私の勤務校はR6,7文部科学省指定校事業リーディングDXスクールで,汎用的なソフトウェアとクラウド環境を十全に活用し,個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を図るための授業づくりに取り組んでいる。教室の中が多様化している今,誰1人取り残さないためには個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実が不可欠である。課題に向かって,自己調整を繰り返しながら主体的に学び続ける児童を育てるために,自己選択・自己決定の場面を増やした学びの環境を整え,外国語の見方・考え方を軸とした中間評価・指導を丁寧に行うことを意識し,授業改善を進めている。
本実践では,第5学年3学期「上小EXPOを開こう!」を題材に取り組んだ授業づくりと児童の変容について紹介する。
〇単元名 伝える相手と目的を意識して,おすすめの場所の魅力を伝えよう
〇教材名
「上小EXPOを開こう!~○○さんの行ってみたい・やってみたいことリストを増やすために,おすすめの場所の魅力を伝えよう~」
〇単元の目標
自己決定した相手と目的を意識し,既習表現を生かして,おすすめの場所の魅力を伝えることができる。
〇教材の特徴
〇単元計画(全8時間)
| 次 | 主な学習活動(ICT活用場面) | ICTの活用とその働き |
|---|---|---|
| 1 |
①目的・場面・状況を確かめ,伝える相手を自己決定する。 「学びの道しるべ」で見通しを持ち,マイゴールを立てる。 |
【課題設定】 ふきだしくん・Excel・Teams返信機 【(情報収集)整理・分析】 学デ・ALT/専科教員/仲間の動画等・Google翻訳等・Power point・Word 【まとめ・表現】 Excel・動画の共有 |
| 2 |
②~④前時のふりかえりを参考に,マイゴールを達成するための本時のめあて(マイミッション)を立て,自己調整しながらより良い発表内容を思考する。リアルなコミュニケーションを図りながら,マイゴールにどこまで近づいたか確かめる。 ⑤プレEXPOで,学びが深まる相手を意識して選びながら相互発表を行い,具体的な改善点を見つけたり,アドバイスをしたりして,ふりかえりに記録する。 ⑥~⑦プレEXPOの学びを生かし,新たなマイゴールを立て,伝える相手を意識した発表内容となるよう,改善する。 ⑧上小EXPOで,全体や小グループ等希望する形態で発表し,同時に動画も撮影し記録する。単元を通してついた力・まだ足りない力をふりかえり,次の単元に学びをつなげる。 |
〇自己選択・自己決定に向かうスケール表(
→本時終了時のゴール,
→単元終了時のゴール)
〇第4時の展開
| 学習活動 | 指導上の留意点 |
|---|---|
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1.Warm up&Practice(3分)
2.Today’s goal(5分)課題設定
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マイゴール・マイミッションを意識し、目指す発表に近づけよう |
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3.Activity①(12+5分)情報収集⇔整理・分析⇔まとめ・表現
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【予想される中間指導の例】 目的を達成するために内容をどうするか? |
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学びを生かして、伝える相手と目的を意識した発表にレベルアップさせよう |
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4.Activity②(15分)情報収集⇔整理・分析⇔まとめ・表現
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5.Reflection(5分)ふりかえり
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〇評価基準(思考・判断・表現)
| 評価基準 | 「学びを深める場」の児童の姿 | 努力を要する児童への手立て |
|---|---|---|
| A | 自分の考えや気持ちを大切に,相手と目的を意識しながら,英語表現や話す順序を工夫して,発表内容を考えたり発表練習をしたりすることができる。 | 課題解決につながる情報やツール,学ぶ相手を焦点化できるよう,支援する。 |
| B | 自分の考えや気持ちを大切に,発表内容を考えたり発表練習をしたりすることができる。 |
〇指導者の手立て~自己選択・自己決定が増える環境づくりについて~
【手立て①単元計画とつなぐ】

単元開始直後に,目的・場面・状況を含め,一人ひとりが最後はどのような発表を目指すのか,どのようなプランで学びを進めるか,児童とすり合わせる。最後のパフォーマンスが「話す(発表)」であることから,発表内容,発表表現を思考する時間に没頭するのでなく,実際に話して試す時間の必要性も児童と共有する。また,聞きっぱなしで終わるのではなくコメントやリクエスト,アドバイスなども含めて交流する学び方も確かめる。
単元開始直後に,単元の目標と学び方を丁寧に確かめておくことは,児童の学びの深まりや自走につながる。
【手立て②仲間とつなぐ】

自走する力のついてきた児童同士が共に高め合うためには,心理的安全性を保ちつつ,常に挑戦しながら,英語の表現や発表を磨いていく必要がある。段階的に,自分の目標とするゴールに近づけるために,指導者は相手選びをする際に視点となる「マイゴール」「発表相手」「発表内容」などの一覧を常に提示している。
【手立て③デジタル教材とつなぐ】

単元を通して,児童が自分のタイミングで復習したり,新たな視点を得たりすることができるように,デジタル教材を児童の端末に送っておく。主にデジタル教科書だが,一人ひとりの異なる英語スキルや学び方に対応するため,ALTや専科教員のムービーや関連するYou Tubeなども素材にしている。
【手立て④マイゴール・ふりかえりとつなぐ】

デジタル教科書の発表素材を基に,児童一人ひとりに目指す発表の目標(マイゴール)を持たせている。ふりかえりは毎時間行い,「マイゴールに対して今日は何ができるようになったか」「まだ何が足りないか」その視点で記録させるようにする。
前時と本時の学びをつなぐため,次時で何に取り組めばマイゴールに近づくかも記録するように促し,授業開始後すぐに前時のふりかえりを読み,前時の自分にタイムスリップを合言葉に取り組んでいる。
【手立て⑤ルーブリックとつなぐ】

児童に提示するルーブリックは,大まかに表現するようにしている。そして授業の中で,児童と共に実際のパフォーマンスからすり合わせる時間を作っている。
児童は仲間と発表練習を繰り返すたびに,自分のパフォーマンスは今どのレベルか,どうすれば左に近づいていくかを考える。また,教室内では常に児童の自己評価を提示しておき,手立て②で示したように,学ぶ相手を選ぶ際の視点にするよう、促している。
〇児童の学びと変容の過程について
本実践では,児童一人ひとりがマイゴールに向かって,自己調整を働かせながら発表改善に意欲的に取り組んでいった。抽出児童の学びと変容,具体的な指導者の手立てについては以下のとおりである。
【児童の学びと変容】
本児のマイゴール:(クラスの友達→)親友の行ってみたい・やってみたいことリストを増やすために、長島スパーランドの魅力について伝える
| 【2時間目の動画より】 Hello. This is Nagashima spa land. It is in Mie. You can enjoy roller coaster. Roller coaster popular is Hakugei. Hakugei roller coaster is very very scarly. Do you like very very scarly roller coaster? Do you like roller coaster? Thank you. |
【3時間目の動画より】 Hello. This is Nagashima spa land. It is in Mie. You can enjoy roller coaster. Populer roller coaster is Hakugei. Hakugei roller coaster is very very scarly. I like scarly roller coaster so-so. Do you like scarly roller coaster? You can eat chullos. Do you like chullos? Thank you. |
【4時間目の動画より】 Hello. This is Nagashima spa land. It is in Mie. You can enjoy roller coaster. Populer roller coaster is Hakugei. Hakugei roller coaster is very very scarly. I like scarly roller coaster so-so. Do you like scarly roller coaster? You can eat soft cream.Nagashima spa land soft cream is yummy.I like soft cream. Do you like soft cream? Thank you. |
【2時間目から3時間目変容について】
本児童は学習開始時には発表相手を「クラスの友達」と決定していた。しかし学びを深めるうちに目的達成に近づけるためには「相手の好みや興味に合わせる」必要があることに気づき,発表相手をクラスの仲間から親友へと変更し,甘いもの好きの親友へチュロスの内容も加えた発表に変容した。
【3時間目から4時間目の変容について】
本児童は授業開始と同時に親友に英語でインタビューを行っていた。What sweet do you like?の返答がI like soft cream.だったことから,発表内容がチュロスからソフトクリームに変容した。
【変容のための児童の学びの過程】
【抽出児童のふりかえり】
【単元終了後の児童の感想】
本単元を終えた児童のふりかえりには,「伝える相手を意識する」視点が多く記述されていて,相手に合わせた表現の工夫について丁寧に向き合う単元となったようだ。一方で,既習語彙や表現の定着に向けた練習等は児童一人一人に任せる場面が多く,技能面に対する指導については,全体で十分に時間をかけることができなかった。
今後は外国語の授業づくりにおいて,「豊かなコミュニケーションを図る上で欠かせない相手意識」と「主体的に学び続ける態度や姿勢」を育みながらも「小学校段階でしっかりと定着させるべき語彙・表現の獲得」のために,指導者としての働きかけを練り直し,実践を重ねていきたい。