小学校 教科書・教材|知が啓く。教科書の啓林館
理科

「おもしろそうだ」「やってみたい」を引き出し,主体的な問題解決する子どもをめざして
―「3年 光の性質」の実践を通して―

3年 堺市立五箇荘東小学校 川俣 英之

1.はじめに

3年生は,初めて理科という教科にであう学年です。子どもが「おもしろそうだ」「やってみたい」と興味・関心・意欲をもって主体的に取り組み,理科が大好きな子どもを一人でも多く作りたいと考えて取り組みました。理科授業においては,主体的な問題解決をすることが求められています。しかし,3年生の実態として,まだまだ思考と行動が未分化であり,なかなか興味・関心・意欲が持続しないことが挙げられます。そこで,子どもの興味・関心・意欲を高めるために,本単元では,導入時に「光の迷路」という子どもにとって興味・関心のある活動を設定することで,子どもの知的好奇心を刺激し,3年生なりに主体的な問題解決する姿を期待しました。さらに,その活動を広げたり,深めたりすることで,子どもの活動欲求を持続させるとともに,活動の中でであう様々な発見を元に,子ども自ら問題意識を持ち自力解決させる場の工夫を行いました。

2.素材の教材化と場の工夫

(1)導入場面

○素材の教材化 ―光の迷路―

光の迷路,星の部分では,「みんなの光を集めよう」という課題を与え,明るさが変わることに気づけるようにしました。

また,迷路の道を分けることで,何度も確かめたいという意欲をもって活動できるようにしました。グループでの活動を想定していたので,グループに1つずつ迷路を用意しました。また,この単元では,陰ができる時間や場所が限られるという問題点がありましたが,迷路自体を動かせるようにしたことで,時間と場所に制約がなくなり,晴れていればいつでも授業ができるようにしました。

○場の工夫

・1時「鏡で日光を反射させよう」
一人1枚自分の鏡を持たせ,陰にある窓や遊具などを的にして,日光を反射させる活動や自分の鏡の形を確かめる活動を行います。このような活動を行うことで,光は集めたり反射させたりできることに気づきます。

・2時「光の迷路をクリアしよう」
光の迷路をクリアする活動を行います。子どもの「おもしろそうだ」「やってみたい」という気持ちを高めます。スタートでは,光はまっすぐに進むこと,☆の部分では,光を当てると物の明るさが変わること,リンゴの部分や■の部分では,光を当てると物の暖かさが変わることに気づきます。

・3時「気づきをまとめよう」
1・2時で気づいたことを整理し,解決したい問題を見出す活動を行います。

(2)ワークシート

3年生の実態として,光の迷路をクリアする活動をしながら,気づきをワークシートに書くことは難しい。そのため,活動の時間とワークシートに書く時間を分け,もう一度活動する時間を設定しました。試行活動と言語活動を交互に設定することによって,子どもが自分なりの問題をもつことができると考えました。

ワークシートは,Aでは,試行活動をした時に,光の迷路の周りに子どもが気づきを書けるようにしました。また,「光のめいろをクリアしよう!」という課題を設定しているので,各課題でクリアできたかを問うようにしました。Bでは,子どもが次の時間に自分の気づきを整理し,自分なりの問題をもつためのワークとしました。

(3)問題解決場面

子どもの持つ問題意識に対し,学習意欲を維持したまま解決していくためには,自分たちで実験方法を考え実施することが不可欠ではないかと考えました。子どものもつ問題意識に階層があり,こだわりをもっている部分も違うはずです。そこで,子どもの問題意識を解決する方法,すなわち,予想したことが正しいかどうか証明するための検証方法を,3年生なりにできるだけ子ども自身が考え,実験させるようにしました。しかし,その実験が妥当かどうか,教師が支援していくことは必要不可欠です。

このように,子ども主体の問題解決を図れば,問題を自分のものとしてとらえることができ,そのことによって納得し,深い理解につながり,それが実感を伴った理解に近づけることができるのではないかと考えました。子どもが自分なりの問題解決を行えるように,実験について考える場面を設定しました。

3.研究の実際

(1)導入場面

まず,光の迷路をクリアするという課題を与え,試行活動をグループで行いました。子どもは,迷路をクリアすると「やったー」「もう一回やろう」などと声を上げ,何度もチャレンジする姿が見られました。この姿から,光の迷路は,子どもの活動欲求を高める教材であると確かめることができました。

次に,一度活動をやめ,現象の把握をさせるため,ホワイトボードに書いた迷路に「何をすればどうなる」ということを確認しました。確認することで,子どもの意識を迷路の各課題に焦点化させることができました。

焦点化したことを元に,もう一度試行活動を行いました。2回目の試行活動では,子どもは,1つ1つの課題についてゆっくりと確認する姿が見られました。また,グループのみんなで力を合わせてクリアするという活動を行ったことで,自然に子ども同士で話し合う活動が活発になりました。試行活動の中では,迷路に近づき,リンゴに触ってみる子どもや自分の体に光を集めてもらい,暖かさを実感する子どもの姿が見られました。

最後に,迷路をクリアして,気づいたことをワークシートに書いていきました。多くの子どもは,自分なりの気づきをワークに書くことができ,何を書けばよいかと悩む子どもはほぼいませんでした。それは,十分に活動する時間がとれたこと,活動の途中で,気づきを元に,グループで自然に話し合う活動ができていたからだと考えました。





(2)問題解決場面

光の迷路の活動から,「①光が集まると明るくなるのか」「②光が集まると暖かくなるのか」という2つの問題をもった子どもが,自分たちで実験方法を考えて確かめていく場面を設定しました。3年生から理科が始まったこともあり,実験の経験は少なく,より妥当性のある実験を考えることが難しかったです。この点では,教師側の支援が必要不可欠であったといえます。

「①光が集まると明るくなるのか」という問題について,明るさを計るものが思いつかずに悩む子どもが多かったです。しかし,明るさを確かめたいということははっきりとしていたので,教師側から照度計という器具を提示して,実験を行い,問題を解決することができました。

「②光が集まると暖かくなるのか」という問題について,たくさんの実験方法が考案され,実験を行うことができました。例えば,チョコレートに光を集めて,溶ける時間と鏡の枚数との関係を調べる実験やチョコレートの代わりに飴や氷などで実験するグループも見られました。また,複数の鏡を輪のようにして並べ,ソーラークッカーのようにして溶かす実験や,溶かすものを置く台紙の色を様々な色にして試す実験も見られました。

自分たちの考えた実験を行うことで,子どもがより大きな満足感を得ることができたのではないかと考えられます。

4.分析

光の迷路の有効性を確かめるために,子どものワークシートにおける記述を分類し,分析を行いました。右がその結果です。37人中32人が光の直進性に気づく記述が見られました。光を集めると明るくなることに気づく記述が見られたのは,37人中22人で,暖かくなることに気づく記述が見られたのは,37人中33人となりました。鏡の枚数と明るさや暖かさの因果関係に気づけた記述は37人中13人となりました。明るさについての記述が少ないことから,迷路の星の部分に銀紙を貼るなど,改善の余地があるといえます。

自分たちで実験を考える場面では,ノートの記述を確かめることで,鏡の枚数で比較して学習問題が作れているか,鏡の枚数で比較して予想を立てているか,鏡の枚数で比較した考察を書けているかを分析しました。鏡の枚数で比較して考察を書けていない子どもが37人中6人いたことから,もっと考察にかける時間や言語活動の場を充実する必要があると考えられます。

鏡の枚数で比較した学習問題を
作ることができたか
37人
鏡の枚数で比較して予想を
立てることができたか
34人
鏡の枚数で比較した考察を
書くことができたか
31人

5.成果と課題

成果として,「光の迷路」は子どもが問題をもつ上で有効な教材であるといえます。分析結果から,この単元で気づかせたいすべての事実にであうことができました。また,子どもが「クリアしたい!」という活動欲求を満足させることもできました。自力解決の場面では,子どもなりの実験で解決していく楽しさや満足感を得られたことから,3年生なりの問題解決が行えたと考えました。この経験は,3年の理科だけでなく,4年以降の理科にとって有意義な経験になるはずです。

課題として,導入場面では,ワークシートの改善と光の迷路における「☆」部分の改良が挙げられます。ワークシートが大きくなりすぎて,子どもが書くときに迷いが見られました。より,子どもが書きやすいワークシートにする必要があるといえます。また,明るさについての記述の少なさから,光の迷路における「☆」部分に仕掛けが必要だったと考えます。問題解決場面では,実験経験の少ない3年生に実験方法を考えることは難しいということを念頭において,取り組む必要があったことが挙げられます。教師側の支援だけでなく,単元に入る前に子どもの実験経験を豊富にしておくことも重要です。

6.参考文献