高等学校の教科書・教材|知が啓く。教科書の啓林館
英語

教科書で学んだことを実生活とつなげて考える

兵庫県立加古川南高等学校 教諭

1.はじめに

生徒向けのある講義での「慣れてきた頃に忘れがちな緊張感を思い出してほしい」という言葉が,自分の英語の授業での取り組みを振り返るよい機会となった。何がしたいのか,どういう生徒を育てたいのか,どのような能力を育成したいのか,何が足りないのか,生徒はどう感じているだろうかなど,昨年一年間でやってきたことを振り返る時間をもつことができた。3月の春季休業から4月新学期が始まるまでに,自分の授業で挑戦したいことをアイデアノートに書き出した。すぐに達成できるものから,そう簡単には達成できないことまで多くのやりたいこと,やるべきことが出てきた。英語の授業とは別に,メジャーリーグで活躍されている大谷翔平選手が高校時代に使っていた目標達成シートであるマンダラートを使って,自分たちが達成したいことを書かせた。その時に私も同じように,英語の授業において達成したい目標,「毎回新しいことが学べる授業の実施」を真ん中の目標に置いた。その目標を持ってのまず第一段の取り組みとして,以下の活動をコミュニケーション英語Ⅱの授業で行った。

2.授業実践

①活動の目的

Revised LANDMARK English CommunicationⅡのLesson2 “Tokyo’s Seven-minute Miracle”を用いて授業を行った。Lesson2のパート1には株式会社JR東日本テクノハートTESSEI(略称:テッセイ)の使命や掃除行程,パート2には“Tokyo’s Seven-minute Miracle”と呼ばれる理由,パート3にはテッセイの日本での成功における要因,そしてパート4にはテッセイメンバーの過去から現在までの仕事への考え方の変化について書かれている。それらを読み進め,テッセイの成功は彼らの仕事への情熱,責任感,プライドに加え,日本人の掃除に対する心得も必要不可欠であるということを学んだ。それらの内容を文章で読むだけで終わらず,自分たちの学校生活の一部である掃除と関連付けて考えることで,学んだ知識を生かし,自分たちの掃除への取り組みを考え直す機会とし,さらによいパフォーマンスをすることができるのではないかと考えた。

②活動の中で生徒が取り組む内容

③活動の様子

④生徒たちが書いたミッションの例

  • We should decide the aims every week.
  • Each of us should have sense of pride and responsibility.
  • It is good idea to make a ranking of cleaning by comparing.
  • Chiritori can’t catch all trash, so please give us a cleaner.
  • We should keep the cleaning tools clean.
  • If we clean very hard for a week, we don’t need to do our homework.
  • It’s good to decorate our cleaning tools.
  • I want my homeroom teacher to clear his desk.
  • We want our homeroom teacher to make marks on the floor to arrange our desks beautiful.
  • I want my homeroom teacher to change old cleaning tools into new ones.
  • We should be a perfect person like Mr. Konishi (their homeroom teacher).
  • The first mission is that we should putt on slippers which has mop.
  • We clean our classroom listening to music.
  • First mission is that everyone should not drop their eraser dust.
  • It is good to invite the cleaning sommelier.
  • To wipe a floor with a wet rag on Friday.
  • Don’t drag the desks.
  • To finish cleaning in seven minutes.
  • It is interesting to become the member of Tessei.
  • We want teachers to hold the wiping rag race.

※文法的な間違えなどもあるが,生徒の書いたままを載せています。

3.成果と課題

本校には中学校時代から英語に対して苦手意識を強くもつ生徒が多くいる。そのため,グループワークやペアワークを導入することにより,自分の考えや答えが合っているかを発表前に確認したり,共有することで自信へとつながり,生徒同士のやり取りが活発に行われている。今回もグループワークを取り入れたので教え合いが活発に行われた。

自分たちの言いたいこと,考えたことを英語で書くことができ,英語で他者に伝えられたという達成感を生徒が感じられたように思う。“読むこと”ばかりに焦点を当てずに,読んで得た知識を元に自分たちの学校生活に関連付けて物事を考えることで,教科書内の机上だけでの学びではなく,自分たちの生活の問題点に目を向けるといったことで,アクティブラーニングへ近づくための第一歩を踏み出せたように感じている。

インプットが中心だった昨年度の反省を活かし,英語を読む,書く,話す,聞くの4技能が関連した活動を取り入れることができた。活動内で出た「自分たちのモチベーションが上がるための教室の環境づくり」のアイデアをコミュニケーション英語の授業内だけで終わらせず,クラス担任へも生徒の成果物を共有し,実際に行動へ移すところまでつなげていきたいと考えている。

課題としては,生徒が英作をしたワークシートをALTに添削してもらい,同じ間違えや,よりよい表現方法,全員に共通認識で伝えたいことをスライドに映し,フィードバックまでスムーズに行えるように準備をしていければさらにライティングの授業が深まったと反省している。またグループで案を出す際の話し合いの時間も英語で討論ができるところまで持っていきたいと考えている。今回はICTの使用まで取り入れる時間の余裕がなかったが,生徒たちの考えをパワーポイントなどを用いて視覚的補助を上手く使いながらプレゼンテーションができるようにうまく時間を使いたい。そして発表までの練習時間の確保,質疑応答まで活発に行えるようにするには,普段から教師だけでなく,生徒にもクラスルームイングリッシュを進んで使っていくような雰囲気づくりをしなければいけないと改めて感じた。授業内でも「英語を話す活動」を多く取り入れ,短いスピーチから英語を話すことに自信を持ち,外部のスピーチコンテストやエッセイコンテストなどに興味を持つ生徒が増えるような創意工夫をした授業を続けていくために,私自身が学びを止めないようにしなければいけないと感じた。