近年,一人一台端末の導入により,ICTを活用した授業実践が日常的に行われるようになった。しかし,ICTを活用すること自体が目的になってしまうと,児童の学びにつながらない場面も少なくない。大切なのは,「児童にどのような力を身に付けさせたいのか」という目標を明確にし,その実現のためにICTをどのように活用するかという視点である。
本市では,chrome bookを使用しており,本実践で紹介するものはすべて「Googleスライド」を活用したものとなっている。今回の私の実践紹介が,先生方の今後の教材作りをする上で少しでも役立てるものになれば幸いである。
この活動は,文部科学省より配布された4年生の教材「Let’s Try!2」の中のUnit8「This is my favorite place.」で行ったものである。なぜこのゲームを作成することになったか,理由は3つある。一つ目は,高学年でも学習することになる道案内の表現(”Go straight.”,”Turn right.”,”Turn left.”)に慣れ親しんでほしいということ。二つ目は,本教材の指導書で示されている「お気に入りの場所を案内する」場面よりももっと必然性のある場面で道案内の表現を使わせたかったということ。そして3つ目は,児童が楽しみながら表現を使うような活動にしたかった,ということである。
(本単元は,お気に入りの場所を伝えることを単元目標にしているが,私は「道案内を聞いて目的の場所にたどり着く」ことと「自分のお気に入りの場所を伝える」ことの2つを目標に設定し,前者を3時間,後者を2時間の全5時間で単元計画を再編成した。)
〇活動の概要
資料①
資料②
資料③
資料④
〇活動のポイント
Bペアは地図を見ながら進むことはできないので,相手ペアからの指示(道案内)をしっかり聞く必要がある。一方Aペアは,資料①のように相手ペアの動きがわかるので,仮に相手が道を間違えて進んだとしても間違えた場所から指示を出すことができる。こうしたインフォメーションギャップの活動は,英語を話す必然性を高めるという点でとても効果的である。
この活動は,頻出する単語が多い単元であればどの学年でも実施することができる。ここでは,高学年で学習することになる「お店」や「施設」の単語を題材にした本活動を紹介する。
〇活動の概要
資料⑤
〇活動のポイント
児童の聞いたり伝えたりする意識を高めるために,単語を消すときは選んだ本人ではなく聞いた側が行う,といったルールを入れるとよい。また,はじめは2対2で行い,単語や表現に慣れ親しんだら1対1で行うなど,児童の実態に応じてやり方を柔軟に変えることも可能である。活動をする時は,得点シートを用意しておくとゲームがスムーズに行われて良い。(資料⑥)
資料⑥
児童の発話が促されるような活動ではないが,学習した語句や表現が練習できて最終的に発話につながっていくための教材「表現練習スライド」を紹介したい(資料⑦)。これは,私が指導している学年のほぼ全ての単元で活用している。この教材の最大のメリットは,児童一人ひとりが自身のタブレットで練習できるところにある。スライドショーにすると,隠れた文字の所が見えるようになっているので,一問一答の形式で個人やペア,グループなど様々なかたちで練習することができる。他にも,
といったことがメリットとして挙げられる。
資料⑦
また今年度からは,主に英語が苦手な児童や発音に自信のない児童をターゲットに新しくルビ付きの表現練習スライドを作成し(資料⑧),児童が必要に応じて使いたい方を選択できるようにした。(個別最適化) まだ実践に導入してから少ししか経っていないが,児童の様子を見ていると意外とルビ付きの方を活用している児童が多いことがわかり,それの重要性に今になって気づくことができた。
資料⑧
これは,自分や身近な人,町紹介など,伝えたい内容をまとめる時に思考ツールとして活用している。(資料⑨) 自分の伝えたいことを整理する際,内容を足したり減らしたり,あるいは伝える順番を変えたりしたい時は,ワークシートよりもデジタルツールでまとめる方が効率的である。また児童が必要としている表現や単語を図や絵で表しておくと,書く手間が省けるので取捨選択がしやすくなる。内容をまとめる時は,児童の思考が止まらないような工夫が必要である。
資料⑨
これまで4つのICTを活用した実践紹介をしてきたが,私がいつもICT教材を作成する上で大事にしていることが3つある。それが,
の3つである。
①反復学習ができるもの
外国語は,語学習得という点では児童にとって非常にハードルの高い教科である。それ故に週1~2回の授業ではなかなか定着することは難しい。児童の学習をサポートするためにも,「教材③」で紹介した『表現練習スライド』のようなものを活用すれば,授業以外の時間でも復習として表現に慣れ親しむことができる。児童の学習環境を整えるという意味でも反復学習ができる教材は効果的である。
②楽しみながらコミュニケーション活動ができるもの
習った単語や表現をインプットからアウトプットしていく課程の中で私が最も大事にしているのが,「どのように慣れ親しませるか」ということである。ALTなどのネイティブスピーカーの後に続いて発音したり,歌やチャンツに合わせてリズムをとったりなど方法は様々あると思うが,中でも私は「ゲーム性のある活動を通して,自然にくり返し表現を使う」ことを最も重要視している。「教材①」と「教材②」で紹介した活動のようにゲームの目的やゴールがあり,それを達成するために表現を何度も使うという構造が,児童にとってはあまり意識をせずに表現を使うことになるので,「頭」よりも先に「体」が覚えている感覚になって表現を獲得しやすいのではないかと考える。これが「慣れ親しむ」という状態なのだと私は思う。
③学びを支える利便性のあるもの
私が英語専科を始めた時はまだ児童一人ひとりにタブレット端末が充てられていなかった頃で,児童は黒板に貼ったフラッシュカードや教科書の巻末に付いているカードなどを使って言語活動をしたり,単元の最終タスクで自分や身の回りのことについて伝える際には,ワークシートを使って考えをまとめたりしていた。それがICTが導入されたことで,児童は単元のキーワードやキーフレーズを授業以外の時間でも練習できるようになったし,カードを切らなくてもビンゴゲームやその他の活動をすることができるようになった。また考えをまとめる時は,ICTで作成した思考ツールを使うことで内容を増やしたり省いたり,あるいは伝える順番を変えたりするといった作業をストレスなくできるようになった。
こうしたICTの活用が言語活動の「質」や「量」を高めることにつながっている。ICTで教材を考える際には,「ICTを使う必然性はあるか」という視点を大切にしている。具体的には,ICTを活用することで従来の活動よりも準備や実施にかかる時間を短縮できるか,児童が迷うことなく活動に取り組めるようシンプルで分かりやすい構成になっているか,そして一度の活用で終わるのではなく,くり返し活用しながら楽しんで学ぶことができる教材になっているかを意識している。こうした利便性を備えた教材は,児童が学習内容に集中し,言語活動の充実につながると考えている。
ICTには多くの可能性がある一方で,大切なのは「何を使うか」ではなく,「何を育てる」かである。児童が単元の目標を達成するために必要な活動は何か,その活動をより充実させるためにICTをどのように活用すればよいのかという視点を常にもちながら教材を作成することが重要である。ICTはあくまでも児童の学びを支えるための手段であり,これからも児童が「英語が伝わった」「もっと話したい」と感じられる授業づくりを支える教材づくりを,これからも目指していきたい。