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理科

「実感を伴った理解」をめざす理科授業の工夫
~6年「発電と電気の利用」を通して~

6年 神奈川県秦野市立南が丘小学校 久本 卓人

1.はじめに

『小学校学習指導要領解説 理科編』では,「実感を伴った理解」の要素として,「具体的な体験を通して形づくられる理解」「主体的な問題解決を通して得られる理解」「実際の自然や生活との関係への認識を含む理解」の3点をあげている。これらを授業で具現化するためには,

といったことが重要である。

しかし,限られた時間の中で,学級の実態に合わせ,これらを実現していくためには,児童の疑問や身につけさせたい力を明確に意識するとともに,効果的な課題の設定や教材教具の工夫が不可欠であると考える。そこで,今回は6年「発電と電気の利用」を通し22年度,23年度の2年間に渡り取り組んできた授業改善の実践を紹介する。

2.単元指導計画作成にあたっての工夫

単元指導計画の作成においては,「身につけさせたい知識や技能」という教師側の意図と,「追究したい疑問や気づき」という児童側の意図の両立に悩むことが少なくない。そこで,予想される児童の疑問や気づきを表に整理し,それをもとに単元指導計画を作成するようにした。これによって,それぞれの課題に児童の疑問や気づきが生まれる充分な「しかけ」がなされているのか,各課題につながりや発展性が見込まれるかといった確認を行い,指導内容や教材教具の工夫に取り組んだ。さらに,授業後は実際に児童から出された疑問や気づきを反映させ,次年度の参考となるようにした。下の表はそのレイアウトである。

(児童による疑問や気づき)

(PDF:824KB)

3.単元の流れ(全12時間)

【単元導入】発電と電気の利用(1時)

【第1次】手回し発電機で発電しよう(2~5時)

【第2次】電気をたくわえて使おう(6~9時)

【第3次】電流による発熱(10~11時)

【第4次】電気の変かんと利用(12時)

4.授業展開での工夫

(1)発電量の実感を重視した取り組み ~第1次の充実~

本単元では,電気を光,音,熱などに変わるエネルギーとしてとらえさせていくことが大切である。しかし,事前に実施したアンケートで「電気とはどんなものですか?」という質問に「夜を昼のように明るくしてくれるもの」といった「電灯」あるいは「光」ととらえている回答が少なくなかった。そこで,電気をエネルギーとして,より体感的にとらえられるよう,第1次において次のような学習に取り組んだ。

なお,これらの学習ではおおよそ二人に一つの手回し発電機を用意するとともに,3時間扱いとし,一人ひとりの操作の時間を十分取るように配慮した。

その後の授業では,手回し発電機の手ごたえから「流れている電流の量はこれくらいかなかな」などと予想しつつ活動に取り組む児童の姿も見られた。また,発電することの大変さや蓄電の利便性に改めて気付いたという児童も多かった。

(2)児童の関心を発熱へとつなげていく取り組み ~単元導入から第2次にかけて~

1年目に実際に出された児童の気付きや疑問を整理し,単元の展開を考察していく中で感じられた課題の一つは「発熱に関する学習へのつながりがやや弱い」という点であった。これについては各種研究会でも「単元導入時に発電機能付きの非常用ラジオを取り上げたが,発熱に関する学習ではドライヤーを使って改めて導入を行う形になった」などの声が聞かれていた。そこで,2年目は単元導入から第2次まで次のような手だてを取り入れ,児童の関心が自ずと発熱を扱う第3次へつながっていくよう試みた。

1点目については単元導入時に,2点目については実験の際に安全対策として繰り返し確認させた。さらに,3点目については,次のように取り組んだ。

① 第1時では手回し発電機を用いて発光ダイオードと豆電球を光らせる活動を自由に行った。これにより児童は「それぞれの電球の光り方の違い」「手回し発電機の手ごたえ」とともに「豆電球の発熱」に気づいていった。

② テレビCM等により,児童の多くは発光ダイオードが省エネである,というイメージを持っている。そこで,第2次においては「発光ダイオードがどうして省エネと言われているのか考えよう」という課題を設定した。

実験を通し,児童は「同じ蓄電量での点灯時間の差」「消費する電気の量」「豆電球の発熱」を関連付け,「発光ダイオードは発熱に電気を消費しない分,省エネである」という結論にいたった。また,最後に家庭で使用される一般的な白熱電球のフィラメントが3000度前後にもなることを紹介した。これらにより児童の多くは発光ダイオードの省エネ性を理解するとともに,フィラメントで起こる「発熱」について高い関心を示していた。

(3)学習と生活・社会とをつなげる取り組み ~新聞や地域リソースの活用~

各種調査によると,児童にとって理科は他教科に比較し有用性の実感が低いと言われている。これは本学級で実施したアンケートにおいても同様の傾向が見られた。学習内容の有用感は学習意欲の高揚と主体的な学びの基盤でもある。そこで,「新聞の活用」「地域リソースの活用」の2点から学習内容と生活や社会とをつなげ,学ぶことの意義を感じさせる工夫を行った。

① 新聞の活用
まず,単元導入時には停電の影響を取り上げた記事を紹介し,自分たちの生活と電気との深いかかわりについて話し合った。また,第2次の最後には発光ダイオードが白熱電球に代わって普及していることやその理由などについて紹介された記事も取り上げた。

② 地域リソースの活用

児童たちは4月から総合的な学習で環境問題について学んできた。そこで,市の環境保全課や地元に工場・研究所を持つ自動車メーカーの協力のもと,学習の発展として電気自動車での電気の使われ方や環境対策を視野に入れたものづくりへの思いなどを学習する機会を設けた。電気自動車は,電気を光,音,運動などに変えて使用している。また,走行中は発電・蓄電を行っているという点でも,学習してきたことが社会の中でいかされているということに強く感動したようであった。中には「将来自動車会社に入ってさらにすごい車を作りたい」と夢を語る児童の姿も見られた。

(4)ミニ実験の取り入れ

主体的な問題解決学習のスタートは言うまでもなく「自ら問題を見出す」ことである。したがって,授業では問題を見出す力を児童に育てていく必要がある。そこで授業では,課題を解決する度に新たな疑問や気づきがないか,考える時間をとった。これらを次の課題設定にいかしていくのだが,当然全てを取り上げることはできない。そこで,課題終了後などに可能な範囲で行う不定期の「ミニ実験」を取り入れた。

5.おわりに

学習を通し,児童たちの電気に対する概念は徐々にエネルギーとして実感されていった。また,「調べたい」「確かめたい」という好奇心のもと主体的に学習課題の解決に取り組む姿,一つの学習をすぐに完結させるのではなく,さらに深めよう,追究しようという姿が見られた。自然の事物・事象から問題を見出す力,見通しを持って観察実験を行う力,それらの結果を分析する力など,理科学習の中で育てるべき力は多く,時間は少ない。つながりを意識した年間計画,単元計画を基盤とした授業開発ができるようこれからも努力を続けていきたい。

*本単元の計画・実施においては秦野市小学校理科研究会の指導・助言を受けている。

参考・引用文献