小学校 教科書・教材|知が啓く。教科書の啓林館
理科

理科環境を整備し,児童自らが創り上げる授業をめざして(前編)

3年 兵庫県朝来市立竹田小学校 國眼 厚志

1.はじめに

竹田小学校が理科について特に力を入れて研究しようとしたのは昨年度の4月からのことであった。兵庫県北部地区の研究会を控えているからと言うのが正直な理由だが,これを機に学校全体で理科を研究し,深く学んでいこうという空気が職員にはあった。そこで次のテーマをもとに研究を進めることにした。

主体的,協働的な学修により,児童自らが創り上げる授業の研究
-ICTと発表ボードを用いた,視覚化と共有化ができる理科授業-

自分たちで課題を考え,自分たちで実験を組み,結果を出し,考察をする。従来の検証型実験では無く,材料も自分たちで揃え,条件も設定するまさに主体的な関わりである。その際にICTもしくは発表ボードを用いて他班との比較・共有ができるようにしていく。そういった自分たちで創っていくという空気を盛り上げるためにも,校内の理科環境を整備し,常に「不思議だ」「調べたい」そう思える雰囲気作りを提案した。研究仮説として

学習環境を整備し,児童自らが主体的に課題を見つけ,取り組める授業を
展開すれば,科学的な見方,考え方ができる子が育ち,深い学びにつながる

を掲げ,全職員で取り組んだ。

2.内的環境の充実

職員室前の廊下は児童が一番よく通るところであるのと,管理が比較的しやすいので,ここを「サイエンスストリート」と名付け,季節や授業内容に応じた展示物を置くこととした。内容は以下の通りである。

(1)野草の実物

春に校庭に咲く野草を採集し,名前や謂われを紹介する。生活科や3年生の授業で役立つ。裏庭の写真を拡大印刷し,見つけたらシールを貼るように誘う。中庭に植えた園芸種も時には入れる。

裏庭のパノラマ写真と野草の実物

(2)カブトムシの幼虫・サナギ

校区内業者から入手した約50頭のカブトムシの幼虫を1頭ずつ飼育ケースに入れて育て,蛹化・羽化を観察させる。

カブトムシ飼育中

(3)モンシロチョウのサナギ

モンシロチョウのサナギを展示し,羽化しそうな場合は教室に持ち帰り,リアルタイムに観察させる。

(4)メダカの観察

メダカを水槽に入れて観察させ,1日1回「オスメスクイズ」を出す。水槽から1匹ずつA~Jまでのビーカーに入れ,子どもたちにオス・メスを判定させ,カードを箱に入れる。これを何度も行うことでメダカの背びれや尻びれに注目し,写真やイラストだけではなく,実物を見て判断しようとする態度を養う。また,発眼した受精卵を顕微鏡(タブレット付き)で見せ,実際に孵化近くまで観察する。血流や心臓の動きがリアルタイムで観察できる。

メダカクイズ

メダカ発眼卵 顕微鏡映像

(5)「超簡単ネオジムモーター」の展示

科学クラブで作った簡単モーターの実機を展示し,誰でもすぐにモーターを作ることができる。

(6)「どこまでも続く無限鏡」の展示

科学クラブで作った無限鏡を展示し,鏡とハーフミラーでLEDが無限に映る現象を体感できる。

(7)校内の野草マッピング

次の外的環境の充実の内容であるが,裏庭の野草を16種類採取し,その名前や謂れなどを書いたカードと裏庭全体のパノラマ写真をサイエンスストリートに用意し,遊びに行ってみて見つけた野草があったら,指定のシールをパノラマ写真に貼る。シールが増えると自分も見つけたいと思う子が増えるようになる。

(8)校内の樹木マッピング

これも外的環境の充実の内容である。裏庭,校庭,中庭に植えてある樹木の名前と謂われを調べ,ラミネートして樹木に取り付ける。それを野草と同様にパノラマ写真に指定されたシールを貼る。知らないうちに樹木の名前があちこちの子から聞かれるようになる。

校内樹木のマッピング

(9)月齢の展示・立体月齢早見盤の展示

月の学習の時期には,毎日の月齢を展示している。月齢1から30まで。今日はどの月齢かを指し示し,欠け具合に興味を持たせる。科学クラブで作った小型の立体月齢早見盤を製作し,それを展示して「今日の月齢」「自分の誕生日の月齢」「次の満月」などを調べさせる。

月の満ち欠けと月齢

立体月齢早見盤

(10)「T字パズル」の展示

冬季は観察する生き物も少ないため,頭を使うT字パズルを2基置いて,子どもたちに挑戦させる。Tの文字をあしらった4ピースパズルをスチレンボードで製作し,「ホームベース型」「矢印型」「ロケット型」「三角屋根の家型」など12種類の形が組める。大人でも難しいこのT字パズルを何度も解いた子に賞品として進呈する。

(11)階段掲示

本校は長方形をぐるぐる回るような作りをしているため,階段が多い。そこでこの階段の目の触れる面に理科的なワードや写真,イラストを入れて毎日階段を上がるたびにその絵や写真を見て,ワードを口ずさめるようにしている。テーマは多岐にわたるが現在は植物の果実と花,野菜の実と花,昆虫の名前と写真,体の器官名とイラストがずらりと貼られている。過去には春の七草,秋の七草,野草名,樹木名,星座名,惑星名などテーマを決め,何度も入れ替えをしている。時に「万億兆京…無量大数」と算数ネタを貼ったり,世界の国名や首都名,日本の都道府県庁所在地名など算数や社会科寄りになることもあるが,基本は理科的なワードをこれからも貼っていく。

野菜の花と実の階段掲示

3.外的環境の充実

(1)野草の同定

春が中心であるが,教科書にあるような野草が多く咲いている裏庭で一つずつ同定し,その名前が言えるようにカードに書いて写真をつける。それが裏庭のどの位置にあるかをパノラマ写真で一覧にできるようにする。教員が同定できると野草観察に対して自信をもって行えるので,その回数も増える。

(2)樹木の同定

樹木の同定は野草に比べて難しく,専門家を招聘することにした。校内の樹木をお世話頂く樹木医にどの木は何という名前かを教えてもらい,写真や地図とともに記録する。樹木名を職員で小さく貼っていき,それを見て児童の代表がカードにしていく。カードはラミネートしておき,樹木に取り付けるとともに同じ物をサイエンスストリートにパノラマ写真とともに置く。これも指定のシールを貼ることで少しでも興味を持ってもらう。係の児童はiPadを持ち,樹木と葉の写真を撮り,調べた自分らもカードに載せる。さらにiPadを用いて,ウェブでその木のことを調べ,まとめてカードが完成。プリントアウトしてラミネート。パンチで穴を開け,紐を通して樹木に結わえる。

(3)農園の整備

本校の畑はとても乏しく,元々花壇であったので,コンクリートが敷いてあり,水はけも悪かったので,造園業と農業を営む保護者に依頼し,コンクリートを割ってガラを運び出し,土を耕し畑として利用できる形にした。学級ごとの畝を割り当て,教科書にあるジャガイモ,カボチャ,キャベツ,インゲンマメ,キュウリ,ゴーヤなどが育てられるようにした。さらにトウモロコシ,トマト,サツマイモ,落花生,エダマメなども栽培し,生活科の学習にも役立つようになった。さらに農園を拡大し,あと6畝程度作る予定である。

農園の整備

(4)花壇の整備

県の「花と緑のふれあい教室」の指定をもらい,子どもたちが自分で花を選んで植木鉢に植え,春までお世話をして栽培できるようになった(低学年)。また,玄関にもフラワーポットを置き,来校者を楽しませている(中学年)。クリスマスや新年に向けて寄せ植えを行う(高学年)。これらの取組の他にも中庭の花壇の花も充実させ,花いっぱいの学校になろうとしている。

花と緑のふれあい教室

4.おわりに

このように学校の内外の環境を理科的に整備することで,子どもたちは自然や科学に対し興味を持ち,授業で行う理科についても積極的に関わろうとし始めた。後編では子どもたちの好奇心を揺さぶる科学的なイベント(サイエンスフェスティバル)と,これらを踏まえた上での「自ら創り上げる理科授業」について述べていきたい(後編に続く)。