小学校 教科書・教材|知が啓く。教科書の啓林館
理科

子どもの「したい!」を大切にした,時間的・空間的な見方を養う一工夫
~第6学年「大地のつくりと変化」の授業実践を通して~

西宮市立今津小学校 新井 友博

1.はじめに

「理科は楽しい!」「理科って面白い!!」子ども達にそう感じてもらえるように,日々の授業作りをしてきた。そんな中,
2020年より全面実施された学習指導要領では,理科で目指す姿が「科学的な見方や考え方の育成」から,「見方・考え方を働かせた資質・能力の育成」に大きく変わった。そこで私は,子どもが「見方・考え方」を働かせることができてくれば,自然と「理科は楽しい!」「理科って面白い!!」と感じてくれるのではないかと考えた。

子ども達が,事物現象と出会う瞬間,実験観察の結果がわかる瞬間など,授業のさまざまな場面で見方・考え方を働かせることができるチャンスがある。教科書の内容を基本とした流れの中で,私が実践してきた小さな工夫や考え方を紹介できれば幸いだ。

2.単元について

(1)単元名 第6学年 「大地のつくりと変化」

(2)単元の目標

地層などを観察し,地層のつくりやでき方について多面的に調べる活動を通じて,大地は長い年月と大きな空間的な広がりの中でつくられ,変化してきたという考えをもつことができるようにする。また,火山活動や地震による大地の変化と災害とを関係づけて調べ,災害への備えについて考えるとともに,自然の力の大きさを感じ取ることができるようにする。

(3)指導計画

単元導入 大地のつくりと変化
地面の下の大地のつくりや変化について,考えてみよう。
第1次 大地のつくり
地層はどんなものからできているのだろうか。
観察1地層のようす
第2次 地層のでき方
水のはたらきによる地層は,どのようにして,できているのだろうか。
実験1水のはたらきによる地層のでき方
火山灰には,どんな特徴があるのだろうか。
観察2火山灰のつぶのようす
第3次 火山や地震と大地の変化
火山活動や地震によって,大地にどんな変化が起こるのだろうか。
資料調べ1火山活動や地震による大地の変化
第4次 火山や地震とわたしたちのくらし
火山活動や地震は,わたしたちのくらしとどんな関係があるのだろうか。
まとめ〜
つなげよう
まとめノート/たしかめよう/活用しよう/つなげよう

3.時間的・空間的な見方・考え方を養うための工夫

(1)単元の導入〜子どもの意見と理科的な見方のつながり〜

まずは,教科書の扉絵から「気がついたこと,疑問に思ったこと」を出し合ったところ,以下のような意見が出た。

  • がけになっている。
  • 崩れているところがある。
  • ひび割れのようなところがある。
  • 高低差がすごくある。
  • どうしてこんな地形になったのだろう。
  • しま模様になっている。層になっている。
  • 模様が,黒→白の繰り返しのようになっている。
  • ケーキの断面みたい。
  • しましまが,ずっと続いている。
    (手前から奥の方まで)
  • 長い年月がかかってできていそう。

「わくわく理科6 P.122(啓林館)」

そこから,「陸が切り離されたのではないか。」「海から運ばれてきたのではないか。」「土が重なってできたのではないか。」と,しま模様のでき方に話題が進んだため,次に「どうしてこのようなしま模様ができたのだろうか。」と問いかけた。

  • 何かが積み重なってできた。
    →土,石,岩,砂,どろ,火山灰
  • 最初は一番下ができて,あとは人が作った。
  • もともとは大きな何かで,それが削られてできた。

最後に,これから明らかにしていきたいことをまとめた。

  • しま模様はどうやってできたのか。
  • しま模様の中身は何なのか。
  • どれくらいの年月がかかるのか。
  • 富士山や自分たちの学校の下はどうなっているのか。
  • 地震や火山とどんな関係があるのか。

☆時間的・空間的な見方を養うために☆

この導入の時間の中で,【時間的】長い年月をかけて作られたのではないか。【空間的】しま模様の中身は何なのか。という意識を持ちながら子どもの意見の整理を行いました。また,5年生の「流れる水のはたらき」での学習も復習し,堆積作用との関係も子ども達に考えさせることで【空間的】な見方をするための足場掛けとした。

(2)地層のようす〜可能な方法は全て行う〜

「しま模様」を「地層」ということをおさえた上で,地層は何でできているのかを確かめる方法を子ども達と考えた。最初に出てきたのが,実際に掘るという方法だった。もう少し詳しく聞くと,①手(スコップ)で掘る方法と,②機械(ドリル)のようなもので掘る方法が出てきた。そして,③インターネットで調べる。④がけになっているところを観察する。という方法が出てきた。私自身は,子ども達の「やってみたい!」という気持ちを大切にしたいので,可能な限りできることは行いたいと考えている。

①自分の手で掘る

まずは,自分の手で掘る方法。管理職に確認の上,安全面の配慮ができる運動場の端や花壇の周りなどを掘ってみた。運動場では,5分もすると,砂利が出てきて,砂の色も変わってきた。子ども達は,地面の様子が変わったことに驚きと喜びの声をあげていた。これは,おそらく水捌けをよくするための工夫だと思われるが,ここでは地面の中の様子が変わっているという確認に留めておいた。花壇の周りの地面では,10cmほど掘ると,粘土層のような黄土色の層が見える部分があった。そこでも子ども達は,様子が変わっていること,すぐ隣の穴でも同じような変化が見られることに驚きと喜びを見せていた。どちらの地面の様子も写真に撮り,Microsoft Teamsで子ども達に共有し,全員で様子を確認した。

②機械を使って掘る

「自分の手では限界があるな。」「もっと深いところまで様子を知りたい!」と子ども達は興味津々の様子であった。そこで,「ボーリング調査」というものがあることを伝え,「それを理科室でやってみよう!」と寒天で作ったゼリーとストローを各班に用意した。容器の周りには目隠しがしてあり,1人1回,ストローを刺してゼリーをくり抜いたものだけで,中の様子を調べる活動を行なった。それぞれの班で,1人目がストローでボーリングを行うと,することが分かってきたのか「ちょっと待って!どこにストロー刺すか相談しよう!」「どの辺に刺してみたい?」と自分達で主体的に考えている様子が見られた。全員がストローでボーリングができたところから,自然とそのストローを横並びで並べてみたり,容器の周りに立ててみたりしながら中の層の重なり(色の変わり方)を考えていた。今回は全ての班で,同じ層の順番にしていたので,すぐに中の様子は明らかになったが,ボーリング調査というもののイメージがかなりできるようになったと感じている。

その後,「これがこの小学校の本当のボーリング調査の資料だよ。」と本物を紹介すると,一目散に資料の周りに集まり,手に取って中の様子を見たり重さを感じてみたり,資料を縦に重ねてみたりと,自分達の小学校の地面の中の様子を知るために,ボーリング資料を有効活用できている様子であった。資料を見ながら,「下の方のやつは,岩みたいで容器に入っていないなあ。」「5mのところの中身と10mのところの中身が似ている!」「12mのところの容器には貝殻みたいなのが入っている!」という声が出てくると,他の班が見ている資料(本校には4箇所のボーリング資料が残っていたため)の,同じ深さの容器と比べて見始める姿もあった。

さらに,「土質ボーリング柱状図」も一緒に提示すると,土質の名称やN値,モンケン自沈という言葉にまで関心が広がり,自主学習でその言葉の意味を調べてくる子どもの姿も見られた。

上記の活動を通して,地層はれき・砂・どろが積み重なっていること。貝殻片は化石であり,遠い昔は海であったこと。海ということは,水が関係しているということを確認し,次時へ繋げた。

☆時間的・空間的な見方を養うために☆

事前に寒天ゼリーでボーリング調査の擬似体験をしているからこそ,地面の横のつながりを意識できるようになっていたのではないかと考えている。

③インターネットで調べる

最後に,インターネットを使用して,地層の様子を調べる時間を設けた。まずは,学校の近くに地層が見えるような場所が無いかも調べてみたが,近くには無いことが分かり,実際に見にいくことは断念せざるを得なかった。しかし子ども達は,日本のみならず,世界中に見られる地層の様子を調べ,感動している様子であった。

(3)地層のでき方

前時の学習で,地層の中には,れき・砂・どろがあることを確認し,その違いは大きさであることをおさえた。そして,水の働きで地層が作れるかを実験するために,どのような砂を用意すればいいのかを問いかけると「大きさが違う砂が必要」とすぐに答えが返ってきた。そこで,自分達の手で地面を掘ったことを思い出し,大きさの違う砂を最高でも3ヶ所から集めてくる活動を設定した。子ども達は,地面の上の砂の様子をしっかりと観察したり,これまでの経験からよく水溜りになっている場所や水道の近くの湿った場所,花壇の黒っぽい砂を探したりするなど,工夫をしながら採取する様子が見られた。

そして,自分達で用意した砂を使って実験をし,どの班も水のはたらきによって砂が層状になることを確かめることができた。子ども達はすぐに,「2回目や3回目もやりたい!」と実験をやりたくてしょうがない様子であった。そこで,地層は何層にも重なっていたことを想起させ,2回目,3回目の実験をすることで,より地層のでき方と近い実験ができることを確認し,続きの実験を行うこととした。

あまり層の様子がはっきりと見えなかった班もあったが,自分達で「どろが少なかったのかもしれない。」「もう少し砂の大きさを変えればよかったかもしれない。」と,地層がどのようなものでできているのかを理解し,自分の知識として活用している姿も見られた。

また,雑草や少し大きな石をわざと入れている班もあり,理由を尋ねると「これは地層の中にある化石の代わりです。」と,長い年月をかけてできた地層を時間的な考え方で見ることもできていた。

最後に,採取した砂をペットボトルに水と一緒に入れて,軽く振ったものを静かに置いて様子を観察した。これは,地層のでき方というよりは,粒の大きさが大きいものから沈むこと(級化層理)を確認するために行なった。そして,再度自分達の実験した水槽を確認すると,やはり粒の大きいものから順に層になっていることや,2回目,3回目と繰り返していても,層のできる順番が同じになっていることに気がつくことができた。

☆時間的・空間的な見方を養うために☆

教師が用意した砂で実験を行うこともしばしばあると思うが,実験に使う砂を子ども達自身で用意する活動を行うことで,身近な砂でもできることを理解し,そこから長い年月をかけて地層が作られていることを少しでも実感できたのではないだろうか。また,いつも目にしていた砂を「れき・砂・どろ」という粒の大きさに着目する視点を養うことができたりしたと感じている。

(4)岩石

前回使った砂の入ったペットボトルをそっと逆さまにすると,水だけが落ちて砂の層になった部分はそのまま残っている様子を見ることができる。そこから,時間が経つと固まっていくことを確認し,それが岩石になることを伝えた。すると,「ボーリング調査の下の方にあったやつは,岩になっていたのはそういうことか!」と,想定外の発言が出てきたが,これまで自分の目で見たもの,触って感じたものなどが繋がっていく様子であった。

そこから,実際の礫岩・砂岩・泥岩を用意し,それぞれの岩石がれき・砂・どろの何からできているのかを考える,岩石クイズを行なった。子ども達は,見た目・触り心地などを調べて泥眼と礫岩をすぐに当てることができた。

また,そのクイズで扱った岩石の中に,化石が見られるものも混ぜておいた。授業の途中で「これ化石やん!」とどこかの班が見つけた瞬間に,自分達の班の岩石をもう一度食い入るように調べる姿があった。そして,化石がこのように岩石の中に隠れている,つまり地層の中に化石があることを実感できる場となった。その後,化石が見られる岩石を用意し自由に観察をする時間を設けた。あたかも自分達で発見したかのような盛り上がりを見せ岩石を見る目の色が変わっていた。

4.ICT機器の活用

(1)火山灰の観察

地層の中に火山灰があることを伝え,火山灰の特徴を調べる時間を設けた。ここでは,これまで使ってきた双眼実体顕微鏡の他に,「ミエル1mm」というものを使って観察を行なった。「ミエル1mm」は,子ども達のタブレットの内側のカメラに取り付け,そこにプレパラートに乗せた火山灰をおくことで,大画面で観察ができるだけでなく,そのまま写真として記録することもできるものである。

それぞれが観察し,撮れた写真をMicrosoft Teamsでクラス全員が共有を行なった。そこで確認できたものが,透明なガラスのようなものがあることと,それぞれの粒が角ばっていることである。どの写真にも似たようなものが見られることから,子ども達は,再度自分が撮った写真を見返し,改めて透明なガラスのようなものを見つける姿もあり,最初に観察した時よりも,火山灰の見え方が変わったと実感できた様子であった。

(2)西之島の拡大

啓林館の教科書「わくわく理科6」には,火山活動によって変化してきた大地として,東京都の西之島を紹介している。ここでは,教科書の画像を編集し,以下のような画像を作成した。

スライド1

スライド2

スライド3

スライド4

スライド5

スライド6

そして,この画像をパワーポイントで順に見られるようにすることで,子ども達はより大地が広がってきた様子をイメージできたようであった。その後,教科書のQRコードから見ることのできる西之島の映像を見て,実際に火山活動で変化する大地の様子を確認した。

☆時間的・空間的な見方を養うために☆

パワーポイントで視覚的に広がってきた様子を見せた後に映像を確認することで,時間をかけてどのような大地の変化が起きてきたのかに注目できるようになったと感じている。

5.おわりに

今回紹介した「大地の変化」の単元内で扱っている内容は,時間的にも空間的にもスケールが大きく,子ども達になかなか身近なものとして捉えることが難しいものであると感じている。そんな中で,少しでも楽しく,そして身近なものとのつながりを感じてもらえるような授業展開を試行錯誤してきた。こちらが轢いたレール上で学習することも必要な時があると思うが,できる限り子ども達の感じた疑問や考えた実験方法で学習を行えるように工夫をすることで,見方・考え方を働かせた資質・能力の育成につながるのではないかと考えている。稚拙な実践内容ではありましたが,ここまでお読みいただき光栄です。