高等学校の教科書・教材|知が啓く。教科書の啓林館
英語

授業における単語の導入とリーディングについて

鳥取城北高等学校 山根 正樹

単語は辞書で調べるもの?

「辞書を引いた数だけあなたの英語力は向上する。」昨今多種多様なことが提言されている英語教育において,この言葉は昔から変わらぬ真実であると思う。私もそうやって英語を学習してきたし,今も毎日辞書を引いている。しかし,しかしである。あまりにも当然と思っているため,そこにある落とし穴に気づいていないのではないだろうか。例えば,今,手元にある教科書の1つのパートを見てみると新出の単熟語が24個ある。もし,1つの単語を調べるのに1分かかるとすれば24分,2分かかるとすれば48分,3分かかるとすれば…。これは,英語が苦手な生徒の予習を放課後見ていた際に気づいたことである。英語が苦手な生徒たちは当然辞書を引くのが遅い。しかも,まじめな生徒ほど辞書にある意味をすべてみてあれこれ考える。そして訳が分からなくなり英語が嫌いになる。調べず授業に臨むと先生から怒られさらに嫌になる。

単語は教師が教えるもの!

単語は,特に英語が苦手な生徒にとって,引くのに時間がかかりすぎる。よって単語を引かせるのであればいくつか単語を指定するか,教師がすべて教える方が効率的だと私は考える。その方が生徒のストレスと負担が減り,もっと別のことに時間を割ける。教師が単語を教えるのは他にもメリットがある。単語の知識は教師の方がはるかに詳しい。だから,単語の正しい使い方も同時に教えることができる。例えば,especiallyという単語を生徒が辞書で調べ「特に」という意味の認識だけで終われば,英作文で「特に」と書きたい場合,文頭からespeciallyを使うだろう。しかし,especiallyは文頭では通常使用しない。そういった英作文で間違えそうなところも最初から教えることができる。他にも,calmがでたらstay calmは必ず教えたいし,spendがでたらspend 時間 doing / 前置詞+名詞とspend お金 on ~,encourageがでたらencourage 人 to doはもちろん,動詞化のenを利用し,enjoy, enlarge, widen, entitle, enable, whiten, endangered speciesなどもセットで教えたい。legalがでたらドラマ・リーガルハイの話もしたい。adverbのadは方向・verbは動詞,動詞を修飾するのは「副詞」だよねと言いたい。つまり,生徒に単語の正しい使い方と,なんでもいいので単語を覚えるきっかけを教えたい。

単語プリントの一部①


[①まずは生徒が右側に現時点で知っている単語の意味を書く⇒②単語の説明⇒③音読]

単語プリントの一部②


[宿題でも授業でもいいので単語を導入したら必ず英作文もさせる]

読む量の確保を

単語を教えたら,後はそれぞれ活動をする。生徒に英語を読ませたいのであれば,どんどん読ませる。読む量は多ければ多いほどいい。1年生及び2年生に3年生が実際受けたセンター試験を1月に解いて感想を書いてもらうと必ず「読む時間が足りない。時間内に解ききれなかった。」というコメントが多数ある。これはまだ1年生や2年生だからではなく英語を読む経験をあまりしてないからではないだろうか。バスケットで例えれば,1試合40分の試合なのに,練習ではいつも10分を想定したトレーニングしかしていないようなものだ。最後まで戦う体力がない。だから,日ごろから意識的に英語を読む必要がある。しかし,ここに大きな問題がある。英語が得意で好きな生徒なら何を教材にしても,どんな副読本を紹介してもいいかもしれない。しかし,英語が苦手な生徒は長文アレルギーを持っている。その原因は中学校長文と高校の長文の量をみればすぐわかる。高校の教科書は当然中学校より英文の量が多くなっている。それについていけないのだ。だからといって,教科書のレッスンの各パートに何時間もかけることは出来ない。それは,先に挙げた10分しか想定してない練習であるからだ。センター試験をみれば,生徒に求められている力の1つは明らかに英文を読む速さである。

英検の過去問活用例


[①単語は下に書いておく⇒②パラグラフごとにメモをとり,問題を解く。]

例えば「アクセルリーディング」なら生徒は読む

そういった生徒にはアレルギーをとってやることから始めなければいけない。簡単なものをたくさん読ませるのが1つの方法ではないか。教科書以外には英検やTOEIC Bridge及びTOEICなどの過去問が有効だ。特に,英検の長文は読んでいて面白いのでお勧めしたい。その他ではアクセルリーディングもいい。1年生では「アクセルリーディング1」を採用しているが,150~160wordsの英文量を1~2分で読み切ることができる。内容のジャンルも多岐にわたり,センター試験第4問のような形式の問題もある。速さを競わせると生徒は楽しそうにするし,ディクテーションもあるので使いやすい。ここで生徒に「あっ,英語読める!」という経験をさせたい。「アクセルリーディング」を授業で使った際,いつも英語を読む場面になると決まって寝てしまうある生徒も寝ずに英語を読み切った。そして,そうした授業を何回かすれば生徒は要領をつかんでくるので,週末課題にすることもできる。「読める」と生徒は思っているので,答えを写さず自分で解いてくる。そうして,英語を読むことに抵抗が少なくなってきたら,副読本を何冊か紹介してあげると興味をもって読みだす生徒もいる。多読用の本は啓林館からもでていて,現在それを読んでいる生徒もいる。他に生徒が好きなのは,日本の昔話の英訳や海外の昔話,東進ブックスからでているライトノベルなどである。

授業は生徒の活動の場

私が最近授業で気を付けていることは説明をできるだけ削り,生徒が読んで聞いて書いて話す時間を最大化することである。高校時代の話だが,私のクラスを担当されていた若い数学の先生がとても熱心に授業をしてくださった。問題の解き方を丁寧に板書され,私も必死にノートをとる。しかし,ある時驚くべき事実に気づく。なんと板書を写したノートと教科書が全く一緒なのだ。つまり,教科書の内容をその先生は板書し私はそれをひたすら写していたのだ。それに気づいて以来板書をするのはやめ,教科書を読み副教材の問題集を解くようになった。そんな経験をしたにもかかわらず,私は教壇に立ち始めたころ,同じことをしていた。教科書と付属参考書を使い教材研究を自分なりに一生懸命し,それをまとめ大きな声で説明し板書し生徒はそれをまじめに写していた。しかし,今から思えば,その板書内容は参考書に書いてある内容と同じ。生徒からしてみれば書いて写すだけ時間が無駄だったのである。授業は説明をする場ではなく,生徒が活動する時間である。Less TTT(Teacher Talking Time)でstudent-centeredな授業を心掛けている。

さいごに 「生徒にラベルを貼らない」

これは駿台予備校の竹岡広信先生から教えていただいたことだ。私は毎年東大や京大合格者を輩出する進学校にもアルファベットを書き写すところから指導するような学校にも勤務したことがある。このように書くと経験の幅が広いと好意的に受け取ってくださる方もいらっしゃるかもしれない。しかし,様々な生徒を見てくると無意識に「この生徒は大体このくらい」という値踏みをしてしまうことがある。これは教員が絶対にしてはいけないことである。なぜなら生徒の潜在的な才能を殺してしまうからである。生徒は教員を選べない。だから責任のある教員にならなくてはいけない。ある時,竹岡先生に英検は1年生からどんどん受けさせるべきだと言われ,実際に今年の1年生には積極的に受験してもらった。内心は今の生徒のレベルでは難しいだろうなと思いながら。結果は1年生にも関わらず準2級合格者がどんどん出てくる。そして2級合格者まで出てきた。1年生で2級合格。以前の私なら受験すら勧めていなかっただろう。もちろんそれなりに英検の対策を行ったが,それ以上に頑張ったのは生徒自身。まさに生徒の可能性を見誤っていたことに気づかされた瞬間だった。前任校の校長,牧先生は「生徒はダイヤの原石。それに気づかない教員がどれだけ多いことか。」と私が離任する際に話してくださった。これからも生徒の力を信じ,英語を教えていきたいと思っている。