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数学と社会をつなげる力の育成 ~三角比を用いて,ピザを最小限の誤差で5等分に切ってみよう!~

東京都立荒川工科高等学校 定時制 
我妻 奨平

2026.03.02

1.実践の背景と目的

昨年度,数学I Aを履修した生徒23名(1学年から3学年全体)に対して,授業時に数学の意識調査を行ったところ,「中学のときに比べて数学ができるようになった」と回答した生徒が約80%だった反面,「数学を学ぶ意義を感じているか」という問いに対して,約40%の生徒が「あまり感じていない」と回答した。その回答に対する大きな理由の一つとして,「社会に出て数学を使う機会がないから,数学を学ぶ意義が感じられない」という意見が多く見受けられた。                                                                                      また,高等学校学習指導要領解説 数学編では「高等学校における数学の学習を通して,数学的な見方や考え方のよさなどの数学のよさを認識させ,将来の学習や生活に数学を積極的に活用できるようにするとともに,知的好奇心,豊かな感性,健全な批判力,直観力,洞察力,論理的な思考力,想像力,根気強く考え続ける力などの創造性の基礎を養うことや,論拠に基づき自分で判断する力を育成することなどが特に大切である。」と記載されている。そのため,実生活と数学を関連付け,将来の学習や生活に数学を積極的に活用できる力を育成するとともに,数学を学ぶ楽しさや意義を感じさせることを目的とした授業実践を行うことが生徒の数学に対する意識改善につながると考え,授業実践を行った。

2.本校について

本校は工科高校として実践的な学びを提供し,実社会で求められる技能や知識を身につけることで,社会人としてのスキルアップはもちろん,今後のキャリア形成に役立つ基盤を作り上げることを念頭に置き,教育活動を行っている。数学においても「数学と社会をつなげる力」の育成を目指し,実生活と数学を関連付けた題材を取り上げて授業をしている。また,本校は電気科,電子科を併設しており,工科科目との関連を持たせながら,身につけた知識を活用する教科横断的な指導を行っている。1学年あたりの生徒数は5人~7人と少人数であるため,一人一人の理解度に合わせて授業を行っている。本時では,学習した数学Ⅰ三角比の基礎知識を活用し,三角比を用いてピザを正確に5等分する方法を考察する授業実践を行ったので実践結果を報告する。

3.実践記録

授業目標:三角比を利用して,ピザを正確に切れるようになろう!

指導目標:①5等分の手順を理解させ,生徒が誤差1°未満で5等分に切れるようになる。
② 数学の有用性が感じられる授業を行う。

単元の導入

はじめに学習した三角比が日常生活にどのように活かせるかを考えさせ,過去に扱った例題をヒントとして交えながら発問をした。多くの意見として挙がったのは山の高さや階段,スロープの高さ等に関する「測量」についての意見が多く見受けられた。                                            次に本時の目標「三角比を利用して,ピザを正確に切れるようになろう!」を確認し,まずはじめにプリントに記載された円を目分量で5等分にする活動を行った。正確に5等分する場合,5等分するための扇形の中心角は360÷5=72°となる。活動の結果を確認したところ,5等分したとき,扇形の中心角72°に対して角度の誤差が一番大きかった生徒の数値は18.2°,一番誤差が小さかった生徒で3.3°,全生徒の誤差を平均すると8.6°だった。この結果から「目分量で5等分をすることは難しく,目分量での5等分には大きな誤差が生じる」ということがわかった。

 

 

展開1: 正確に5等分する方法を考える

プリントの図をもとに,どのようにすれば単位円を5等分にできるのか考える時間を与えた。前時に学習した,円を3等分にする方法から着想を得て,「◁AOP=72°をみたす直角三角形OAPを図示する」という意見が出た。

直角三角形OAPについて,線分OAの長さを求める過程を確認した。三角比表を用いてcos72°=0.3090であることを確認し,線分OAの長さは OA=1×cos72°=0.3090であることを求め,5等分にするための手順として,以下を確認した。

 

しかし,実際に目分量だけでを満たす点を図示することは難しい。線分上の任意の点を正確に図示する方法を学ぶため,下の図のような練習問題(ある線分をそれぞれ目分量で2等分,3等分にする点を図示する問題)に取り組ませた。結果として,3等分した点には目に見える誤差が生じるが,2等分した中点であれば目分量でも中点に限りなく近い点を図示できることがわかった。

展開2:目分量で誤差1°未満に5等分する方法を考える

次に,線分の2等分を繰り返すことで点Aに限りなく近い点を図示する方法を考える。線分OS上の任意の点Aに限りなく近い点を目分量で図示する方法として,線分OSを2等分,4等分,8等分,…, 等分に繰り返し2等分をすると,線分OS上の点Aに限りなく近い点を図示できる。これは区間縮小法の原理を用いて証明することが可能であるが本時では証明を省略し,実際に線分OSを何等分すれば OA=0.3090を満たす点に限りなく近い点を図示できるのか試行する時間を与えた。

上の図のようにOA=0.3090を満たす点Aにもっとも近い点は線分OSを16等分した点のうち,左端から数えて5番目の点であるという結果が得られた。

2等分をさらに繰り返せばより点に近い点を図示できるが,点

                                                                                              を満たしており,本時の目標である誤差1°未満となっているので,を満たす点を採用した。                                                                                              改めて,目分量で正確に5等分するための手順を確認した。

手順を確認したのち,5等分の手順にそって,実際に単位円を目分量で5等分にする活動を行った。

結果をまとめると,全生徒の平均誤差は学習前の8.6°から3.2°という結果になった。また,誤差が一番大きかった生徒は学習前の18,2°から本時の学習を通して1.3°の誤差で5等分することができるようになった。同じ目分量での5等分を比較しても,三角比の基礎的な知識を用いて導出した5等分の手順を理解した上で5等分を行うほうが,何も考えず感覚のみで行う5等分より正確に5等分ができることがわかった。

展開3: 実際にピザを5等分してみる

本時の目標であるピザの5等分に挑戦した。クラスの中から5人の生徒を選出し,1人1回ずつ5等分する試行を行った。プリント上では目印を付けることができるが,ピザを切る際には目印を付けられないため,正確に5等分することは難しいと予想していたが,それぞれ5等分された扇形の中心角は72.0°,72.1°,72.3°, 73.5°, 70.1°と平均誤差は約0.8°(0.76°)という結果になり,授業目標及び,指導目標を達成した。

4.結果・まとめ

本時の授業での結果をまとめると以下のようになった。

円を5等分したときの平均誤差の変化

学習前:全体の平均誤差8.6° → 学習後:全体の平均誤差3.2°

ピザを5等分したときの平均誤差

約0.8°(誤差1°未満)←授業目標及び,指導目標の達成

授業の最後に宿題として,円を10等分にする方法を考え,実際に円を10等分する課題を出した。本時の授業で身に付けた内容を活用すれば,任意のに対して,円を等分する方法を導き出すこともできる。

また,授業アンケートでは,以下のような回答が得られた。

授業前は数学に対して学ぶ意義や有用性を感じていないと答えた生徒が,40%だったが本時の授業で大幅に改善された。また,数学の有用性を感じるための授業実践だったため,「三角比を活用できる場面を知れてよかった」等の意見を得られて目標を達成できた。その反面,目分量の等分は人によって誤差が生じるため,正確に5等分できない生徒も存在した。机間指導の中で生徒の現状や課題を把握し,問題を解決できるようにサポートしながら授業を進めていくことが反省点である。本時の授業を通して生徒が笑顔で楽しく数学に向き合う姿を見れたことが最も大きな成果であった。数学と実生活のつながりを感じさせる授業ができるよう,これからも教員として学び続けていきたい。

*授業資料(三角比を使って,ピザをn等分しよう!)

【参考文献】

●高等学校学習指導要領解説 数学編

(https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2012/06/06/1282000_5.pdf)

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