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英語

チャレンジタイムでいきいきEnglish!

刈羽村立刈羽小学校 茂木 淳子

チャレンジタイムとは…

  1. 児童がこれまでの学びを生かす機会とする
  2. 空き教室等を使って,ALTと1対1で数分程度のスモールトークをする
  3. 児童にとって,初対面のALTを招待する
  4. 事前にまとめた自己紹介の資料の持ち込みはOK。台本の持ち込みはNG。

1.「児童がこれまでの学びを生かす機会とする」とは

チャレンジタイムは,いくつかの単元のまとめとして実施するとよいでしょう。Blue Sky elementaryでいうとREVIEWがそれにあたります。
授業はよく「バックワードデザインで」といわれますが,チャレンジタイムも同様です。
この機会を最大限に生かすために,各単元でのまとめが大切になってきます。私は,タブレットを使って簡単なスライドを作成させています。自分の家の大好きなペットのこと,夢中になっているスポーツのこと,はまっているゲームのこと,ふるさと自慢,とっておきの思い出など。単元ごとに自分事として伝えたいことをまとめさせるのが,成功の秘訣です。

2.空き教室等を使って,ALTと1対1で数分程度のスモールトークをする

これには3つの理由があります。まず,1つ目。ALTが一人で児童が複数の状態で会話すると,得意な子だけが英語で話し,そうでない子の話す機会がなくなってしまうことが予想されます。ですから,ALTと児童は1人ずつであることが必須条件です。何が何でも自分で話して,自分で聞き取らなければならない。子どもの心に火を点ける…というより,おしりに火を点けるという表現が当てはまるかもしれません。頼れるのは自分だけとなったら,本気で取り組むに違いありません。

2つ目の理由は,児童の質問に意味をもたせるためです。自分が質問する前に,他の子が名前をたずね,ALTのその答えを聞いてしまったら,自分の番の時に“What’s your name?”と聞くのは意味がなくなってしまいます。すでに名前を知ってしまっているのですから。ただの形式的なつまらないものになってしまいます。たった数分ですが,児童にとって価値ある活動にしたいと思います。そのためには,その子にとってすべてのことが初めてでなければなりません。

3つ目の理由は,私の個人的な理由です。自分が話している英語をほかの日本人に聞かれるのは,なんとなく恥ずかしいと,私が感じているからです。しかし,周りに日本人がいなくて,相手が外国人だけなら平気です。第2言語習得中なのだから下手で当たり前という開き直り精神が発揮されるからでしょうか?児童も同じ気持ちかどうかは分かりませんが,衆人環視では,プレッシャーが大きい気がします。

3. 児童にとって,初対面のALTを招待する

ALTは,いつも教室で一緒に授業をしている方ではなく,児童にとって初対面の人が望ましいです。名前も出身も知らない,何が好きで,どんなことが得意なのか知らない人。そのような人の方が,児童にとっては質問のし甲斐があります。まさに,意味のあるやり取りが可能となります。

初対面のALTではなく,いつも会っているALTの方が児童の心理的負担が少ないのではないか?と思われるかもしれませんね。確かに,会場の外の廊下に用意した椅子に座って,そわそわ&びくびくしながら待っている児童の様子を見ると,よほど緊張しているんだろうなと思います。では,慣れ親しんでいるALTなら緊張しないのかな?というと,答えはNOです。少なくとも私の実践では逆でした。「初対面のALTとは楽しく話せたけど,いつものALTは逆に緊張する!」という児童が意外に多かったです。

いずれにせよ,外国人と1対1という非日常場面では,すごく緊張します。しかし,終わったときのあの笑顔!緊張から解き放たれた安心感と,自分の英語が伝わった喜びとが混ざり合った「楽しかった!またやりたい!」が聞けるのは,指導者としてうれしいことです。

4. 事前にまとめた自己紹介の資料の持ち込みはOK。台本の持ち込みはNG。

前述したように,児童には単元ごとに,自分の伝えたいことをタブレットでまとめさせています。この画像を持ち込んでALTに見せながら会話をすることはOKとしています。しかし,心配のあまり,台本を自分で用意し,その紙を持ち込もうとする児童もいます。が,そこは,ストップです。台本があるとどうしても見てしまいます。ALTに話しかけるのではなく,紙に向かって独り言を言っている状態になりがちです。ですから,ここは心を鬼にして「台本持ち込み禁止」としています。

その代わり,練習の時間はたっぷり保障します。チャレンジタイム本番のずっと前から,単元の終わりに,前の単元の復習のときに,授業の帯活動として,忘れずに言えるよう繰り返し練習します。家庭学習でも推奨します。朝1回,お風呂で2回,寝る前に3回,頭の中でリハーサルをしておくと,きっといいことがあるよと話しています。

可能であれば,実際にリハーサルをします。6年生がALT役となり,5年生の練習に付き合ってあげます。数分間のやり取りが終わったら,6年生が前年度の経験を生かして,5年生にアドバイスしたり,よかったところをほめたりします。

5. チャレンジタイムを終えて

児童感想①
チャレンジタイムは,少しドキドキしたけど,わくわくの方が多かった。言いたいことが言えなくなったりした。でも,聞きたいことが聞けてよかった。ALTの先生は,生の魚に慣れていないと思ったら,意外に,スシも食べられると言っていた。いろんなことを聞けてよかった。たいへんだったけど,やり切った感じが出た。次こそは,しっかり言いたい。分からない言葉も覚えて,いろんなことを聞きたい。

児童感想②
私が,ALTの先生に
“What sports do you like?”
と英語で質問したら,先生は笑って,
“Yes, yes, yes.”
で終わってしまいました。何て聞こえたのかな?3学期も,また,チャレンジタイムをしたいです。そのときには,ちゃんと通じるように,がんばりたいです。

この活動のいいところは,チャレンジタイムに成功してもしなくても,充実感を味わい,前向きな気持ちになる児童が多いことです。他校のALTを派遣してもらったり,準備に時間がかかったりしますが,「児童が夢中になって取り組む姿」を目の当たりにできる最高の活動です。みなさんもぜひ,チャレンジしてみてください。