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理科

持続可能な社会を目指して議論する力を育むために
~第6学年「土地のつくりと変化」の実践から~

6年 札幌市立伏見小学校 冨田 雄介 

1.はじめに

日本は,4枚のプレート上にあることで,地震や火山の多い国である。最近でも,阿蘇山や桜島が噴火するなど,各地で火山活動,大地の変動が起きている。そのため,特に重要であったり,危険だったりする建造物を建てるためには,地下の調査が欠かせない。
また,発電所の再稼働,発電所や廃棄物処理施設の立地,廃棄物処理方法などが大きな話題となっているが,これらも地下の構造の問題と密接に関係している。これらは,今後の豊かで安全な日本を考える上で避けられないことであり,誰もが自分に関わることとして真剣に議論しなくてはならない。つまり,大地の変動を正しく理解し,判断する力が重要なのである。小学校では,その基礎として,地層や地形の成り立ちに対する理解と判断力を養いたい。

以上のことから,本実践では,第6学年「土地のつくりと変化」において,子どもが,科学的な知識に支えられた大地のつくりのイメージをもつこと,空間的・時間的な広がりを捉えること,思考力,判断力を養うことをねらった。そのために,実物の資料と実験を基に思考し,意図的に働きかける学びを生みだす学習展開を目指した。

2.単元の指導計画について

単元を構成する上で着目したことは,土を構成する粒子の「粒の大きさ」である。これは,地層ができたり,化石ができたりする要因であり,土地のつくりを想定する際の目印にもなる。だから,子どもが,自ら粒の大きさに着目することで,これを基に問題を解決していくことが重要であると考えた。本実践では,特に第1次,第2次の堆積岩に関わる学習での研究を行った。以下では,第1次,第2次における指導計画と実際の子どもの表れについて紹介する。

(1) 単元構成に位置付けた活動

第1次 【土地のつくり】
① 剥離標本の観察
② 積実験器による地層作り

第2次 【土地の広がりや深さと時間】
③ ボーリングモデルの実験
④ ボーリング資料観察
⑤ 岩石標本観察
⑥ 化石標本から化石を取り出す活動
⑦ 貝殻と塩酸の反応実験
⑧ 様々な化石の観察と岩石の同定
⑨ 粒の大きさによる水の浸透や粘度の違いを調べる実験

第3次 【土地に起こる大きな変化】
⑩ 火山・地震と土地の変化についての調べ活動

3.授業の実際と子どもの姿

(1)第1次 土地のつくり(実物の観察)

① 粒に着目する
右の写真1は,他校より借用した地層の剥離標本である。この標本は,実際の地層を特殊な接着剤で布に写し取ったものである。実際に触ると粒の大きさや質感の違いが体感できる。
子どもは,この剥離標本を観察し,実際に手触りや質感を感じた。そして,層は,ある程度そろった粒のあつまりであることに気付いた。また,大きな礫を見つけ,「河原の石に似ている。」と層ができあがった過程に着目し始めた。

写1 地層の剥離標本

② 層を作る(実験)
子どもは地層の剥離標本や第5学年「流れる水のはたらき」での学習経験を基に,水の働きに着目し,堆積実験器(写2)を用いて,層を作った。
「どんな順序で流しても層になる。」「粒の大きさによって積もり方が違うから層になる。」などと,自然の力で地層ができることを推し量っていた。また,自分たちの足の下になる地面も層になっているのかどうか疑問が出され,広がりへと目を向けていった。

写2 堆積実験器

(1)第2次 土地の広がりや深さと時間

① ボーリングモデルの実験(実験)
子どもが,自分たちの足の下の地下を見てみたいという思いを高めたので,ボーリング資料を提示した。ボーリング資料は,筒状の小瓶に入っており,どのように地下の様子を表しているのかを捉えにくい。そこで,実際のボーリング資料を提示する際に,ボーリングモデルの実験(写3・4)を行った。これは,歯科印象材に絵の具で色を付けたものを層状に積み重ねて固めたものである。そこに,ストローをさして,中の様子を探る活動を行った。子どもは,ボーリング資料の仕組みを捉えることができた。

写3・4 ボーリングモデルの実験

② ボーリング資料の観察(実物の観察)
近隣小学校から借用し,自校の分と合わせて,3校分のボーリング資料を用意した。
ボーリング資料観察の際には,実際に筒から出して観察を行った。子どもは粒に着目し,「これは,粒が粗い砂だね。」「これは粒が細かいから泥かな。」と言ったように標本を分析した。さらにボーリング資料のラベルを基に深さを調べ柱状図に位置付けていった。いくつかの柱状ができあがって来ると,子どもは,そのつながりに気付き始めた。「こことここ似てる。」「ずっとつながっているのかな。」といったように,空間的な広がりに目を向けることができた。

写5・6 子どもの作った柱状図

③ 深いところの岩石(実物の観察)
ボーリング資料は約20メートルの深さまであった。子どもは,さらに地下深くの岩石について考え始めた。そこで,地下深くにあった岩石として,岩石標本(写7)を提示した。これらの岩石はずっしりと重く,硬い。そして,ラベルには○○万年前等の記述がある。これらは,子どもが扱ったボーリング資料や体積実験器でつくった層と大きく様子が違う。このことから,子どもは,「上にある土地の重みで圧縮されたのだろうか。」「長い年月をかけて圧縮されて,水がなくなって固まった。」などと地下の深さや長い年月がもたらす岩石の変化に気付いた。

写7 岩石標本の観察

④ 化石を取り出し,観察する(実物の観察)
左の岩石標本(写8)を山から採取し,子どもが実際に化石を取り出す活動を設定してた。
「なかなか取り出せない。」「がっちりと固まっている。」「貝の周りに隙間なく詰まっている。」このような気付きが見られた。
そこで,化石になる確率が極めて低いこと,化石は水の流入で保存されないことを伝え,貝殻と塩酸の反応実験(写9)によって,子どもは,動植物の遺骸は簡単に化石として保存されないことを捉えた。
さらに,もっと他の化石も見てみたいという要望に対して,化石標本(写10)を提示した。子どもは,葉の葉脈や貝の模様が化石になっていることに驚いていた。

写8 化石を取り出した岩石標本

写9 貝殻と塩酸の反応実験

写10 他の化石標本

⑤ 粒の大きさによる水の浸透や粘度の違い(実験)
子どもは様々な化石標本の観察を通して,化石の含まれている岩石は粒が細かいことに気付いた。
「粒が細かいから,守られ易いではないか。」「水を通しにくいのではないか。」などと,その理由を考え始めた。そこで,(写真11)のような実験器具を提示した。この実験器具はペットボトルを切ったもので,逆さになったふたに穴が開いており,上から水を入れると下へ流れ出すようになっている。子どもは,この実験器具を用いて,粒の大きさによる水の浸透の違いについて調べた。さらに,水に濡れた泥や砂を貝殻に押しつけて,しっかりと密閉されるように貝殻の表面を覆うのかどうかについても調べた。こうして,粒の大きさによる保存性の違いを捉えることができた。

写真11 粒の大きさによる水の浸透実験

4.成果と課題

本実践では,子どもから時間的・空間的な広がりへと迫る発言が見られた。以下の手立てについて,子どもが時間的・空間的な広がりを捉える際に有効であると考える。

子どもは常に粒の大きさに着目し,粒の大きさを基にして問題を解決していった。子どもが粒の大きさに自ら着目していく単元構成を構築することは,本単元の学びを深めるために重要であると考える。

さらに今回の単元構成では,子どもが実験での学びを活かして,実物の観察を行ったり,姿や実物の観察で発見したことを実験で検証したりする姿が見られた。実物と実験を結び付けて考える力の育ちにもつながった。

一方で,堆積実験,歯科印象材によるボーリングモデルの実験や粒の大きさと水の浸透性に関する実験については,実験方法を教師が提示しなければならない。その際に,子どもの要請に合っていなかったり,唐突な提示になってしまったりしていないかについては,再検証する必要がある。