未来社会を切り拓くために求められる資質・能力とは,「身の回りの出来事に対して自ら問いや願いを見出し,これまでの学習や経験を活かしてよりよい解決方法を柔軟に考え出し,仲間と協働しながら問題を解決できること」そして「自らの問題解決の過程を振り返り,必要に応じて軌道修正しながら学び続けることができること」であるととらえた。
本実践では,生活科における新たな問いや願いの見出し方,そして,授業のふり返りの工夫を通して,更なる願いを生みだす力を育成することに着目し問題解決能力の育成を図った。
(1)単元名
単元名 「 もっと 知りたい たんけんたい 」
(2)単元目標
地域のさまざまな場所を訪問したりその場所の魅力について話し合ったりする活動を通して,地域の場所と自分との関わりを見付け,地域にはさまざまな場所があり,さまざまな人がいることに気付くことができる
地域のさまざまな場所を訪問したりその場所の魅力について話し合ったりする活動を通して,地域の場所や人と自分との関わりについてまとめたり,仲間に伝えたりすることができる。
地域の人々と関わる活動を通して,地域の場所や人に愛着をもち,適切に接したり,安全に配慮して生活したりしようとすることができる。
(3)単元の構想
春の町探検や夏休みに行った場所を思い出し,柳津の「まちのすてき」を探す探検を計画する。秋の探検では,その場所にある物や人に焦点をあて,自分が「すてき」だと思うものを探す。初めに児童がよく知っている場所(公民館,図書館,カラフルタウン,ブルーベリー農園など)の見学に全員で行き,自分が「すてき」と思ったものや人について仲間と交流する。全員で行った見学活動で得た知恵を活かして,最後には,4つのコースに分かれて,自分が行きたい場所を選び,探検に出かける。そこで見つけた「すてき」は,学級の半分以上の児童が知らないことなので,自分が見つけた「とっておきのすてき」を仲間と交流し柳津の町や人に愛着を持つようにする。
(1)新たな問いや願いの見出しをパターン化
| 問いや願いが生み出されるパターン | 児童の具体的な言葉 |
|---|---|
| ①実態を把握した教師による声かけから,更なる願いを生む。 | 「もっと〇〇してみたい。」 |
| ②比較から,疑問やあこがれを生む。 |
「どうして〇〇だろう。」 「〇〇みたいにしてみたい。」 |
| ③憧れや期待から,「こうなりたい」という願いを生む。 | 「〇〇みたいにしてみたい。」 |
| ④新たな物や人との出会いから興味や疑問を持つ。 | 「そんなものがあるんだ」「そんな人がいるんだ。」「どうなっているんだろう。」 |
| ⑤見通しがはっきりしていることで,願いが明確になる。 | 「やってみたい。」 |
(2)児童が問題や願いを見出すまでの思考の流れを明確にした単元指導計画や単元構想図の作成
| 次 | 児童の願い | 教師の支援 |
|---|---|---|
| 1 |
① 『春の柳津町探検隊』について思いだそう 柳津公民館(柳津図書館)やブルーベリー農園,カラフルタウンは,どんなところなのかを交流したい。 春の探検地図はとても大きいね。私の家はこの辺りかな。私の家の近くには,消防署があるよ。消防車や救急車がおいてあるよ。近くにカラフルタウンもあるよ。でも,他にはどんな場所があるかよく知らないから,調べてみたいな。ブルーベリーファームの「吉村さん」に会ったことがあるよ。とても,優しい人だったよ。道の駅では,どんな人が働いているのかな。先生の地元の紹介を聞いて,私も町の人ともっと仲良くなって柳津の「まちのすてき」をたくさん見つけたいと思う。 |
願いが生み出されるパターン ⑤ 見通しがはっきりしていることで,願いが明確になる。 |
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② 『秋の柳津町探検隊』の計画を立てよう 柳津公民館(柳津図書館)やブルーベリー農園,カラフルタウンに行って,〇〇を聞いてみたい。 どこに行こうかな。柳津公民館の館長さんが,秋の探検はいつ来るのか聞いていたから一番に行きたいな。交番や柳津駅にも行けないかな。地図で見ると,学校から縦に半分に分けた方がいいんじゃないかな。ブルーベリー農園は,方向が違うけど行きたいね。見学する時には,建物の大きさや色,形を見たいな。中で働いている人を見ることができたら,服装も見てみたいね。駅の近くの道は車がよく通るから安全に気をつけて歩かないといけないよ。柳津町のいいところをいっぱい見つけられるようにしたいな。 |
願いが生み出されるパターン ④ 新たな物や人との出会いから興味や疑問をもつ。 |
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| 2 |
③ ④ 秋の柳津町探検隊パートⅠ 公民館は,何をするところなのかな。どんな部屋があるのかな。図書室の中は,どんなふうになっているのかな。学校のセンター(図書館)とどこが違うのかな。学校の図書室には,季節の飾りやコーナーがあるよ。
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願いが生み出されるパターン ④ 新たな物や人との出会いから興味や疑問をもつ。
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⑤ 町探検パートⅠをふりかえろう 自分が見つけた「すてき。」を発表したい。他の子が見つけた「すてき。」を聞いてみたい。 自分が見つけたすてきなところを話すことができた。○○さんもどんなところがすてきだったのかくわしく話していたよ。気になったことを質問したり,感想を言ったりしてわかりやすかったので真似したいな。次の探検も楽しみだな。 |
願いが生み出されるパターン ① 実態を把握した教師による声かけから,更なる願いを生む。 |
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⑥ ⑦ ⑧ 秋の柳津町探検隊パートⅡ ブルーベリー農園の中は,どんなふうになっているのかな。作っているのはブルーベリーだけなのかな。どんな仕事をしていて,楽しいことは何だろう。カラフルタウンにはたくさんのお店があるね。映画館もあって車もたくさん展示してあるよ。 お店を案内してくれる人もいるね。公民館や図書館と違うところがあるよ。お店には,秋らしいものが置いてあるよ。
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願いが生み出されるパターン ④ 新たな物や人との出会いから興味や疑問を持つ。 ⑤ 見通しがはっきりしていることで,願いが明確になる。
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⑨ 町探検パートⅡでわかったことをつたえよう 自分が見つけた「すてき」を発表したい。他の子が見つけた「すてき。」を聞いてみたい。 どんなところがすてきだったのかくわしく話していたよ。気になったことを質問したり,感想を言ったりしてわかりやすかったので真似したいな。 |
願いが生み出されるパターン ① 実態を把握した教師の声掛けから,更なる願いを生む。 ② 比較から,疑問やあこがれを生む。 |
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| 3 |
⑩ 秋の柳津町探検隊パートⅢの計画を立てよう 自分だけの「まちのすてき」を探すための計画をたてよう。道の駅の「すてき」なひみつをみつけたいな。宮上公園のメタセコイヤの木はどうなっているかな。カラフルタウンのちかくにハワイの木があるお店があるよ。何のお店かな。知りたいことや聞きたいことがたくさんあるから知りたいことをメモしておこう。 |
願いが生み出されるパターン ③ 憧れや期待から「こうなりたい」という願いを生む。 |
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⑪ ⑫ ⑬ 秋の柳津町探検隊パートⅢ 東コース:永田染工,柳津派出所,南塚公園
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願いが生み出されるパターン ④ 新たな物や人との出会いから興味や疑問をもつ。
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⑭ 町探検をふりかえろう(本時) 自分が見つけた「すてき。」を発表したい。他の子が見つけた「すてき。」を聞いてみたい。 河村屋さんは,給食の材料を届けてくれるよ。宮上公園のメタセコイヤの木は実をつけていたよ。春は緑だったのに葉っぱが赤くなっていたよ。コナズコーヒーは,1年中夏だよ。ハワイのものがいっぱいあるよ。道の駅には,「夢の鐘」があって夢をかなえるために叩くといいそうだよ。 |
願いが生み出されるパターン ④ 新たな物や人との出会いから興味や疑問をもつ。 |
(3)場の設定と交流の仕方の工夫
本校における生活科の学習では,ベンチトークという,おしゃべりをする感覚で行うペア交流を必要に応じて取り入れている。本単元でも自分が見つけた「自分だけの町のすてきなところ」をベンチトークで気軽に交流できるようにした。また,振り返りは,文字や文章で書くだけでなく,児童の実態や単元に応じて,デジタルコンテンツを活用する等の工夫を行っている。本単元ではロイロノート・スクールを活用し自分の満足度を星の数で表すという振り返りを行った。
(4)児童が問題を見出す時の思考の流れに沿った教師の支援
どの児童にも「○○がすてきだと思ったのだね。」など(理解と共感)を示す声かけを行い,自信をもたせる。前時までにそれぞれのコースで見つけたすてきな人やすてきなものをロイロノート・スクールにまとめてあるので「どんな『まちのすてき』があるのかな」と問うことで,自分が見つけた『まちのすてき』をみんなに話したいという願いをもち,めあてを作っていく。(価値付け,方向付けの声かけ)
本時は,自分が見つけた「まちのすてき」を他の友達に伝える。交流するときに,教師が「〇〇さんの話を聞いてどう思った。」「〇〇さんの見つけた『まちのすてき』を先生にも紹介して。」などと声をかけることで,自分が知らない「まちのすてき」を発見できるようにする。「なにがすごいと思った。」「どこがすてきだと思った。」と問い返すことで,気付きの質を高められるようにする。(指導・支援に関わる声かけ)
(5)終末における児童の振り返りを活用して新たな問いや願いを見出すための視点の明確化
本時は,単元の出口であるが次単元の入り口でもある。本単元で柳津の『まちのすてき』をたくさん見つけたり,知ったりした児童は,この『まちのすてき』を,もっとたくさんの人に伝えたくなっているはずである。「すてき発見マップ」にどんどんすてきなものやすてきな人のことがたくさん記されていくようになる。「色々な所に行けて,柳津町が大好きになった。」,「すてきな人がたくさんいる柳津町だ。」というような柳津町に愛着が持てた自己の成長や「もっと違うところにも探検に行って,柳津町のことを知りたい。」などの更なる興味をもてた自己の成長にも気付かせていきたい。そうして次単元の「つたわる広がるわたしの生活」の活動へ接続させていきたい。
(1)本時のねらい
自分が見つけた「まちのすてき」を話したり,仲間の「すてき」を聞いたりする中で,柳津町への愛着を深めたり,柳津町にはくらしを支えてくれる人がたくさんいることに気付いたりすることができる。
(2)本時の展開
| 学 習 活 動 | 指導・援助 |
|---|---|
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1.めあてをつくる。 T:前回は,それぞれのコースに行って,町探検をしましたね。 C:みんなが知らない「すてき」を見つけたよ。早く話したいな。 C:みんなが見つけた「すてき」をいっぱい知りたいな。
【めあて】
やないづの「まちのすてき」をたくさん話そう。たくさんきこう。 2.自分の願いを明らかにする。 T:今日の自分の願いをペアに伝えましょう。 C:わたしは,道の駅ので見つけた「すてき」をたくさん話したいです。 C:ぼくは,ハワイアンカフェの「ひみつ」を教えたいです。 3.ベンチトークで交流をする。 C1:道の駅の「すてき」を紹介します。働いている人は,とても優しい人でした。質問にもたくさん答えてもらえました。屋上に「平和の鐘」があって,叩くといい音がしました。 C2:どんな質問をしたの? C1:「道の駅ではどんなものを売っているのですか」と聞いてみたよ。そうしたら,季節の野菜を売っていることがわかったよ。今は,大根やホウレン草を売っていたよ。 C3:永田染工さんの「すてき」を紹介します。糸をいろいろな色に染めていて虹みたいにとてもきれいでした。機械が大きくてすごかったよ。 C4:糸は何に使うの? C3:服や布を作る工場に届けると言っていたよ。
4.自分の「まちのすてき度」を確認する。 T:色々な人と交流することができましたね。みなさんの「まちのすてき度」は,変わりましたか。気持ちが変わった人は,動かしにきてください。 T:どうして〇〇さんは,「すごくすてき」に変わったの。 C1:〇〇さんの発表を聞いて,みんなにおいしい給食を食べてもらうために毎日材料を届けてくれる「河村屋さん」の気持ちがよく分かったからです。 C2:救急車は見たことがあったけど,中までは見たことがなかったから,今日それが知れて嬉しかったからです。 T:柳津町には,みなさんが安心して楽しく暮らせるようにしてくれる「すてき」な人がいたり,「すてき」な場所があったりするのですね。 5.振り返りをする。 C:今日の満足度は,星5つです。どうしてかというと,自分が「すてき」だと思ったことを友達に教えることができたからです。 C:今日の満足度は,星5つです。知らなかった「すてき」を見付けたからです。 C:今日の満足度は,星4つです。柳津町の「すてき」なことをたくさん知ったけど,自分で確かめたいからです。 |
願いが生み出されるパターン ①実態を把握した教師の声かけから生む。
④新たな物や人との出会いから,興味や疑問をもつ。
評価規準
柳津町への愛着を深めたり,柳津町にはくらしを支えてくれる人がたくさんいることに気付いたりすることができる。【思考力・判断力・表現力等の基礎】(発言,振り返り)
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(1)新たな問いや願いの見出しをパターン化
(2)児童が問題や願いを見出すまでの思考の流れを明確にした単元指導計画や単元構想図の作成
(3)場の設定と交流の仕方の工夫
(4)児童が問題を見出す時の思考の流れに沿った教師の支援
(5)終末における児童の振り返りを活用して新たな問いや願いを見出すための視点の明確化