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英語

ACTIVE & EMOTIVE LEARNING!

北海道文教大学明清高等学校 玉置 博信

現状

  本校入学生の中学時代の英語の学力は決して高くなく,英語に嫌悪感を持った生徒も少なくない。そのような生徒に,50分間の英語の授業を,いかに飽きさせることなくACTIVEに,潜在能力を見つけ出し,達成感を持たせEMOTIVEに学問ではなく,ゲーム感覚で英語というコミュニケーションツールを知らず知らずに定着させるかが,英語教師としての私の課題である。

信条

  『教育は返球の遅いキャッチボール』である。何度も何度も様々な方法で生徒に送球(語り,問かける)し,生徒からの返球(応答,行動)を待つ。そのためにも教員生活30年間,4月の最初の授業で生徒に叫び続けているフレーズは『俺はお前らに,こんな単語/問題もわからんの?とは絶対言わへんからどんどん聞いてくれ!』『わからんか~よかったな~今日わかるようにしたるで!』である。私の授業に興味を持ち,いつもは振り向きもしなかった英文中の単語の発音や意味を素直な気持ちで,私に聞いてくる生徒を,「こんな単語もわからんの?」と一刀両断のごとく言い放ってしまうと,もうその生徒は私には振り向かず,固く心を閉じてしまうのである。

授業
使用教科書 啓林館 LANDMARK Fit English CommunicationⅠ

準拠 予習・完成ノート及びワークブック

※電子黒板を使用し,パワーポイントで授業展開する。
※基本ペアワーク中心

展開
各レッスン1パート約2.5時間を費やす。

1時間目

1:単語帳 Pair Reading

2:Shadowing

3:New Words Check

4:Repeat After CD Three Times In Between!

5:Let’s Be a Teacher!

6:Match the Words!

7:Quick Writing

8:New Phrases Check

9:SAY IT By using New Phrases!

10:Conversation Time

2時間目

1:1時間目の1.2.5.7

2:Translation

3:Check Up & Sum Up

4:Answer the Question Below!

5:T or F

6:Pair Reading

7:Grammar Point

8:Exercises

9:Conversation Time
 

2.5時間目

1:1時間目の1.2.5.7

2:Read Aloud( Individual / Pair )

3:Rearrange

4:Blank Reading/Model Blank Reading

5:Memorize

6:Dictation

展開での各時間を見てわかるように,様々なアクティビティーを導入し,様々な角度から英語をゲーム・クイズ感覚で英語に親しませ,知らず知らずに学ばせていく。

1時間目

1: 単語帳 Pair Reading  …  週1回の英単語テストのためのペアリーディング
2: Shadowing  …  教師が既習パートの英文を読みながら,生徒がシャドーイングする。
これが意外に生徒に好評。英語を耳で聞いて口で再現する。まさに脳がACTIVE!
3: New Words Check  …  アクセントの位置とその発音記号を確認させて読んでいく。 写真①
4: Repeat After CD Three
Times In Between!
 …  ネイティブのCDプレイヤーから流される新出単語の間隔の間に3回繰り返させる。
例)CD:increase 生徒:increase increase increase CD:sense 生徒:sense sense sense
5: Let’s Be a Teacher!  …  ペアで次の会話をする。 写真②
A:How do you say ‘新出単語の日本語’ in English?   B:We say ‘新出単語‘ in English.
6: Match the Words!  …  ハンドアウトを用意し,新出単語の英語の説明を選ばせる。 資料①
7: Quick Writing  …  時間を決めて新出単語を何回書けるかペアで競争させる。 写真③・④
8: New Phrases Check  …  教科書に出ている新出フレーズを説明する。 写真⑤
9: SAY IT By using New
Phrases!
 …  新出フレーズを使って,日本文を英文に変えて言わせる。 写真⑥
10: Conversation Time  …  新出フレーズを使った英文を使い,簡単な会話文を5人と行わせる。 写真⑦

2時間目

1: 1時間目の1.2.5.7    
2: Translation  …  電子黒板に投影されている英文の必要個所に,アンダーラインや( )等を書き込み説明する。生徒は予習ノートを利用する。 写真⑧・⑨
3: Check Up & Sum Up  …  教科書の内容把握問題を解かせる。
4: Answer the Question
Below!
 …  電子黒板に投影される英語での質問文を見せ,生徒に答えさせる。 写真⑩
5: T or F  …  電子黒板に投影される英語での質問文を見せる前に,教員がまずその英文を読み,その英文が正しいかどうかを考えさせ,その後電子黒板に投影される英語での質問文を見せる。 写真⑪
6: Pair Reading  …  内容を確認しながら,ペアで一文ずつ読ませる。
7: Grammar Point  …  電子黒板を利用し各パートの文法事項を説明する。 写真⑫
8: Exercises  …  教科書の文法練習問題を解かせる。
9: Conversation Time  …  直前に学んだ文法を含む英会話文をペアで5人と行わせる。 写真⑬

2.5時間目

1: 1時間目の1.2.5.7    
2: Read Aloud
( Individual / Pair )
 …  個人とペアで本文を読ませる。
3: Rearrange  …  本文中,5文程度抜いたハンドアウトを配布し,記入させる。 資料②
4: Blank Reading/
Model Blank Reading
 …  ペアで練習後,一人に電子黒板の前で発表させる 資料③
5: Memorize  …  本文の1文ないし2文を暗記し,廊下で一人ずつ教師の前で発表させる。

☆暗唱後に,生徒を褒めると生徒は非常に喜び,
次も頑張ろうとする気持ちにさせる!
暗唱後は教室でディクテーションテストの勉強をさせている。

6: Dictation  …  聞き取りテスト:穴埋め10問 資料④

最後に

  各時間,生徒のタスクが約10程度あるので,テンポよく流れていかなければならないので,4月当初は,生徒がこの授業展開に慣れるまで苦労するが,ゴールデンウイーク明け位から,授業ペースに慣れ,授業展開を理解しているので,次はこれ,その次はあれと生徒自身が次の展開を理解するようになる。50分間の訳読中心ではなく,生徒は授業中,Let’s Be a Teacher!,Conversation Time,Pair Reading,Read Aloud ,Memorize等のタスクは全て立たせて行っているので,まさに立ったり,座ったりで50分が過ぎる。

「もう授業終わったの!?」

  この言葉は中学校時代,英語が全くできない苦手な生徒が私の授業終了合図時に発した言葉である。
この生徒は,Memorizeではクラスで最後に廊下に出て,なんとかつまりつまり暗唱していたが,日が経つにつれて,暗唱するための時間が短くなり,詰まることなく英文を暗唱できた時に,私はその生徒と握手をして「よくやった!もうお前は昔のお前やない!よくやった!」とEMOTIVEにほめたたえると,満面の笑顔を見せて教室に戻っていく姿を何度も見届けた。このようにして,英語の苦手意識が本当に少しずつではあるが薄まりつつある生徒が,さまざまなタスクをACTIVEに集中してこなした証拠の言葉である。毎年,何回か,特に英語が苦手だった生徒から発せられるこの「もう授業終わったの!?」を聞く時が,教師冥利に尽きると感じている。

  年に何回か研修会に参加し,さまざまな英語教授法を学ばせていただいては,実践できるところは実践してみるようにしているが,まだまだ今流行りのiPadを使った英語教授法には二の足を踏んでいる状況でもあるが,今年度から,本校も遅ればせながら英語の4技能を計測する外部検定試験を年2回導入することになったので,ACTIVE & EMOTIVE LEARNINGを通して,中学時代に英語が嫌いだったという生徒の心のバリアーをBreak throughしていくつもりである。