小学校 教科書・教材|知が啓く。教科書の啓林館
英語

Thinking Tools を活用した英語活動

関西大学初等部 梅本 龍多

1 はじめに

本校では,初中高12年一貫教育を同一の建物(13階建てのビル)で実施している。12年間の指導を通して,「メッセージを正確に受け取り,自分の意見を明確に表現する児童生徒」を目標に,積極的なコミュニケーションの態度とともに,英語考動力(「情報収集力」「対話力」「意見発表力」「交渉力」)の育成をめざして実践に取り組んでいる。

初等部での英語教育の概要は,下表のとおりである。

学年 指導時間数 使用教材 指導者 文字指導 学習状況の評価
低学年
(各教室)
毎朝15分のモジュール授業週5回
  • 市販の児童英会話教材
  • 自作教材
全時間
日本人英語担当とALT
アルファベットを理解する。 リスニングテスト
インタビューテスト
観察
通知表(文章表記のみ)
中学年
(各教室)
45分の授業週3回
  • 市販の児童英会話教材
  • 自作教材
全時間
日本人英語担当とALT
読むこと
単語や文を読んで理解する。
書くこと
単語や文を書き写す。
リスニングテスト
インタビューテスト
ライティングテスト
観察
児童英検結果の活用
通知表(観点別評価,文章表記)
高学年
(英語ルーム使用)
45分の授業週4回
  • 中学校英語検定教科書
    (BOOK2の1/3程度までを指導)
  • 自作教材
全時間
日本人英語担当とALT
読むこと
英検4級レベルの文章を読んで理解する。
書くこと
単語や簡単な文章を書く。
リスニングテスト
インタビューテスト
リーディングテスト
ライティングテスト
観察
英検結果の活用
通知表(観点別評価,文章表記)

※中等部では,50分の授業が週7回になる。

第6学年の修学旅行は10月にオーストラリアへ行くため,それまでの授業はどちらかというと音声中心にしている。それ以降は,中学校との接続に向けて文字の読み書きの負荷を増やしている。

また,インターネットを活用した海外交流校とのTV交流やE-mail,作品交換などを第3学年から実施している。主な交流相手国は,アメリカ,イギリス,オーストラリアで,それとは別に本大学の留学生と直接交流する機会も設けている。

さらに,本校では分類・比較・類推など,多面的・論理的な思考の育成をめざした「ミューズ学習」の時間を第1学年から特設し,授業づくりにおいてThinking Tools(ベン図やXチャート,ボーン図など)を活用している。


ベン図


Xチャート


ボーン図

2 授業実践例

(1)学年

第5学年

(2)単元名

「自己紹介をしよう」

(3)単元の目標

(4)Thinking Tools を活用する授業デザイン

a. Thinking Tools の活用

英語の授業では,「ミューズ学習」で学んだThinking Toolsを次の2場面で活用している。

情報がThinking Toolsによって整理,視覚化されることで,内容をより正しく理解したり,自分の思いを的確に表現したりできることに繋げている。この過程では,日本語を用いた活動が中心となることが課題だが,その後の英語で発表する時などに,積極的な態度が見られることが期待される。今まで活用したThinking Toolsは,ベン図,Xチャート,ボーン図,ピラミッドチャート,PMIである。


ピラミッドチャート

P
Plus
(いいところ)
M
Minus
(よくないところ)
I
Interest
(興味)
     

PMI

b. 単元について

本単元では,be動詞と一般動詞(likeとplayが主)を用いて書いた自己紹介が,クラスメイトの誰のものかを “Do you 〜 ?” の質問をすることによって明らかにさせる。

その際,「できるだけ少ない質問で,どの自己紹介が誰のものかを確かめる」という課題を与え,無計画に質問しても効率が良くないことを確認する。その上で,課題解決のためには,全員の自己紹介(英語情報)を読んだあと,既習のXチャートやWチャートなどを活用して分類し,情報を整理して,それらを基にペアでどのような質問をすればよいかを相談させる。

Wチャート

本時では,前時に整理したものを基に,的確な質問を順に並べ,友だちに尋ねることで,効率よく誰の自己紹介かを明らかにさせる。

<自己紹介の例>

No.20
My name is (          ).
I’m eleven years old.
I’m from Osaka.
I live in Takatsuki City.
I like sushi.
I play basketball.

<質問の例>
Are you ten years old?
Are you from Osaka?
答え方は,Yes, I am. か No, I’m not.
Do you live in Kobe city?
Do you like sushi?
Do you play baseball?
答え方は,Yes, I do. か No, I don’t.

(5)単元計画

1 be動詞と一般動詞を用いた文を書き,自分紹介文を完成する。(1時間)
2 ペアで相談して,全員の自己紹介の情報を読み,既習のThinking Toolsを使って目に見える形で整理する。(1時間)
3 4 整理したことを基に効果的な質問を選び,誰の自己紹介であるか明らかにする。(2時間:3が本時)

(6)本時の学習(上記3が本時)

①目標

整理したことを基に効果的な質問を選び,誰の自己紹介であるのかを明らかにする。

②展開

学習活動 教師の支援(○)・評価(◆)
1.挨拶をする。
Good afternoon.

○元気に挨拶させる。
2.復習をする。
  • 教師の質問に答える。

T: Do you like sushi?

S: Yes, I do. / No, I don’t.


○教師の質問に答えさせる。

  • リズムに合わせて単語を繰り返し言う。

○本時で使う単語に慣れさせる。

3.授業のめあてを把握する。
  • ルーブリック*を話し合う。

○到達基準を確認させる。

『整理したことを基に効果的な質問を選び,誰の自己紹介であるか明らかにする。』
S(とてもよくできる): できるだけ少ない質問で,誰の自己紹介かがわかる。
A(よくできる): 誰の自己紹介かがわかる。
4.整理したことを紹介する。

○前時にペアで整理したことを簡単に発表させる。

5.ペア活動をする。
  • ペアで相談して,ワークシートに質問を記入する。
○ペアで質問を整理させる。
  • 前時で整理したことを基に,すでに分類したどのグループの人に,どのような順で質問をすればより少ない質問で知りたい情報が得られるかをペアで相談して,ワークシートに記入させる。
  • ペアの代表を決め,質問する。
Do you like pizza?
Do you play the piano?
Are you eleven years old?

○質問したいグループを1つ決め,質問させる。

【手順】

①質問したいグループの児童を前に出させる。

②質問者1人1回,3人に同じ質問をさせる。

③グループ全員の自己紹介が誰のものかが判明するまで質問を続けさせる。

◆ 誰の自己紹介かがわかる的確な質問をしている。

6.振り返る。
  • 気付いたことを発表し合う。

○ルーブリックを基に振り返りをさせる。

7.挨拶をする。 ○次時の予告をする。

*ルーブリック:レベルの目安を数段階に分けて記述し,達成度を判断する基準を示すもの。

3 おわりに

子どもたちがどのように情報を分類したかというと,ほどよくばらつきが見られる「出身都道府県」や「住んでいる市や町」にまず目を付けてカードを分類するペアがほとんどであった。中には,はじめから「好きな物」や「すること」を基に分類するところもあり,より少ない質問で誰の自己紹介かを当てようと試みるペアもあった。チャートは自由に書かせたので,XチャートやWチャートの変形版が多く見られた。ほかには,右の写真のようにチャートを使わずに一覧表のように分類するペアもあった。

チャートに分類したものを糊付けする際には,さらに残った項目で再度分類し,最終的に,誰と誰に何を質問すればより少ない質問で全員のカードを当てることができるかを考えていた。ペアで作業をさせたので,1つのチャートを挟んで2人で相談しながら互いの分類の仕方を整理することができた。

子どもたちは英語の情報を読み取って見える形で分類し,その結果を基に質問とその相手を考えた。そして,最終的に英語で質問し,その答えを聞き取ってどのカードが誰のものであるかを明らかにしていった。確かに,日本語が飛び交う授業ではあったが,子どもたちの実態に合った指導法として一つの実践例を積み上げることができた。

最後に,流れをまとめておく。

「チャートを使って情報を分類する」という作業があることで,情報を正しく理解しているかが判明し,「ぜひ質問してみたい」という積極的な態度にも繋がっているようである。

参考図書

  • 「関大初等部式 思考力育成法」関西大学初等部 2012 さくら社
  • 「思考ツール ~関大初等部式 思考力育成法〈実践編〉」関西大学初等部 2013 さくら社
  • 「思考ツールを使う授業 ~関大初等部式 思考力育成法〈教科活用編〉」関西大学初等部 2014 さくら社
  • 「関大初等部式思考力育成法ガイドブック」関西大学初等部 2015 さくら社