高等学校の教科書・教材|知が啓く。教科書の啓林館
英語

実生活を意識した読解活動の実践例

大阪府立茨木西高等学校 末永 浩基

1.はじめに

大阪府立茨木西高等学校は大阪府教育委員会事業である「使える英語プロジェクト」のイングリッシュ フロンティア ハイスクールズ G1に指定された学校です。「人権と進路」を二本柱にした総合学習を実施しており,イングリッシュ フロンティア ハイスクールズ指定後は国際教育にも力を入れています。また,令和4年度からは大阪府事業であるリーディングGIGAハイスクール事業に指定され,国際教育のみならず大阪府内のGIGAハイスクール先進校として最先端の授業を行っています。
「茨西PRIDE」をスローガンとして,生徒それぞれの志をカタチにすることを目標に4つの力の育成に力を入れています。1.“確かな学力”の育成 2.志高く“社会を切り拓く力”の育成 3.自己肯定感を持ち,社会人として“自律する力”を育む 4.自分の周りの人,地域,世界と“つながる力”の育成です。これらの力を育むことで,不確実な時代を切り拓く人材の育成に努めています。

2.『LANDMARK Fit』との出会い

前任校である大阪府立長野高等学校では普通科・国際教養科(現在は国際文化科)と二つの学科があり,当時の教務主任の意向により,同じ教科書を選択しなければなりませんでした。学科名の通り,国際教養科では英語を得意とする生徒がほとんどで,普通科に在籍している生徒との英語に対するモチベーションには大きな差がありました。しかし,LANDMARK Fitでは英語を苦手とする生徒が取り組みやすいテーマを取り入れており,1つの文章をPartごとに分けることで丁寧に文章を読み,理解できる構成になっています。また,英語に対するモチベーションが高い生徒にとってはPartごとに分けられた文章を1つの文章として読み,表現活動につなげることで表現力を身につけやすい教材になっています。これらの要素が2つの学科の生徒にとってよい教材と判断し,採択しました。

3.前任校での比重を変えた読解活動の取り組み(インプット)

教科書の利用にあたっては青森県立田名部高等学校で実施していた「TANABU Model」を参考に教科書のレッスンごとに比重をかえた指導を行ってきました。LANDMARK Fit English CommunicationⅠ(コI 341)の比較的取り組みやすいテーマでは表現活動を多めに導入し,環境問題や歴史に関するテーマでは本文の内容理解を丁寧に指導し,表現することで様々なテーマで自分の意見を深く表現できる力を身につけることができたと感じています。特にLesson7 Eco-tour on Yakushimaでは写真のように,本文で出てくるSuzuki Kentaになりきって教室内でエコツアーを実施しました。

各Part2~4の英文を教室や廊下に掲示し,グループで英文の内容を読み理解する活動です。その際に,下図のようなクイズを用いたワークシートを配布し,班で本文をツアーのように周りながら英文を読むアクティビティを導入しました。各問題に関しては,教科書や教科書データ内にある英文の問題を利用しました。また,最後の問題はそこから導き出される記号を計算し,正解の教室に移動するトレジャーハントの要素を入れた形式での本文読解を実施しました。

4.前任校での比重を変えた読解活動の取り組み(アウトプット)

理解した読解内容を発表するアクティビティは様々な方法がありますが,この単元では,SDGsのことを学び,自分が気になる環境問題を調べ,その問題がどういった方法で解決できるのかを調べ発表しました。読解したテーマのものを発表するので,学んだ英単語を再度利用し,アウトプットすることで学んだ内容をより深く身につけることができたと感じています。
また,次年度同じようにLANDMARK Fitを利用した際は,発表するのではなく「Flipgrid」という動画編集アプリを利用し,動画作成にも挑戦しました。「Flipgrid」はGmailのアドレスで簡単に登録ができ,Chromebookで撮影した内容を簡単に編集し,他の人と共有することができるアプリです。Google Classroomのように各グループに動画を上げるための部屋を準備し,決められた時間で撮影,編集をしました。生徒たちは「YouTuberみたい!」と普段あまり行わない形でのアウトプットを楽しく行うことができました。

5.前任校での経験をいかした現在での取組み

現在勤めている学校では「世界とつながるためのツール」としての英語よりも「大学受験のための英語」という認識を持った生徒が多い学校です。しかし,前任校での経験を活かして,国際交流の機会や様々なアウトプットの活動を行い,受験のためだけの英語という認識を少しずつ変えるために努めています。

①姉妹校との取り組み

大阪府立茨木西高等学校ではオーストラリアの高校と姉妹校提携を結んでいます。英語コミュニケーションの授業では教科書を通じて学ぶ英語を利用し,海外の人とオンライン交流を行うことで,生の英語を体験する機会を導入しました。生徒たちは学んでいる英語を活かすことができる体験をし,喜んでいました。

②ポスターセッション

英語コミュニケーションの授業は全体授業が多く,発表形式のものを導入しにくいかもしれません。しかし,グループでポスターセッションを行うことで発表の機会を取り入れることができます。奇数グループと偶数グループで分かれて発表側と観覧側で行い,時間制限を設定し,教員がファシリテーターとして回すことで40名が発表と聞き役の2つの役割を行うことができます。

③教育アプリの利用

前任校で利用していた「Flipgrid」はもちろんのこと,現在の勤務校では様々な教育アプリの利用に挑戦しています。知識定着の確認のために「Kahoot!」や「Quizlet」を導入し,「クラス道場」というアプリで生徒の積極性を高めることにも挑戦しました。現在,一人一台端末が当たり前になった教育現場だからこそできるICTを利用した教育だと考えています。

6.おわりに

上述での実践はまだまだ改善途中です。今後,受験や授業を進めるだけの英語教育ではなく,生徒が実生活においてどういった英語が必要かを考え,英語の授業を行っていきたいと思います。今回私が紹介した授業例がみなさんの授業実践の一助になればと思います。拙文最後までお読みいただきありがとうございます。

<参考文献>