1.はじめに
わたしは高校時代に地学と出会い,その当時の「地学Ⅰ」と「地学Ⅱ」の授業を履修し,地学という科目の魅力や面白さと奥深さに魅入られました。その後,大学では天文学を専攻し,教職員になってからは地学分野を中心に,高校生を相手に教えています。まだまだ若輩者ではあり,至らぬ点も身に染みて実感していますが,これを読まれた方に地学分野の面白さや魅力が伝わればと思い文章を書かせていただきます。この文章が先生方の授業実践に少しでも資するものとなれば幸いです。なお,特に指定のない場合,文章中で地学という言葉は「地学基礎」「地学」を含めた地学分野全体を示す言葉で使用させていただきます。
2.地学分野を学ぶ目標
高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説では地学基礎について「地球や地球を取り巻く環境に関する基本的な概念や原理・法則を理解させ,科学的に探究する力を育成するとともに,地球や地球を取り巻く環境と日常生活や社会との関わりを考えることができるようにすることが大切である。」と書かれています。私自身は,最終的には学んだことを自らが生きていく社会と関連させられるようになることが大切だと思っています。
3.地学分野の魅力
地学分野は,扱う内容のスケールが時間的にも空間的にもとても大きいという点が特徴です。時間のスケールでは宇宙誕生の138億年前から現在まで,空間のスケールでは宇宙の地平線まで学びます。とても大きなスケールです。そして,学ぶ自然現象はダイナミックで興味深いものが多いです。例えばプレートテクトニクス,地震,火山,気候の変化,台風などの気象現象,ビッグバン,全球凍結など,キーワードを挙げるとキリがないですが,このような地学で扱う自然現象を学ぶことで,「なぜ地球があるのか」「なぜ私たちがこの星に生まれることができたのか」「自然と私たちはどのように接して生きていけばいいのか」といった疑問の答えを考えられるのも地学の魅力です。
また,こうしたダイナミックな自然現象は災害にも繋がります。例えば地震災害,火山災害,台風を含めた気象災害,土砂災害なども地学で扱います。私たちの生活と密接に関係している地震,火山,気候の変化,台風などの現象を学び,知識を身につけることで,防災の意識を高めることができる点も,地学を学ぶ大きな魅力だと言えます。
4.身近に感じる地学と授業実践
ここからは実際の授業で私自身が大切にしていることや,実際の授業実践内容を紹介します。
その1:映像教材と地学
地学で学ぶ内容は,スケールが大きい分,教室で実際に実験・観察等を行うことが難しい分野もあります。その場合,映像教材を上手く活用することで,生徒の理解度をあげることができます。YouTubeでは大学で行われた大掛かりな実験の様子を見ることができます。授業で活用しやすい映像教材をひとつ紹介します。大気と海洋分野の風を扱う部分では空気に働く力のひとつとして,地球が自転しているために生じる見かけの力(コリオリの力)について扱います。この力は言葉で説明してもわかりにくく,理解しにくいという特徴があります。この力をわかりやすく紹介している映像がYouTubeにあります。チャンネル名「MIT Physics Instructional Resources Lab」のタイトル「Coriolis Effect (B151) [1E30.28]」※1という動画です。コリオリの力を説明する際,この動画見せることで北半球と南半球での力の方向が変化する理由や,なぜ見かけの力と呼ばれているのかがわかります。ちなみにこの力を理解することで,台風の渦の回転方向がなぜ反時計回りなどがわかるようになります。
※1 URL: https://www.youtube.com/watch?v=dt_XJp77-mk
その2:ニュースと地学
地学に関するニュースは,調べてみると本当に数多くあります。ニュースを生徒に伝えることで,地学と日常生活や社会の関係性を,より深く実感することができます。伝えるニュースを入手する方法はいくつかあります。例えばWEB,新聞,雑誌などです。
WEBの利点はすぐに情報が得られることと,映像や画像を用いて伝えやすい点があります。伝えたいニュースがあったときに,手軽さも含めてまず利用したい媒体です。また,自分の興味があるジャンルのニュースを自動的に入手したり表示したりしてくれる仕組みも多くあります。
続いて,新聞です。新聞はニュースに関する情報がより詳しく掲載されていることが多いです。そのためより詳しい情報を伝えたいときに有効です。また,WEBでは情報はこちらから能動的に探しにいかなければなりませんが,新聞では様々なジャンルが網羅されているので,気が付いていなかった地学ニュースに出会えることも多いです。
最後に雑誌です。科学に関する雑誌では最新の研究成果などを詳しく説明してくれています。また,天文関係の雑誌ではこれから先に起きる天体現象について掲載されていますので,日付を記録しておくことで,事前に生徒に伝えることができます。例えば「今夜はしし座流星群が見られる。今週末月食が見られる」などです。学校の図書室で定期購読されている場合もあると思います。積極的に活用したいです。
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その3:探究活動と地学
探究活動を地学の授業を通して行った実践例や,その時に考えたことを紹介します。まず,そもそも地学という分野は探究活動に向いていると,私は考えます。それはなぜかというと,地学では問い(課題や疑問)を考えやすいからです。探究活動では「問いを考える,生み出す」ことと「問いに向き合い,考え,深めることでまた新しい問いを生み出す」という2点の過程が大切です。その「問いを考える,生み出す」という点は,慣れていないととても難しいのですが,地学は学んだ内容から問いをイメージしやすいため,生徒自身がとてもいい問いをたくさん思いついてくれます。
実際にはこちらが用意した問いと,個人や班で考えたオリジナルの問いに取り組むという授業を行っています。こちらが用意する問いの難易度は様々ですが,授業で学んだ内容を活かして論理的に考えることで結論にたどり着けるものを意識して作成します。例えば「地球の気温が上昇したら,深層循環の周期は変化するか。変化するのであればその理由も説明せよ」みたいな問いです。生徒は,海水が深部に沈み込むのは海水が凍結する場所であることを学んでいるので,そこから「温暖化すると海水が凍結しにくくなるのではないか」「深層循環の周期は長くなるだろう」「ちなみに過去の地球で暑かった時代の深層循環はどうだったか」などと学んだ知識から,問いを通して学びを深めてくれます。
こちらから提示した問いだけではなく,自ら問いを考えさせることで,問いを作り出す力を高めることができます。次の図1のような項目を用意し,取り組んでいます。個人で考える問いと,班で考える問いを作る意図は,活動に取り組む主体性と,協働して学ぶ力を上昇させたかったからです。個人オリジナル疑問は班のメンバーと被らない制約を設けることで,必ずコミュニケーションが必要になるので,議論が活発になればという狙いもあります。評価は,「どんな問いを生み出しているか」と,「論理立て問いの答えを述べられているか」という両方を見ると生徒に伝えておく
ことで,いい問いとは何かを生徒は考えてくれ,活動に向き合ってくれます。
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図1 実際に授業で活用した探究活動のプリント(一部抜粋)
5.おわりに
ありがたいことに,地学分野の教育に携わらせてもらい10年以上経過しました。私の経験では地学分野が専門の高校教員の数は少ないのではないかという実感があります。そのため,同じ学校で地学を専門とする教員が複数人配置される確率は低いのが現状です。複数人いる場合,同じ学校の中でも教材や教え方に関して教員同士で議論を深めていきやすいですが,一人しかいない場合それもなかなか難しいと思います。そんな現状もあり,このような,たくさんの先生の授業実践を共有できる媒体があることはとてもありがたいなと思っています。私自身も読ませてもらい勉強させてもらいました。今回,執筆の機会をいただき,地学を専門とする先生にも,地学を専門としていない先生にも,少しでも何かお役に立てればと思い文章を書きました。ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。
【参考・引用文献】
・文部科学省(2018).『高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 理科編 理数編』
・Coriolis Effect (B151) [1E30.28](https://www.youtube.com/watch?v=dt_XJp77-mk)





























































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