高等学校の教科書・教材|知が啓く。教科書の啓林館
 探求活動(課題研究)

数学の課題研究実践(iC理数探究Ⅱ)

岡山県立岡山一宮高等学校 有岡 桂佑

1.はじめに

本校はスーパーサイエンスハイスクール指定校であり,「科学知」を統合し行動するリーダー育成を目的として教育活動を行っている。そのため高校3年間で身につける力をiコンピテンシー(一宮で身につける5つの資質能力)とし次のように定めている。

2年で行う課題探究を中心に,全ての授業で探究型授業(iコンピテンシーを身につける授業)を行っている。1年次には探究の初期指導の一層の充実を図った探究基礎科目でiコンピテンシーを育成し,2年次のiC理数探究Ⅰでそれを活用し,3年次には探究活動の振り返りの中,iC理数探究Ⅱを選択履修したり,iC進路探究で自分の将来と結びつけたりして,iコンピテンシーの深化を図る。

今回は3年での課題研究実践例を紹介する。

2.授業実践例

(1)目的

自然科学研究における課題発見,検証方法の立案と実施,結果の検証,成果の発表の過程を体験することで,科学的な探究方法や科学的思考力を育成する。さらに,発展的な学習や科学技術に興味・関心を持たせる。

(2)SSH指定におけるiC理数探究Ⅱの仮説

iC理数探究Ⅰでは,生徒自らが見つけた課題を探究テーマに設定することで主体的に探究活動に取り組む。その中で科学探究計画の立て方,探究方法,データ処理法を含めた探究研究を進めるために必要な具体的な手法を身につける。iC理数探究ⅡではiC理数探究Ⅰの内容をさらに発展・深化させ,科学的な探究方法や科学的思考力のより一層の育成をはかる。

(3)単位数

1単位(金曜日の16:10~16:55(時程外)に設定) 1単位は45分

(4)年間計画

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月
ゼミ形式での研究 論文作成
複素関数論の学習 比の極限が2になる証明 証明の確認および拡張

また,以下の発表会等に参加し研究及び発表の深化を行う。

(5)研究内容・方法

令和4年度は数学分野の2名が希望し,2年で行った「nナッチ数列の隣接2項間の比の極限」の継続研究を行う。毎週金曜日の放課後16:10~16:55に実施し,数学教員1名が指導する。授業は週に1単位のため,生徒は事前に学習してきた内容について黒板を用いて説明するゼミ形式で研究を行う。iC理数探究Ⅰの「研究記録自己評価表」を継続して使用し,授業の最初に「前回からの進展」「現在困っていること」を報告してもらい学習してきた内容を説明する。研究ノートはiC課題探究αのデジタルベースの研究を参考にしてGoogle ドキュメントを用いてデジタルで作成する。

※「研究記録自己評価表」については「本校の課題研究(iC理数探究Ⅰ)の取組の紹介」(啓林館授業実践記録.2022年6月掲載)をご覧ください。

【検証】

ゼミ形式の授業では限られた時間内で効率よく議論することができた。またデジタルの研究ノートは確認と変更及びコメント機能を用いることができるので論文作成に大きく貢献した。4月は目標と現状を記入していたが,5月以降は本格的にゼミが始まり,その際の黒板も写真として研究ノートに残すようにした。

図1:4月の記録

図2:5月以降の記録

【受賞一覧】

【iC理数探究Ⅱの研究を終えて(生徒のコメント)】

この研究を通してゼミの準備の大切さを実感しました。ゼミで自分が説明しているときに先生から「本当に自明か」「証明はできるのか」といわれるので,論文の中にある小さな証明(証明がその論文に載っていないもの)も行うようになりました。自律的に行動する力が身についたと思います。

3.最後に

生徒が研究テーマを決める際Focus Gold 4thEdition数学ⅡB,Ⅲにあるフィボナッチ数列の隣接2項間の比が黄金比に収束することに興味を持ち,この研究が始まった。一般化した後に「2に近づきそう」という予想はすぐにできたが,証明に時間がかかった。大学の先生から助言をいただき,最後は生徒の力でユニークな証明をすることができた。今回研究を行った彼らの論文をここに公開する。

【論文 nナッチ数列の隣接2項間の比の極限】