徒がスムーズに会話が始められるよう,役立ちそうなTIPSを加筆しています。
5.実際に行った授業展開と詳細
●実際に行った授業展開
以下が,上記資料2を用いて実際に行った「Lesson6 IT and Life内Reading “A Long Way Home”」での授業展開です。(資料を見やすくするため,教科書に関する活動と課題のみ記載しています。各種副教材は,週末課題として課しています。)

このレッスンは合計8段落でしたので2段落ごとに区切り,3時間を1サイクルとして進めました。合計12時間で1レッスン(=1冊子)を終え,追加で「まとめプリント*資料3」を作成し,ディクテーション,リテリング,ライティングを課しました。
●授業内活動の詳細
ここでは3時間1サイクルをどのように指導したかについて,1時間目~3時間目を例として示します。その後,まとめプリントを用いた13時間目の活動の詳細を示します。
1時間目
【TASK①】(和訳ができるようになり,本文の内容や音にも慣れるためのタスク) *資料2P2
〇新出単語学習
・本文を見ながら1度聞き,聞き取れた内容や意味の分かった単語をペアで確認しあう。
・デジタル教科書で新出単語を見ながら音読。
・デジタル教科書の機能を使い,付箋で意味が隠されたものを意味を思い出しながら暗唱。
〇新出単語学習以外の重要表現・文法学習
・新出単語以外の重要表現,文法を教員が板書。生徒は辞書で意味を引き,メモ欄にメモする。
〇和訳
・辞書を使いながら,生徒が自身のノートに和訳をしていく。
・教員は机間指導を行う。複数がつまずいている箇所は全体へフィードバック。
〇音読
・本文を見ながら,1文ずつデジタル教科書の音声に続けて読む。
2時間目
〇小テスト
・毎週行っている,単語テストを行う。
〇音読
・教員が意味のかたまりごとに英文を読み,あとに続けて読む。読んだかたまりを教員が日本語にし,それに続けて読む。(「直読直解読み」と呼んでいます)
・生徒が自分で「直読直解読み」をし,分からないところを調べる。
〇ペア音読
・ペアを組み,片方の生徒は本文を見ながら英文を読む。もう片方の生徒は本文を見ずに読まれた英文を聞き,和訳する。
【TASK②】(問題を通じて考える力や表現力を伸ばすタスク)
〇問題演習
・TASK② Q&A1~2のA~Eに解答する。 *資料2P6~7
・ペアを組み,それぞれが出した答えを確認。答えが一致していてもしていなくても,答えの根拠を口頭で説明できる準備をする。
3時間目
〇問題演習つづき
・教員がペアごとに指名し,答えと根拠の説明をさせる。根拠の不明確な部分は全体へフィードバックし,読み方や考え方を深める。
・ペアを組み,TIPSを活用しながらShare Your Ideasに取り組み,自分の考えを英語で伝える。
➡1時間目から3時間目までを1サイクルとし,2段落ずつ指導。12時間で1レッスンを終える。13時間目にまとめとして,以下を行った。
13時間目
【TASK③】(リスニング,ライティング力向上のためのタスク)
〇Dictation *資料3P1~2
・デジタル教科書の音声を2回ずつ聞き,空所に入る語を解答する。
〇Story Retelling *資料3P3
・本文を要約した文の空所の当てはまる語を答える。(補助が必要な場合,教科書の本文を見ながら行っても良い。)
〇Writing Activity *資料3P4
・本文を自力で要約する。(補助が必要な場合,資料3 P3の要約文を見ながら行ってもよい。)
6.「1レッスン1冊子方式」にしてみて良かった点,反省点
特に良かった点は,以下の4点です。

また反省点としては,主に以下の2点です。

7.終わりに
今回実践報告を書かせていただくにあたり,日頃から感じていた「多忙さ」との向き合い方を伝えたいと考えました。AIが教育現場にも生かされるようになった昨今,私たち教員に求められるのは「生徒と向き合う時間」ではないでしょうか。「生徒の個別最適な学び」を引き出すには,まず私たち自身が生徒と向き合い,その興味・関心を知る必要があります。また,授業でも生徒一人ひとりの顔を見て,「どこが分かっていないのか」を敏感に察知することも重要だと思います。本稿が,そういった現状と向き合う私たち教員にとって時間的・心理的にゆとりを持つためのナレッジの一つとなれば幸いです。




























































