小学校 教科書・教材|知が啓く。教科書の啓林館
算数

場合を順序よく整理して

6年 青森県東北町立第一小学校 角田 将三

1.はじめに

私が授業をする時に心がけていることは,子ども達の考えを大切にし,その考えを全体に共有させながら,核心にたどり着けるようにすることである。そして,子どもたちが自ら気づき,考え,自分が思っていることを説明し,友達の考えを聞きながら問題解決をする過程で,算数に対する「楽しさ」や「良さ」を感じられるような授業づくりを目指している。

2.子どもの考えを発言として引き出す工夫

授業の中で子ども達の考えを大切にするためには,まず子ども達の考えを引き出す必要がある。ここで私が気を付けていることは,自然と子ども達が考え,発言するようにしかけることである。子ども達の考えを大切にするといっても,ただ子ども任せにするのではない。授業の中で気付いてほしいことや,核心に迫る考えをあらかじめ整理しておき,それらが子ども達から自然に発言として出てくるように授業を構成するのである。

例えばゲームに取り組ませたり,不完全な問題文を提示したり,時には子どもの発言を「そんなわけないよ。」とわざと否定したりする。そのような手立てが子どもの思考を揺さぶり,子どもを本気にさせ,発言したいという気持ちを高めることにつながると考えている。

3.子どもの考えを全体に広める工夫

子ども達から考えを引き出した後,それを全体に広め,理解させ,吟味させる必要がある。子どもの考えを広めるための手立てとして,以下のようなことを行っている。

[1]から[6]の手立てを内容や子ども達の反応を見ながら授業に取り入れているが,その時に,子どもが子ども(教師にではなく)に説明するという意識を大事にしている。子ども同士で説明する状況を考えた時,「ここがわからないんだけど…。」「ここはね,○○でしょ(○○じゃん)。」「うん。」「だから,○○になるんじゃない。」「ああ,そっか。分かった。」というような表現が自然であり,「~です。どうですか。」「いいです。」「同じです。」「付けたしがあります。」というような表現は不自然だと感じる。もちろん敬語が必要な場合もあるが,算数の授業では「気付いたことを発言したい。」「分かったことを説明したい。」「分からない部分について聞きたい。」という子ども達の気持ちをダイレクトに生かしたいので,普段の表現で説明をさせるようにしている。

4.「考えさせる」と「教える」を区別して授業を構成する

子ども達の考えを大切にした授業づくりに取り組んでいるが,学習内容によっては教師から教えることが必要である,又は有効である場面が出てくる。例えば,定義や用語を知る場面や,筆算・作図などのやり方を学ぶ場面である。そのような場面では,教えるべきことを子どもにしっかりと定着させ,その後,問題に適用させて理解を深めることが効果的だと考える。

まずは,問題解決に必要なことは何かを把握する。そして,子ども達に「考えさせる」部分と「教える」部分を区別し,展開の中のどのタイミングでそれぞれを取り扱うのが子どもの思考の流れに沿っているかを考え,授業を構成する。そうすることで,展開がスムーズになり,より時間をかけたい部分(子どもが考える場面)を丁寧に扱うことが可能になり,子ども達の充実感や達成感を味わうことにつながると考える。

5.実践

学習活動・児童の反応 教師の支援と工夫
1 ゲームを行う。

~ゲーム[1]~

T 全員かぶっちゃったね。

C 絶対無理だよ。

T なんでそう言えるの?

C だって,11人いて,3つしかないもん。

T どういうこと?

C 3つの中から2つ選ぶ組み合わせは3通りしかないってこと。

○子どもの興味・関心を高めるために,ゲームに使うすしネタを話し合って決める。

○3つのすしネタから2つを選ぶという場面を設定することで,同じ組み合わせになりやすい状況を作り,どうすればゲームが成立するのかを考えさせる。

○全員の組み合わせがかぶってしまった理由を話し合う中で,子どもから「組み合わせ」という表現を引き出す。

2 ルールを変えてゲームを行う。

T じゃあ,どうすればできそうかな。

C メニューを増やせばできそう。

T メニューを追加してやってみよう。

~ゲーム[2]~

T 2人だけ食べることができるね。

C もう1回やりたい。

○組み合わせを考える場合,順番は関係ないことを抑える。

○子ども達から出た組み合わせ(マサ マグロとサーモン)は板書に残しておく。

3 4つのものの中から2つ選ぶ組み合わせと,その場合の数について考える。

T ちょっと待って。みんなから出た組み合わせは6通りだけど,もうほかにないのかな?3つの方法で考えてみよう。

・まが玉式
・ベース式
・リーグ式

C やっぱり6通りだ。

○組み合わせの数を落ちなく考える3つの方法を教え,実際に書かせる。次の5つの中から2つ選ぶ場面で子ども達が自分で使えるように,子ども達の反応を見ながら理解度を確認し,全員ができるようにする。

4 ルールを変えてゲームを行い,5つのものの中から2つ選ぶ組み合わせと,その場合の数について考える。

T 最後にもう1品メニューを追加してやってみよう。

~ゲーム[3]~

T 今度は7人が食べることができるね。みんなから出た組み合わせは何通り?

C 9通り。

T これで全部かな?確かめられそう。

C まが玉式でできそう。

C ベース式だとどう書けばいいのかな?

~ノートに書いて確かめる。~

C 10通りだった。

T じゃあ,1つ出てない組み合わせは何だろう?

C マグロとジュースだ。

○3つの方法に「○○式」という名前を付け,子ども達が表現しやすいようにする。


○前段階で学んだ3つの方法を使って,5つの中から2つを選ぶ組み合わせの数を確かめさせる。

○黒板に図を書かせながら,説明させる。

5 今までの結果から,6つのものの中から2つ選ぶ場合について予想する。

T 3つから2つ選ぶのは3通り,4つから2つ選ぶのは6通り,5つから2つ選ぶのは10通りだったね。時間がないからやらないけれど,もう1品追加して,6つの中から2つ選ぶ組み合わせは何通りになるか予想できるかな?

C あ,わかった。増え方を見ていけばいいよ。

C あ,なるほど。

T どういうことか説明してくれる?

C 3つから2つ選ぶときは3通りだったでしょ。

C うん。

C 4つから2つ選ぶときは6通りで,3つ増えているよね。

C うん。

C 次は4つ増えているから…。

C あ,わかった。3,4,5,…って増えていくんだ。

C だから,15通りだと思う。

○今までの状況とそれに対応する組み合わせの数を黒板に縦に並べて整理する。


○整理した板書の下に「6つから2つ○通り」と付け加えることで,組み合わせの数の増え方にきまりがあることが見えやすいようにする。

T じゃあ,2つから2つ選ぶ組み合わせは何通りかわかる?

C そんなの1通りしかないよ。

C 3つから2つ選ぶ組み合わせより2つ減ってるんだ。

C 2,3,4,5,…って増えていくんだな。

○2つの中から2つを選ぶ組み合わせは1通りしかないことに目を向けさせ,組み合わせの数が,2,3,4,5,…と増えていくことを理解させる。

(5)板書

6.おわりに

今回の授業で子ども達から引き出したかった,また,考えさせたかったことは次のようなことである。

ゲームを通してこれらのことを引き出し,考えさせた。そして,組み合わせの数を落ちなく調べる方法は教師が教えることとして位置づけ,その後,違う状況で活用させることで理解の深まりをねらった。

授業を通して,子ども達が進んで自分の考えを表現し,授業者として授業を楽しむことができた。これからも子ども達の考えを大切にした授業を子ども達と共に作っていきたいと感じている。