1.活動のねらい
語彙学習というと,日本語訳を覚える「暗記型」の活動が主流です。しかし,英語の意味を英語で理解する習慣を身につけると,語彙力はもちろん,表現力・思考力も大きく伸びます。
このShare the Definition!は,英英辞典の定義(definition)を核に,生徒が「英語で理解し,英語で表現する」ことを目的としたアクティビティです。授業内で簡単に導入できるゲーム的な活動から,ペアやグループでの自己表現・コミュニケーションへと展開できる点が特徴です。辞書的な学びを,言葉でつながる学びへと変えることを目指します。
2.活動の概要と位置づけ
この活動では,生徒は「単語を定義で理解し,説明し,使う」流れを体験し,かつ,コミュニケーション活動へ繋ぎます。定義を使った語彙指導は,英語4技能5領域をカバーし,総合的な英語力を伸ばします。
授業構成の一例:
- 【基礎編】定義を聞いて当てる(受容的活動)
- 【発展編】定義を自分で書く・話す(産出的活動)
- 【表現編】定義を用いて会話・発表する(自己表現,協働・コミュニケーション活動)
【基礎編1】Definition Guess(Criss Cross Game)
全員で楽しめる,定義当てゲームです。
手順
- クラス全員を立たせます。
- 教師が英英辞典を使い,定義を英語で読み上げます。
例:“This is a large animal that has a long trunk.” - 生徒は挙手し,教師が指名します。
例:“An elephant.” - 正解した生徒は,自分のいる列の縦列または横列のいずれかを選び,その列が着席します。
ヒントの与え方
- “This word starts with the letter E.”
- “This word has eight letters.”
教師の指示英語例
“Listen carefully and raise your hand when you know the answer.”
“If you get it right, choose a row or a column to sit down!”
指導のポイント
- 立って行うことで集中力が高まり,英語が教室に“響く”。
- 前回の語彙を使えば復習活動,これからの語彙なら導入・スキーマ活性化になる。
- 生徒の正答を褒めるときは,
“Good job! You caught the meaning perfectly.”
などの自然な英語で応じると,授業全体が英語モードになる。
【基礎編2】Definition Grab(定義取りゲーム)
瞬発的に英語を聞き取り,理解するトレーニングです。
準備と手順
- ペアで正対して机を合わせ,中央に消しゴムを1つ置く。
- 教師が黒板にいくつか単語を書き,数種類の定義を読み上げます。そのうち1つだけが正しい。
例:- “It’s a place where you can buy books.”
- “It’s a place where you can eat lunch.”
- “It’s a place where you can play games.” - 正しい定義が読まれた瞬間,先に消しゴムを取った生徒が答える。
例:“A bookstore!” - 正解でポイント獲得。
英語の指示文例
“Put an eraser between you.”
“Listen carefully to the definitions.”
“Grab it when you hear the correct one!”
バリエーション
- 単語ごとに点数を変える。
- 間違えたらマイナス点。
- 早押しのようなスピード感で進めると盛り上がる。
学習効果
英語で聞いて即座に意味を判断する力が養われ,リスニングの基礎にもなる。
【発展編1】Definition Writing(定義を書く活動)
目標
自分の言葉で「定義を書く」ことで,語彙の理解をより深める。
手順
- 教師は3〜4語(例:river / freedom / friendship / challenge)を提示。
- 1語につき1分間,できるだけ多くの定義をノートに書く。
例:“A long natural flow of water”
“Water that moves from mountains to the sea.” - ペアを作り,互いのノートを見せ合い,最もよい定義を選ぶ。
- その選んだ語について,二人で新しい定義を協力して作り直す。
- いくつかのペアがクラスで発表。教師が最後に辞書の定義を紹介。
教師のまとめの英語例
“Your definitions were really creative.
According to the dictionary, ‘river’ means〝a long, natural area of water that flows across
the land and into a sea, lake, or another river”.
評価とフィードバック
- ノートを回収し,良い表現にはコメントを添える。
- 「定義の内容」+「英語表現の正確さ」の両方を評価。
- 辞書を使って確認する時間を設け,学びを自己修正型にする。
【発展編2】Definition Quiz(ペアでの定義クイズ)
活動のねらい
生徒が定義を“聞く・話す・当てる”中で,自然に会話が生まれる。
手順
- ペアを作り,教師が範囲や条件を指定(例:Lesson 4 の単語,名詞)。
- 一人がある単語の定義を言い,もう一人がその単語を当てて答える。
例:A: “This is a person who helps sick people.”
B: “A doctor.” - 交代して続ける。
活動を発展させる方法
- “synonym”や“antonym”を使ってヒントを出す。
例:“It’s the opposite of hardworking.”(→ lazy) - “It’s a kind of fruit that is yellow and curved.”(→ banana)など,柔らかい語彙を混ぜて楽しませる。
- クイズ形式でチーム対抗戦にしても盛り上がる。
自己表現活動への発展例
ペアで次のような対話を展開させる:
A: “Which word do you think is most difficult to define in English?”
B: “Maybe ‘freedom’, because it has different meanings for different people.”
ここから,英語での小ディスカッション活動にも自然に移行できる。
【発展編3】Definition Presentation(定義を用いた発表活動)
目標
語彙を単独で覚える段階を越え,定義を使って自分の考えを伝える。
活動例①:My Favorite Word Presentation
- 生徒は自分の好きな英単語を一つ選び,その英語定義を調べる。
- その単語を選んだ理由を,定義を用いて説明する。
例: “My favorite word is ‘challenge’. It means something that is difficult but gives you a chance to grow. I like this word because I often face challenges in basketball.” - 1分プレゼン形式でクラスに発表。
活動例②:Guess My Word(定義を使った推測ゲーム)
- グループで1人ずつ自作の定義を言う。
- 他のメンバーが単語を当てる。
- ただし,定義には“the word itself”(定義される単語そのもの)を使ってはいけない。
> “It’s a feeling you have when you want something very much.”(→desire)
教師の英語指示例
“Make your own definition. Don’t use the word itself.”
“Try to make it sound natural and clear.”
評価観点例
- 語彙理解(定義の内容の正確さ)
- 表現力(構文や語彙の多様性)
- コミュニケーション力(伝えようとする意欲)
【発展編4】Definition Recording(録音によるリフレクション活動)
発音やイントネーションも含めて「自分の定義を伝える」練習として,ICレコーダーやスマートフォンを活用する方法です。
手順
- 本稿で紹介しているペア活動後,自分の定義発話を録音。
- 自分の録音を聞きながら,次のような自己評価を行う:
– Did I pronounce the key words clearly?
– Did my partner understand my definition?
– How can I make it easier to understand? - 次の授業で,改訂版の定義をもう一度ペアで共有。
この「自己録音→再挑戦」というサイクルは,学習者の発話意識と語彙定着を大きく高めます。
【表現編】定義を用いて会話・発表する(自己表現・協働活動)
語彙の定義を「覚える」「書く」「当てる」だけで終わらせず,それを自分の言葉で使う段階に進めることが重要です。ここでは,英英辞典的な語彙定義を素材として,英語での自己表現と協働的コミュニケーション活動へと発展させる指導例を紹介します。
活動1:Definition Talk(定義を使って会話する)
ペアあるいは小グループで行う活動です。教師が5〜6個の単語を提示し,生徒はその中から2つ選んで英語で定義します。相手はそれを当てるだけでなく,次のような「会話」を広げていきます。
例:A: This word means a person who gives help to others.
B: A volunteer?
A: Yes, that’s right. Do you think you could be a volunteer?
B: Maybe, if I have time. I’d like to help children.
このように「当てて終わり」ではなく,「その単語を使って意見を交わす」流れをつくることで,単語が生きた言語資源となります。
教師は,会話を続けるためのフレーズ(例:”How about you?” “Why do you think so?”)を板書して支援するとよいでしょう。
活動2:Definition Presentation(定義を使った発表)
上級生やスピーキング力の高いクラスでは,生徒が自作した「英語の定義」を使ってショートプレゼンテーションを行う活動も有効です。テーマは「自分を表す5つの言葉」や「クラスを表す3つの言葉」など,自己表現につながるものがよいでしょう。
例:“I’ll introduce myself with five words. The first word is curious. It means a person who always wants to know something new. I often ask many questions in class. The second word is patient. It means a person who can wait and doesn’t give up easily. When I practice piano, I keep trying even if I make mistakes. …(略)”
このような発表では,「単語の定義を説明する力」と「その単語を自分の経験と結びつける力」を同時に伸ばすことができます。また,聞き手の生徒には「今の定義で印象に残った単語」「自分にも当てはまる単語」などを発言させ,リスニング+リアクション活動に発展させることも可能です。
活動3:Definition Debate(語彙を使った簡易ディベート)
語彙活動と論理的思考をつなげる発展形です。教師が「自由」「幸福」「成功」など抽象的な単語を提示し,グループで英語の定義を考えます。グループごとに定義を英語で発表し,どの定義が最も説得力があるかをクラス全体で話し合います。
例題: What is success?
- Group A: Success means getting a lot of money.
- Group B: Success means doing what you really like.
- Group C: Success means helping other people.
定義を通して「言葉の概念」を考える活動は,生徒の批判的思考(critical thinking)を促し,単語を“使える知識”として内面化させるきっかけになります。
指導上のヒント
- どの活動でも,“定義→当てる→使う→伝え合う” という流れを意識すると効果的です。
- 教師は活動の前に「会話を広げるための表現リスト」や「意見を言うためのサポート文」を配布しておくとよいでしょう。
- 評価の際には,語彙知識そのものに加えて,コミュニケーション意欲・発話量・表現の工夫など,言語使用の観点を含めて観点別にコメントを返すと,生徒の学びが深まります。
この【表現編】を加えることで,「Share the Definition!」は単なる語彙ゲームではなく,語彙を媒介とした自己表現・協働的思考・相互理解の活動へと発展します。英語を「正しく使う」段階から「創造的に使う」段階へと導く,この橋渡しが高校英語授業の醍醐味です。
(追加のおススメ活動)★Word Gift――「贈り合う」語彙活動で学びをつなぐ――
活動のねらい
語彙を「覚える対象」から「贈る対象」に変えることで,学びが自己中心的な作業から,他者との協働へと変わります。
活動の手順
- 授業の最後にペアを作り,各自が本文から「覚えたい単語」を3~5つ選ぶ。
- 互いにその3~5つを伝え合う。
- 次回までに,相手からもらった単語(例:achieve, honesty)で英文を作る。
例:“He finally achieved his dream.”
“Honesty is one of the most important values in life.” - 次回授業で「単語を聞く→例文を聞く→その単語の意味を答える」という順で,クイズ形式で上記1.のペアでお互いにテストし合う。
- 正答数をペアで記録し,クラス全体でランキング表示。
◆発展的展開(自己表現を絡めて)
① Word Story
生徒が「贈られた単語」を使って短いストーリーを作る。
例:I received the word “friendship” from my partner. Last Saturday, my friend helped me study for a test. We laughed and shared our ideas. I felt happy to have a friend who cares about me. Friendship means helping each other and spending time together. I hope to keep good friends and always be kind to them.
② Word Debate
ペアで互いの単語を一つずつ選び,「どちらの言葉がより重要か」を英語で話し合う。
例:A: “I think friendship is more important than freedom.”
B: “I see. But without freedom, we cannot choose friends we like.”
このように語彙を媒介にして思考や価値観を表現させると,語彙活動が「意味を扱う英語コミュニケーション」へと進化します。
まとめ:定義から広がる「言葉の思考空間」
定義を用いた語彙学習は,「知識の確認」から「言語の運用」へと橋をかけます。生徒は英英辞典の定義を理解する過程で,英語の意味世界を内側から体感します。やがて,こんな言葉が生徒の口から自然に出るようになります。
“Can I make my own definition for this word?”
“I found a better way to explain it.”
それは,英語を「覚える言語」ではなく,「考える言語」として使い始めた瞬間です。語彙指導の最終目標は,単語の暗記ではありません。言葉の意味を自ら再構築し,他者と共有する力を育むことです。
定義を通して学ぶことは,英語で考え,英語で表現する最初の扉を開くことにほかなりません。




























































