小学校 教科書・教材|知が啓く。教科書の啓林館
理科

理科 プログラミング体験を通した学び 理科 プログラミング体験を通した学び

1.プログラミング教育で育むもの

公益財団法人ソニー教育財団理科教育推進室室長
小学校学習指導要領解説理科編執筆者
武藤良弘

プログラミング教育のねらい

小学校における「プログラミング教育」のねらいは,
①身近な生活でコンピュータが活用されていることや,問題の解決には必要な手順があることに気付くこと(知識・技能)
②「プログラミング的思考」を育成すること(思考力・判断力・表現力等)
③コンピュータの働きを,よりよい人生や社会づくりに生かそうとする態度を涵養すること(学びに向かう力・人間性等)
という3つの資質・能力として示され1),実施に際しては,
④学習上の必要性や学習内容との関連付けを考えて,プログラミング教育を行う単元を位置付けること
つまり,各教科等の学びをより確実なものにするものでなければならないことが示されています2)

「プログラミング的思考」とは

上記②の「プログラミング的思考」の定義1)として示された文章をいくつかの要素に分けて,その構成を図にまとめてみました。この図から,この定義文が大きく2つの部分から構成されていることがわかります。
具体的な活動や現象を対象としてよりよいものに改善していくことは,これまでの学習においても行われてきたと思います。しかしながら,それらを構成要素に分解し,各要素の機能やつながりを明確にするといった抽象的な思考過程,特に,具体物の機能・役割を明確にして捉え直す「モデル化」の思考は,あまり行われてこなかったのではないでしょうか。

「プログラミング的思考」とは

「プログラミング的思考」を働かせてみる

「プログラミング的思考」を育むためには,これらの思考過程を繰り返し経験し,活用することが効果的です。そこで,具体例を使って「プログラミング的思考」を働かせてみることにします。

例1発芽の条件を基本的な機能の組み合わせとしてとらえると

温度や湿り気などの条件を調べる(センサー)
適切な条件が成り立っているかどうかを判断する(コンピュータ)
芽を出して,成長をスタートさせる(動作)
センサー,コンピュータ,モーターで構成される「温度によって自動的に動作する扇風機」と同様な機能が,とても小さな種子の中にも組み込まれているという,自然の巧みさが再認識できる。

例2モーターカーを「走る」という目的を達成させるものとして分析すると

必要な構成要素(電池,モーター,タイヤなど)が理解できる
各構成要素の役割(エネルギー源,動力源,駆動力への変換など)とつながりが明確になる⇒モデル化
目的を変更した場合も,変更すべき構成要素がどの部分であるかがわかる(例えば「階段があってもその先まで行ける」という目的では,タイヤの部分を変更)。

これらのことを基に,私なりに「プログラミング的思考」の名前を付け直すと,「物事の仕組みを分析・理解し,新しい物事を創り出すための思考方法」といったものになりました。

生活と関連付けた「プログラミング教育」

小学校における「プログラミング教育」のねらいのうち,①知識・技能,③学びに向かう力・人間性等は,実際にプログラミングを経験すること,活用することを通して育むことができます。その際のキーワードは「日常生活との関わり」です。理科の学習指導要領で例示された「センサーを活用したプログラミング」3)がこの目的に適していると考えています。「センサーの入力を基にしたプログラムによる制御」が可能になったことで,自律的に機能するものの作成が可能になります。このことによって,日常の生活に役立つもの(プログラム)を作成したり,身の回りからプログラムを活用したものを見いだしたりすることが容易になります。

1) H28.6.16 小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)
2) 小学校学習指導要領解説 理科編 第4章2
3) 小学校学習指導要領解説 理科編 第3章4

2.「わくわく理科」で
Let’s Programming!

啓林館小学校理科編集部

第6学年「発電と電気の利用」

「プログラミングを体験しよう」(p.180-183)では,巻末の「シート&シール」を使って,センサーライトが必要なときだけつく,「条件」と「動作」の組み合わせを考える「活動」を設定しています。

●授業の流れ

前時までの電気の利用の資料調べを受けて,人を感知したときに,自動的に明かりがつく照明を取り上げます。
「明かりをつけること」が動作で,「人を感知したら」が条件になることを伝えます。
プログラムとプログラミング(プログラムをつくること)の言葉の違いを説明します。
プログラミングを体験しよう

6年 p.180

●授業の流れ

教科書巻末付録「シート&シール」を使って,プログラミングを行います。
ステップ1 ステップ2
「条件シール」と「動作シール」を使って,明かりをつけるプログラムと消すプログラムを考えます。
ステップ3 ステップ4
「まとめシール」も使って,より電気をむだなく使うプログラムを考えます。
プログラミングを考えてみよう

6年 p.181

学習指導要領でのプログラミング

小学校学習指導要領解説(理科編)の第6学年「A-(4)電気の利用」では,電気の効率的な利用をとらえる学習として,センサーを使って発光ダイオードの点灯を制御するようなプログラミング体験が例示されています。
また,「内容の取扱いについての配慮事項(2)-(2)」では,「与えた条件に応じて動作していることを考察し,更に条件を変えることにより,動作が変化することについて考える場面で取り扱うものとする。」と示されており,「プログラミングを体験しながら論理的思考を身に付けるための学習活動」と位置づけられています。

教科書巻末付録『シート&シール』

「巻末のシートにシールをはったりはがしたりしながら,電気をむだなく使うためのプログラムを考えます。
イメージ画像:意図した動作になるように,シールの組み合わせを考えながら,シートにはっていくよ。 イメージ画像:意図した動作になるように,シールの組み合わせを考えながら,シートにはっていくよ。
シート&シールの紹介動画

シート&シールの紹介動画

イメージ画像:6年巻末付録「シート&シール」 イメージ画像:6年巻末付録「シート&シール」

6年巻末付録「シート&シール」

教科書QR『シミュレーター』

教科書6年p.182の(QRコードから,巻末付録「シート&シール」に準拠したシミュレーターを利用できます。
イメージ画像:6年 p.182 イメージ画像:6年 p.182
イメージ画像:シミュレーション結果で,視覚的にプログラムの検証ができるよ。 イメージ画像:シミュレーション結果で,視覚的にプログラムの検証ができるよ。
シミュレーターの紹介動画

シミュレーターの紹介動画

プログラミングのフローチャートの例や,実物のセンサーとコンピュータを組み合わせて器具を目的に合うよう動作させる活動例も掲載しています。
イメージ画像:コンピュータを使ったプログラミングの例 イメージ画像:コンピュータを使ったプログラミングの例

Scratch(スクラッチ)

Scratchは,ビジュアルプログラミングの1つで,無償で利用できます。
Scratchを使って制御できるセンサーなどの教材が,教材メーカーから販売されています。

イメージ画像:Scratchベースのソフトに対応した教材の例(アーテック) イメージ画像:Scratchベースのソフトに対応した教材の例(アーテック)

MESH™(メッシュ)

ブロックと呼ばれるセンサーやスイッチなどを,専用のアプリを使って,タブレットなどから無線で操作できます。コンデンサーやLEDなどをつないで体験できるものが,教材メーカーから販売されています。

イメージ画像:MESHに対応した教材の例(内田洋行) イメージ画像:MESHに対応した教材の例(内田洋行)

ほかの単元での例

3年

「おもちゃランド」(p.160-163)では,磁石,豆電球,ゴムなどの材料を用い,おもちゃが動作する条件を制御する計画・製作・活動を行い,理科でのプログラミング的思考の入り口としています。
「これまでの学習をつなげよう」(p.138)では,身の回りにあるものを,電気を通す・通さない,磁石につく・つかないという条件で見分ける構成とし,条件分岐の考え方に結びつくようにしています。

4年

「電気のはたらき」(p.32-43)では,乾電池の向きとモーターの回る向き,乾電池の数やつなぎ方とモーターの回る速さなど,条件を変えることによって動作が変わることを習得し,p.41の「まとめノート」でまとめることにより,プログラミング的思考につながるようにしています。
電気のはたらき

4年 p.38

5年

発芽の条件,ふりこが1往復する時間,電磁石の強さなどでは,目的に合うように制御する条件を考えて実験を行うようにし,「ものづくり広場」(p.188-191)で計画・製作も体験できるようにしています。また,発芽の条件は,6年のプログラミングのページと同様にタイルを組み合わせた図でまとめています(p.17)。
さらに論理的思考を育成するために,メダカとヒトの誕生~成長,植物の発芽~成長は,順序性などについて比べるようにしています(p.78-79)。
電気のはたらき

5年 p.17

6年

水溶液の性質の単元では,水溶液の区別を条件分岐の考え方で整理しています(p.96,98,100)。
条件分岐のフローチャートで整理。 6年 p.100
不安と負担を解決する「シート&シール」と「シミュレーター」 「9. 発電と電気の利用」の単元で,新学習指導要領から追加となったプログラミングの活動には,次の3つの課題があると考えられています。1. 市販のセンサーなどの教材を購入するための費用 2. 市販のシステムやプログラミング教材の操作や指導の習熟 3. プログラミング教育による論理的思考力の育成  例えば,3については,プログラミングが,ゲームのような活動で終わってしまうのではなく,どんなプログラムが最適といえるのか,論理的に検証できることが大切になってきます。また,5年での条件制御が,プログラミング的思考へとつながっていくことも,理科におけるプログラミング教育の意義の1つになるでしょう。 3つの課題を,どの学校でも解決でき,質の高い,プログラミング教育の支援となるように,
                    啓林館では「シート&シール」と「シミュレーター」を開発しました。

不安と負担を解決する
「シート&シール」と「シミュレーター」

「9. 発電と電気の利用」の単元で,新学習指導要領から追加となったプログラミングの活動には,
次の3つの課題があると考えられています。

1.市販のセンサーなどの教材を購入するための費用 2.市販のシステムやプログラミング教材の操作や指導の習熟 3.プログラミング教育による論理的思考力の育成

例えば,3については,プログラミングが,ゲームのような活動で終わってしまうのではなく,
どんなプログラムが最適といえるのか,論理的に検証できることが大切になってきます。
また,5年での条件制御が,プログラミング的思考へとつながっていくことも,
理科におけるプログラミング教育の意義の1つになるでしょう。

3つの課題を,どの学校でも解決でき,質の高い,プログラミング教育の支援となるように,
啓林館では「シート&シール」と「シミュレーター」を開発しました。