小学校 教科書・教材|知が啓く。教科書の啓林館
英語

子どもたちから単元のゴールを引き出す
~「Blue Sky elementary 5 Unit6」をアレンジして~

琴浦町立浦安小学校 真山 健作

1.はじめに

外国語の学習で,単元のゴールとして行う「話す(発表)」「話す(やりとり)」の活動を決めるときに,目的意識と相手意識を子どもたちにしっかりと持たせることが重要だとよく言われる。そこで,これまで私は,「こんな活動はどう?」と子どもたちがやる気を持って取り組めるだろう目的と相手を考えて,単元のゴールを提案していた。
しかし,それでは,子どもたちの主体性や学ぶモチベーションを高めるためには不十分ではないかと考え,子どもたち自身が「誰に,何を,どのように」伝えるかを決める導入に挑戦しようと決め,Blue Sky elementary 5 Unit6の学習計画を立て,実践した。

2.実践事例

①子どもたちが,誰に何をどのような方法で伝えるのかを決める

Unit6の学習は,“I want to go to France.”というタイトルで,自分の行きたい国の魅力を他者に紹介するUnitになっている。
まず始めに,子どもたちに国名のことを学習するというイメージを持たせるために,知っている国旗の数を数える活動から入った。その活動後に,「行きたい国を発表しよう。」とすぐに教師から伝えてしまわず,子どもたちに「国の名前を使ってどんなことを発表しようか?」と,問いかけた。すると,何人かの子どもたちから「行きたい国を発表しよう。」という意見が出て,クラスのみんなも賛成したため,発表内容は,「行きたい国を発表する。」ということに決定した。次に「誰に行きたい国を紹介しようか?」と,問いかけた。子どもたちからは,浦安小学校の先生,全校児童,隣のクラスの友だち,保護者,地域の人など,たくさんの意見が出た。目的がないと誰に対して発表すればよいかなかなか決まらないものである。そこで,「誰に伝えたら,本当にその国に行ける可能性が高まるだろう?」と,問いかけた。すると,たくさんの子どもたちから「家族,お母さん,家の人」などの意見が出たので,Unit6のゴールを「保護者の方に行きたい国をプレゼンしよう。」に決めた。しかし,2学期に参観日がない中で,どうやってそのプレゼンを保護者の方に伝えるのかが議論となった。すると,子どもたちの柔軟な発想で,2学期から一人一台配られているiPadで,発表の動画を撮影し,家に持ち帰って保護者に見せたらよいのではないかという意見が出た。この意見にクラスのみんなが大賛成したことで,Unit6の単元のゴールが明確となり,子どもたちの意欲も高まっていった。

②子どもたちが,どんな発表内容にすると効果的かを考える

Unit6のゴールが明確になったところで,どのような発表内容にすれば良いかを考える活動を仕組んだ。まず,教師が見本を見せると告げ,“I want to go to Iceland. Iceland is very cold. Iceland is good. Let’s go to Iceland.”と国旗を見せながらデモンストレーションをし,「どう?アイスランドにちょっとでも行きたくなった?」と,問いかけた。すると子どもたちからは,「何がgoodなのか分からない。」「寒いことしか分からないし,逆に行きたくない。」「本当に先生は行きたいの?」というような冷たい反応がたくさん返ってきた。では,どういった内容で発表ができたら,保護者の方も行きたいと感じると思うのかをクラス全体で考えていった。子どもたちは,始めに教師の効果的ではない発表を見ているので,自分たちの発表はもっと効果的な内容にしたいという思いを強め,次々と発表内容のアイディアを考え,伝え合っていった。以下はそのアイディアの中のいくつかである。

  • その国で楽しめる場所を紹介する。
    (その国でしかできないようなこと)
  • その国の有名な場所を紹介する。
  • その国特有の食べ物を紹介する。
  • その国のすばらしい景色や自然を紹介する。
  • 発表を見せる家族の好みのものを紹介する。

③子どもたちが,何を英語で言えたら良いかを判断する

第2時以降の学習をする際にも,教師が「今日は~の言い方を学習しよう」と提示するのではなく,「発表に向けて,これまで言えるようになった言い回しは何かな?まだこれから学習しないといけない言い回しは何かな?」という問いかけをすることで,子どもたちの発表のために英語を言えるようになりたい,発表で使うからがんばって練習したいという思いを刺激していった。

④子どもたちが自分自身や友だち同士で動画をチェックし,発表をよりよくしていく

“I want to go to ~.”“We can see(eat, visit, play, drink, buy) ~.”“Let’s go to ~.”などの言い回しに学習で慣れ親したしんだ後の第6時から動画の撮影を開始していった。友だちと動画を撮影し合ったり教師が撮影したりしながら,撮るたびに,どこは十分か,どこを良くしたいかを子どもたちが考えていった。iPadを使って動画撮影をしたことで,手軽にふり返りができたり思い切って良いと思ったことを試行錯誤したりしやすくなった。教師が「ここをこうしてみよう。」と何度もアドバイスしなくても,自分の発表を調整していくという学習がとてもスムーズにできた。

⑤保護者の評価から,子どもたちが発表に有効なことを実感する

本番の撮影を終えた子どもたちは,学校のiPadを持ち帰り,家庭で保護者の方に感想を書いてもらった。全ての保護者の方の感想を子どもたちに読んで聞かせ,改めてどんな発表が相手の心を動かすのかを再確認させ,今後の学習につなげた。子どもたちは,保護者の方がたくさん自分たちの発表の良いところを見つけてくれたことに満足感と達成感を感じていた。

3.おわりに

子どもたちが主体となって,単元のゴールに向かっていくためには,やはり子どもたち自身で決めたり考えたりする活動が重要だと感じた。目的意識と相手意識を子どもたちにしっかりと持たせる時間を意図的に確保し,もっと良いものを作りたいという思いを持続させることを目指して,Unit6の単元を作っていったが,どうしても子どもたちの理想や思いを具体的に引き出す場面は,英語を使った活動ではなく,日本語でのやりとりが中心となってしまう。その引き出す場面はとても大切だと分かったので,今後はその日本語でのやりとりを更に厳選し,より多くの英語に親しむ活動を確保していきたい。今回は外国語科での実践であったが,この取り組みは小学校のどの教科でも重要なことだと考える。教師の指示したことだけやっていればいいという子どもたちを減らすためにも,様々な教科で子どもたちが自分自身で理想のゴールを考える時間を設けていきたい。