理科の授業において,子どもが「やってみたい!」と感じることは,主体的な学びにつながる重要な要素である。特に,問題解決型の授業では,子ども自身が課題を見つけ,試行錯誤しながら解決していく過程が大切になる。しかし,単に課題を提示するだけでは,子どもの興味や意欲は持続しにくいのが現状である。
そこで,「どこに『やってみたい』があるのか」を想定し,それを引き出す仕掛けを意識した授業づくりのポイントを紹介する。理科の学習において子どもが主体的に取り組めるよう,問題解決のプロセスを工夫し,学びへの意欲を高める方法を考察する。
児童はどのようなときに「やってみたい」と思うのか。以下の三つの場面を想定する。
【①「やってみたい」と思える事物・現象を提示する】
自分の認識とのズレや,前時の内容とのズレを感じるとき,児童は「ふしぎ?」「あれっ?」「どうして?」と疑問を抱く。このような事例を提示し,自然の事物や現象とのかかわりを楽しむ活動を準備する。
【②「やってみたい」と思える再挑戦の場を与える】
実験を行っても「うまくいかない」ことはよくある。結果を単に失敗とするのではなく「なんとか成功させたい」という思いを高め,「どうすればいい?」「どんな実験をしたい?」と切り返すことで,新たなアイデアが生まれ,工夫や改善への意欲が高まる。
【③「やってみたい」と思える他の場面を提供する】
モノづくりや生活の場面へ転換したり,パフォーマンス課題を設けたりすることで,きまりや規則性の理解が一層深まる。さらに,理科を学ぶ意義や有用性を実感する機会にもつながる。
【目標】
【評価基準】
| 知識・技能 | 思考・判断・表現 | 主体的に学習に取り組む態度 |
|---|---|---|
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【指導計画】
| 授業の流れ | 主な学習内容 |
|---|---|
| 単元導入 1時間 |
もののあたたまり方について問題作り 学びの計画づくり |
| 第1次 2時間 |
金属のあたたまり方 金属はどのようにあたたまっていくのだろうか。 |
| 第2次 1時間 |
空気のあたたまり方 空気はどのようにあたたまっていくのだろうか。 |
| 第3次 2時間(本時) |
水のあたたまり方 水はどのようにあたたまっていくのか。どのようにあたたまるのか。 |
| 第4次 1時間 |
学びを深めよう 生活の場面でどんなところで使われているのか。 |
単元の授業の流れを「金属→空気→水」の順に変更した。予想場面において,水(液体)が金属(固体)と空気(気体)のどちらにも似た性質を持つことを実感し,「水(液体)はどちらに似ているのか?」と既習内容をもとに考えさせることができると考えた。
【①「やってみたい」と思える事物・現象を提示する】(導入場面)
◯指導のポイント
【②「やってみたい」と思える再挑戦の場を与える】(結果~考察場面)
このような曖昧さが,次の「やってみたい」につながる。ある程度意見を出し合ったところで,
教師:「どうしたい?」
児童:「はっきりさせたい!もう一回実験したい!」
教師:「結果をはっきりさせるために,試験管のどこをどのように熱すればいい?」
児童:(考えを深めながら,再実験の方法を選ぶ)
◯指導のポイント
【③「やってみたい」と思える他の場面を提供する】(まとめ~ふりかえり場面)
◯指導のポイント
【どんな時に「やりたくない」と感じるのかを考える】
「やってみたい」は「やりたくない」という気持ちと表裏一体だと考える。元気よく挙手していた児童が指名されずに意欲をなくし,机に突っ伏してしまう場面や,問題が分からずに投げ出しかけていた児童が,ふとした瞬間に鉛筆を走らせる場面に遭遇することがある。どちらにも共通するのは,学習への動機は常に変動するものだということ。すべての児童が同じように感じるわけではないが,「やりたくない」と感じる状況を想定し,適切な「仕掛け」を準備することが重要である。
○内容がわからず「やりたくない」と考える児童への仕掛け
○実験(観察)を「やりたくない」と考える児童への仕掛け
児童が「やってみたい」と思える理科学習を実現するためには,事物・現象の提示,再挑戦の機会の提供,別の文脈での活用が重要である。一方で,「やりたくない」と感じる要因を把握し,適切な「仕掛け」を準備することも欠かせない。学習意欲は常に変動するが,児童が安心して試行錯誤できる環境を整えることで,主体的な問題解決へと繋がる。
今後も「やってみたい」のある授業づくりを追究していきたい。