1.はじめに
本校は1939年に創立された法政大学の付属校である。生徒数は男女合わせて約1850人であり,クラス数は43クラスの比較的大規模な学校である。交通至便な武蔵小杉から徒歩10分程度の位置にあり,東京,神奈川を中心に関東各県から生徒が通学している。生徒の90%程度が法政大学にそのまま進学し,中・高・大10年一貫教育を実現している。
本校の授業においては教員からの一方的授業ではなく,生徒同士の話し合い,生徒と教員のやりとりなどを重視している。「主体性」「総合性」「共同性」という言葉をキーワードに,各科目で創意工夫あふれる授業が行われている。
2.本校の英語授業について
本校では英語を3教科に分けて授業を行っている。英語コミュニケーション,英文法,英会話の3教科である。英文法,英会話においてはクラスを2分割し,20名程度の少人数授業を行っている。本稿では英文法の授業について取り上げる。
Vision Quest Alphaを使う以前,本校では洋書を使って英文法を教えていた。非常にナチュラルな英文で構成されており,リスニングやペアワークなども豊富に準備されていたため,生徒に自然な英文法を教えることができていたが,中学の授業で系統的な英文法が教えられなくなってきたため,いきなり洋書を用いて文法を学ぶことに困難を抱える生徒が増えてしまった。加えて洋書では自学自習で文法を身につけることが難しく,私たち教員が手取り足取り英文法を教える場面が増えてしまった。
そこで,ある程度文法を系統立てて教えることができる日本語の教材を探していたが,その多くは穴埋め,並べ替え,言い換えなど旧態依然とした文法を教える教材であり,活動しながら文法を学ぶことができる教材がほとんどなかった。論理・表現の教科書も参考にしたが,文法を系統立てて教えるのには向かず,中学で文法をしっかりと学んでいない生徒が使用しても実力をつけるのが難しいように思われた。そのような状況の中でVision Quest Alphaという教材を見つけた。この教材はModel Essayから始まり,生徒同士のやりとりの中で文法をみにつけるというコンセプトを持った教材である。これなら教員からの一方通行の授業から脱却できると考え,採用を決定した。
3.実際の利用方法
英文法の時間ではクラスを2分割しているため少人数で授業が進められる。その分担当する教員も多く,1学年9人から10人の教員で授業を行っている。本校では内申点が大学進学に大きく関わるため,クラスの授業差が出ないよう配慮が求められる。そこで,デジタルデータ教材を利用してパワーポイント教材を作成し,1回の授業で進む進度,教える内容を共通化した。音声やVision Quest Ultimateの参考ページについてもパワーポイントに掲載し,生徒が学習しやすい環境を整えた。
Vision Quest Ultimateについては全生徒に購入させている。我々が授業で教えるよりも,生徒が自主的に総合英語の参考書を開き,学習を進められる仕掛け作りを行っている。常に授業中にVision Quest Ultimateを参照させ,パワーポイントにも参照ページを載せることにより,生徒は自然と総合英語の参考書の使い方を身につけ,自立した学習者になることができる。授業中や試験前に総合参考書を見ている生徒は本校では珍しくない。本棚の肥やしにしないような工夫が我々に求められているといえる。
4.実際の授業の進め方
2024年度2学期のカリキュラム(資料1)である。このように1日ごとのカリキュラムを決め,全担当教員で共有している。万が一欠勤が出ても2分割された授業を1つにまとめることにより対応している。各1日ごとのカリキュラムに対してパワーポイント教材を作成し,基本的にはこのパワーポイント教材に沿って授業を進めている。以前は文法事項1つに対して教員が具体例などを交えて20分程度の説明を行っていたが,パワーポイント教材にVision Quest Ultimateの参照ページを加えることにより生徒は自分でその説明を読み,文法事項を理解するという仕組みを作っている。1年生前半では文法用語自体に嫌悪感を持つ生徒も多いため,文法用語を易しく言い換えたり,真意が伝わるよう授業内で工夫を行っている。
このような仕組みを作れば生徒は総合参考書を読めば文法が理解できることが身につくようになるため,必然的に受け身的に授業を受けるのではなく,自分からわからないことを調べようとする姿勢になってくる。我々も参照すべきページは教えるが,文法の細かい事項までは説明しない。「後は読んでおきなさい」とすることにより,生徒はわからないところを自分で確かめるようになるからである。
説明を省略できた時間については音読練習や問題演習の時間として用いている。文法は理解半分,慣れ半分という側面があるため,生徒の活動時間を保障してあげるのが肝要である。幸い,Vision Quest AlphaにはInteractionやWriting,Speakingといった活動が含まれているため,文法を様々な角度から演習することができる。ただ,問題を解くだけが文法の時間ではない。将来の自分の役に立つ文法を教室内で身につけさせることこそが,英語教員の役割ではないかと思う。
5.最後に
以上,拙いながらも本校の実践について紹介させていただいた。今後,もしさらなる効果的な文法指導法があるとするならば本校も大いに学び,その成果を共有させていただきたい。本稿を最後までお読みいただいた皆様に心からの感謝を申し上げたい。
(資料1)
Vision Quest AlphaⅠ | カリキュラム
2学期中間試験までの進度表 2024.9
Lesson 4 : 完了形 Have you ever watched a socer game live?
| Day1 | ○ | 2学期ガイダンス 語彙リスト配布 |
| 31 | Model conversation TF問題、音読練習、ペアワーク | |
| 31 | Pronunciation 子音、ミニマルペアの練習 | |
| 31 | Function 原因・理由を述べる | |
| Day2 | 33 | Groundwork 7 完了形① 現在完了形、現在完了進行形について、Vision Quest Ultimateを使って確認する |
| 32 | Intake and Output 7 やりとり、ライティング、スピーキング | |
| ○ | 家庭学習課題10 Let’s Write 7 | |
| Day3 | Let’s Write 7 の課題提出 | |
| WORKBOOK PP. 24-25 の演習(10分?15分) | ||
| WORKBOOK PP. 24-25 の答え合わせ、解説 | ||
| ○ | 家庭学習課題11 Intake and Output 7 の小テスト | |
| Day4 | Intake and Output 7 の小テストの答え合わせ、解説 | |
| 35 | Groundwork 8 完了形② 過去完了形、過去完了進行形、未来完了形について、Vision Quest Ultimateを使って確認する | |
| 34 | Intake and Output 8 やりとり、ライティング、スピーキング | |
| ○ | 家庭学習課題12 Let’s Write 8 | |
| Day5 | Let’s Write 8 の課題提出 | |
| WORKBOOK PP. 27-28 の演習(10分?15分) | ||
| WORKBOOK PP. 27-28 の答え合わせ、解説 | ||
| ○ | 家庭学習課題13 Intake and Output 8 の小テスト | |
| Day6 | Intake and Output 8 の小テストの答え合わせ、解説 | |
| WORKBOOK PP. 31-32 の演習(10分?15分) | ||
| WORKBOOK PP. 31-32 の答え合わせ、解説 | ||
| 36 | Expressing スポーツの経験に関するリスニング、やりとり | |
| Day7 | ○ | Quick Review 時制・完了形 |
| Quick Review 時制・完了形の答え合わせ、解説 | ||
| 106 | Activity 4 スポーツの経験に関するやりとり | |
| Day8 | ○ | Model Conversation と Function のディクテーション |
| 単語の発音練習 *語彙リスト *p.37 | ||
| Day9,10 | 進度調整日 |
単語の試験範囲として、語彙プリント1枚とP.37~のUseful Words and Phrases から出題する。
(2学期中間は 15 服・衣類~ 21 飛行機・空港 までを出題範囲とする)
○があるものについてはプリント教材
※Groundworkの説明時には必ずVision Quest Ultimate(参考書)を見ながら説明を聞くこと。
※Let’s Writeの家庭学習課題は、次のDayに提出をすること。
※Intake and Output 小テストの家庭学習課題は、次のDayの授業内で答え合わせをし、解説を確認する。解いていてわからなかったものは、自分でVision Quest Ultimate(参考書)を確認すること。
※中間試験以降は前半クラスが教室、後半クラスが移動教室での授業をおこないます。
【参考文献】
・Vision Quest 論理と表現 AlphaⅠ.啓林館
・Vision Quest 総合英語 Ultimate 2 nd Edition.啓林館




























































