小学校 教科書・教材|知が啓く。教科書の啓林館
生活

自ら学びを創造する子どもの育成
~地域の「ひと・もの・こと」との豊かなかかわりを通して~
「やってみたい」が連続する生活科実践を目指して

(元)宇多津町立宇多津小学校 齋田 恵子

1.はじめに

主題にある「自ら学びを創造する子ども」とは,各教科を通して身に付けた資質・能力を自らの問題解決に向けて活用・発揮する子どものことである。各教科で身に付けた資質・能力を決められた文脈でのみ活用・発揮するのではなく,未知の課題と出会ったときに,これまでの学びを生かして新たな解決方法を模索したり,自ら進んで考えてみようとしたりしようとする子どもの育成を目指してきた。また,地域の「ひと・もの・こと」と豊かにかかわりながら,たくさんの気付きを得て,出会った課題に「自分事」として取り組む姿勢をもたせる学習を行うために本実践を行った。

2.単元について

(1)単元名

もっと知りたいたんけんたい~ここがわたしの大すきな町うたづ~

(2)単元目標

(3)本単元における評価基準

啓林館教科書の評価基準に準ずる。

(4)小学校学習指導要領との関連

【第3章生活科の内容 第2節生活科の内容】

(3)地域に関わる活動を通して,地域の場所やそこで生活したり働いたりしている人々について考えることができ, 自分たちの生活が様々な人や場所と関わっていることが分かり, それらに親しみや愛着をもち, 適切に接したり安全に生活したりしようとする。

本単元は,「小学校学習指導要領(平成29年)解説生活編」に定められる内容をもとに設定した。

3.研究主題と単元の目標に迫るための手立て

①気付きの質を高める思考ツールの活用

友達と対話しながら気付きの質が高められるように2つの思考ツールを用いて学習を展開する。まず,探検して出会った人(肉屋,魚屋,餅屋)について調べた事(気付き)を店の人の「きらきら」として「クラゲチャート」に模した「きらきらチャート」にまとめる。この活動を通して,児童は,自分の気付きを自覚したり,気付きを整理・分類したりすることができる。さらに「きらきらチャート」に書き出された気付きを基にして自分の「いちおしのきらきら」を考える。全体交流を行う際には,店ごとのグループで調べたお店の人の「きらきら」をベン図を使って整理・分類する活動を通して,店の仕事内容や工夫は違っていても,働いている人には「おいしい物を届けたい」「喜んでもらいたい」「安心・安全」など共通する思いがあることに気付くことができるようにする。

②本時の山場を創るグループでの話合い活動

児童一人一人が見付けた「いちおしのきらきら」を持ち寄ってグループになり,それぞれの店の良さをまとめる活動を行う。この活動を行うことで,児童は,自分の見付けた「きらきら」と友達の見付けた「きらきら」が似ていたり,全く異なっていたりすることに気付く。同じ店を探検しても,自分と違った「気付き」に面白さを感じることであろう。グループでまとめた店の良さをさらに全体交流で深めていくことで,そこで働く人の思いや願い,工夫につなげたい。

4.授業実践(全14時間)

主な学習活動・児童の姿 ◇手立て □支援 評価(評価方法)

1次 町にはどんな人がいるのかな?(1時間)

  • 校外学習で行った空港には,いろんな仕事をしている人がいたよ。
  • ぼくたちの町にも,たくさん仕事をしている人がいるよ。
  • 畑や田んぼでお野菜やお米を作っている人
  • 工場ではたらく人
  • 児童館や役場ではたらく人
  • お店の人
  • 町には,昔からの商店街があるよ。行って調べてみたいな。

町の商店街を探検して,きらきらを見付けたい!

(図1)

  • ◇ 1学期に町を探検した時の写真や校区の地図を提示し,「もっと,探検してみたい!」という思いや願いをもてるようにする。
  • ◇ ウェビングマップを使い,「町について知っていること」を広げる活動を通して,自分が町にどのようなイメージをもっているのかを確認したり,気付きを深めたりできるようにする。
  • ◇ ウェビングマップをグループで交流することで,自分の町に対する思いと友達のもっている思いをつないだり,比べたりできるようにする。
  • ◇ 商店街の写真を提示し,夢をもって探検できるようにする。
    知・技(発言,ワークシート)
    主体(発言)
  • ◇ 商店街の地図やお店の種類を提示して,見通しを持ちやすくする。
  • ◇ 調べたい事や聞きたい事を考える際には,クラゲチャートを用い,素朴な疑問を書き出し,その中で,自分で整理・分析し,「特に調べたい3つのひみつ」にまとめる。このことにより,自分が調べたい事を必ずもって探検することができるようにする。
  • □ 調べたい事が見付けにくい児童には店の写真を示し,何に興味があるのかを聞く。また,友達と調べたい事を交流することで考えが生まれやすいように学習活動を設定した。
    知・技(発言,ワークシート)
    思・判・表(発言,ワークシート)
  • ◇ 前時に考えた調べたい事をもって探検に出かけるようにする。
  • □ タブレット端末で写真や動画に記録することで,見付けた事を絵や文で表しにくいと感じる児童にも発見したひみつを表演できるようにした。
  • ◇ 食品店と生活用品店では,店の様子や工夫が異なるため,2つの探検場所を意図的に設定する。
    知・技(発言,ワークシート)
    思・判・表(発言,ワークシート)
    主体(発言,対話)
  • □ 見付けた店の秘密は,どんどんカードに書いて良い事を伝え,楽しんでひみつ見付けが行えるように助言した。
  • ◇ 見付けたひみつを児童と「きらきら」とネーミングすることで意欲につなげる。
  • ◇ 児童はたくさんひみつを見付けていたので,自分で整理・分析が行えるように「きらきらチャートを用いて,友達に紹介したい「とびきりのきらきら」を2つにしぼるように伝える。(このことにより,自分の考えを比較,分類する思考ができる。)
    知・技(発言,ワークシート)
    思・判・表(発言,ワークシート)
  • ◇ 店ごとに4人編成のグループを作る。
  • □ 「似ている」「違う」どちらも大切な視点であることを伝え,「似ている」=「外せないきらきら」「違う」=「だれもが気付かないような特ダネ」とし,色々なきらきらを伝えられるようにした。
    思・判・表(発言,ワークシート)
    主体(発言,対話)

2次 町たんけんの計画を立てよう(2時間)

  • 商店街には,どんなお店があるのかな。
  • どんな人が働いているんだろう。
  • インタビューして色んな事を聞いてみたいな。
  • タブレット端末を使って写真や動画に残すといい。
  • コースを決めたり,取材する内容を考えたりしよう。
  • どんな事を特に知りたいのか,自分の考えをまとめてみよう。

3次 町の人にインタビューしよう(4時間)

  • さあ,いよいよ町探検に出発だ。

※探検は2回行う。(食料品店と生活用品店,それぞれに1回ずつ探検した。)

① 衣料品店 ② 電気店 ③ 花苗店
④ 肉屋 ⑤ 魚屋 ⑥ 餅屋

古くから(40年以上も前からある)地元の商店に着目して行った。

(図2)

4次 町の人となかよくなろう(4時間)

① 生活用品店編

  • 見付けたひみつは,どれも「町の人のすてき」=「きらきら」だったよ。
  • みんなが見付けた「きらきら」を集めてみたいな。
  • まず,自分で見付けたきらきらには,どんな物があるのか整理しよう。きらきらチャートを使って,「とびきりのきらきら」を探そう。

② ①で見付けたきらきらのグループ交流

  • いよいよ,自分で見付けたきらきらを伝える時がきたよ。
  • 友達の見付けたきらきらも知りたいな。
  • 自分と似ているきらきらを見付けた友達もいたよ。
  • 自分とは違ったきらきらを見付けている友達もいておもしろいな。

③④食料品店編

①②と同様の学習活動

(図3)

(本時案を参照)

板書(生活用品店編)

☆「看板を作りたい」は児童からの提案であるため,単元計画では,「お手紙」となっているところを変更して学習を展開した。

  • ◇ 視点(歴史,情報,工夫,思いや願い)の視点を与えることで,伝える内容を思考させやすくした。
    思・判・表(発言,ワークシート)
    主体(発言,行動観察)

5次 町のすてきを話そう(4時間)

①生活用品店編 ②食料品店編(本時)

  • 見付けたお店の「きらきら」を他のお店を探検した友達にも伝えたいな。
  • お店によって工夫している所やお店の人の思いは違うのかな。
  • 他のお店のことも知りたいな。
  • 宇多津のお店には,とてもすてきな「きらきら」があることが分かったよ。みんなに伝えたい。
  • とびきりのきらきらを集めて「お店の看板」を作ってみたらどうかな。

② ④看板の制作

  • このきらきらを入れるとお店のよさが伝わるよ。
  • お店の人の思いや願いも入れよう。
  • お店の歴史,情報,工夫,お店の人の思いや願いを入れよう。
  • 視点ごとにきらきらが入っているか確認しよう。
  • できた看板は学習発表会でお店の人を招待して渡そう。そして,お店に飾ってもらって,町の人にも伝えよう。

(図4)

学習発表会で看板を渡す児童

学習発表会でお店のきらきらを発表する児童

学習指導過程

目標 町探検で出会った「人」に着目し,発見したことを関連付けて,町の人の願い,工夫について考え,話合い活動を通して自分の生活との関わりに気付くことができる。

学習活動 意識の流れ(は学習の山場) 教師の働きかけ

1 前時までの振り返り,本時の学習課題をもつ。

○前時と本時の意識がつながるようにこれまでの活動の様子をスライドショーで紹介する。

今まで調べてきたお店で出会った人の「きらきら」をみんなで集めてみよう。友達の調べたお店の「きらきら」も聞いてみよう。

○3つのお店のきらきら」を表にまとめて板書し,それぞれの店の特長を捉えやすくする。

○全体交流で,3つのお店に共通する事柄をみつけられるように発問する。

○出てきた「きらきら」を分かりやすくキーワード化して板書する

お店の種類や仕事の内容はそれぞれ違うけれど,似ている「きらきら」はありますか。

○3つの店の共通する「きらきら」とそうでないものを整理して示すためにベン図を用いる。

○共通する「きらきら」が見付けにくい児童には,小ボードでカード操作をすることで分かりやすく示す。

町探検をして調べたことをまとめ,町で働く人の工夫や願いを知り,自分の生活との関わりに気付いたか。

○自分の生活場面を想起したくさんの素敵な人とつながっていることを伝え,これからの学習につなぐ。

2 見付けた「きらきら」をグループごとに発表する。

3 グループごとに出た気付きをベン図にまとめる。

4 ベン図を基に共通したことをまとめる。

5 本時を振り返り,次時への見通しをもつ。

5.成果と課題

【参考文献】

小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 生活編