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数学

組織としての授業改善

岐阜県立可児高等学校 松井 真也

1.本校について

可児高校は昭和55年に設立され,今年度で創立38年の普通科高校で1学年7クラス280人,全校生徒数は800名を超える。生徒の大半が国公立大学への進学を志望しており,「希望する進路を達成できる高校」を実践目標とし日々教育活動を行っている。

本校は2013年度から3年間,岐阜県教育委員会から指定を受け「県立高校改革リーディングプロジェクト推進事業」としてアクティブ・ラーニング型授業(以下,AL型授業)について研究,実践してきた。本稿では,組織としてどのように数学科の授業を改善しているかを紹介する。

2.可児高校数学科の「アクティブ・ラーニング」の捉え方

ALの必要性が叫ばれ,様々な研究・実践報告がなされるようになり,高校の現場においても授業改善がかなり進んでいる一方,「アクティブ」ラーニングという言葉から生徒の活動を重視するあまり,「活動あって学びなし」と言われるような問題も起きている。可児高校数学科では,先進校の視察や,後述する数学科会議での議論を経て,ALを以下のようにとらえている。

ここで重要なのが,①の「ALは生徒がする」という捉え方である。したがって②にあるように本校の職員は様々な形態のAL型授業を実践している。

3.建設的な数学科会議

本校では週時程の中に学年会議,教科会議,分掌会議を設定して放課後の会議をなくし,放課後は部活動や補習などの生徒とかかわる時間にしている。数学科会は例年月曜日の3限か4限に設定され,毎週会議を行っている。会議が始まると議題,連絡・報告事項と続く。ここまでは毎回5分程度であるが,教材選定だけはもう少しかかる。普通の学校ならここで終わると思うが,本校では終わらない。

この後は「質問コーナー」。「接線とは?」と言った数学そのものの話や,「群数列ってどう指導するか」や「添削課題の適切なレベルや量は?」と言った数学教育の話を若手,ベテラン問わずぶつけ合う。この「質問コーナー」の質がとても高い。素朴な疑問であっても,ハッとした気づきが毎回あって勉強になる。ある日は3年担当から以下のような問題が提示され,どのように生徒に指導するかという質問であった。

「mは0以上の整数,ℓは自然数とするときn=2^m(2ℓ+1)と表されるなら,nは連続する2つ以上の自然数の和として表されることを示せ。」
解答が示される時もあるが,この日は示されなかったので,皆で解くことからスタート。黒板や白板,紙などに書きながら,「ああでもない,こうでもない」と話しながら問題を解く。まさしくグループワークそのものである。

解答が出てもそこで終わらない。主眼は「どう生徒自身が気づけるような指導をするか」である。この問題そのものも難しいと思うが,この日の結論は「まずは実験してみる」。実際,いくつか書き上げてみたら法則性が見つかって,あとは証明をどう書くかという話になった。この「生徒が気づける指導」という視点を本校では大切にしており,数学そのものも知識理解も大事であるが,あくまでも「生徒目線」で授業研究を行っている。

もう一つ事例を紹介する。教科会議の時間を利用して研究授業を年に数回実施している。下の写真はある日の研究授業の振り返り会の様子である。この日の研究授業の内容は条件付確率の導入における活用で,主に与えられた資料から問題を作り相互に解くというものであった。

まずファシリテーターを一人設定し,授業者とファシリテーターを除いた参観者を小グループ(今回は2班)に分ける。初めに授業者から授業のねらいや実施したうえでの問題点,議論のテーマなどを話し,続いて小グループでその授業の「よかった点」をあげる。「けっして批判はしない」というルールがあるので,授業者も安心して研究授業を引き受けることができるため,本校では若手の研究授業も多い。各グループで出たよい点はA3の紙にまとめ,掲示して全員で共有する。

そのよかった点を踏まえて次に,「授業者に気づきを与える質問」を考える。ここでも質問のふりをした批判は厳禁である。しかし,普段から上記のような教科会議を行っているので,素朴な質問が飛び出し,多くの気づきを得ることができる。

出てきた疑問の一例をあげると

  • ・ペアとグループの使い分け
  • ・「ノートをとる」と「プリントをかく」との使い分け(意図)
  • ・荷物があったらどんな動きだったか。
  • ※この日は研究授業であったため,荷物はすべて廊下に出してあった。普段は教室の中に生徒の荷物が置いてある。生徒ロッカーはない。
  • ・あの雰囲気はどこから?
    などなど,このように誰もが日ごろからもつような疑問を素直に出す雰囲気が可児高校の数学科にはある。

4.可児高校数学科でのAL型授業

先述のとおり,非常に端的に言えば「生徒が頭を動かしていればAL型授業といってよい」というとても緩い共通認識のおかげで,職員がそれぞれのスタイルでAL型授業を実践していることが本校の大きな特徴である。数学のAL型授業において学習の主体が「グループ主体」「ペア主体」「(クラス全体に質問を投げかけて指名する)個が主体」の大きく3通りに分けられるが,本校では担当者それぞれのスタイルに合わせてすべての形の授業が実践されている。「担当者に断りなく授業を見に行ってよい(すべての授業が公開対象)」というルールもあるので,研究授業のみならず授業互見が積極的に行われているが,その際も授業の型ではなく教材研究に話が割かれることが多い。本校の職員室は学年ごとの座席になっているが,同じ教科の職員が近くに配置されることから,職員室の中でも教科の話になることがよくある。学年の白板にもこのような数学の落書きがかかれることがよくある。

5.今後の課題とまとめ

ALの必要性が叫ばれて久しいが,本校数学科では「結局大切なのは教材研究」ということに落ち着いており,「生徒にどのような力をつけさせたいか」「生徒が自ら学ぶ手助けをする」という共通認識の下で,お互いを尊重しながら担当者の個性を生かした授業を展開している。今後はこの組織のよさを生かしながら,先進校の授業を視察してよいところを取り入れて,より一層の授業改善を進めていきたいと考えている。

参考文献

松井真也(2016)「講義型授業から参加型授業への転換―授業をアクティブラーニング化する方法―」日本数学教育学会誌臨時増刊,総会特集号98,525