現代は将来の予測が困難な時代であり,その特徴である変動性(Volatility),不確実性(Uncertainty),複雑性(Complexity),曖昧性(Ambiguity)の頭文字をとって“VUCA”の時代とも言われている。このような時代にあって,学校教育においては,文章の意味を正確に理解する読解力,教科等固有の見方・考え方を働かせて自分の頭で考えて表現する力,対話や協働を通じて知識やアイディアを共有し新しい解や納得解を生み出す力などの資質・能力を育成することが求められている。「小学校学習指導要領解説 外国語活動・外国語編」(平成29年告示)では「言葉を通じて他者とコミュニケーションを図り伝え合う力を高めることで,積極的に人や社会と関わり,自己を表現し,他者と共感するなど互いの存在について理解を深め,尊重しようとする態度につながると考えられる。」とある。このように,コミュニケーションを図る素地や基礎となる資質・能力の育成を目指す外国語の学習は,これからの時代に必要となる資質・能力を育成する上で大きな意味をもつものと考える。
そこで,「伝え合う力」に着目して,これまでの私自身の実践を,外国語活動・外国語科での「話すこと[やり取り]」や「話すこと[発表]」の内容を中心に振り返ってみた。その結果,考えや気持ちについて伝えていない情報のみの機械的な発表ややり取りであったり,会話のキャッチボールが続かなかったりするなど,他者と共感したり理解を深めたりする点において課題があった。そこで,「『伝え合う力』を身に付けるにはどのようにしたらよいか。」という視点で,実践を行うことにした。
図1 伝え合う力を高めるための視点
「伝え合う力」について,「小学校学習指導要領解説 外国語活動・外国語編」「小学校学習指導要領解説 国語編」(平成29年告示)を参考に「相手に配慮しながら,言語を通して,自分の考えや気持ちを適切に表現したり,相手の考えや気持ちを適切に理解したりする力」とした。そこで,子供が自分の考えや気持ちを適切に伝えるためには,リアクションや感想などで自分の考えや気持ちを伝えること,相手の考えや気持ちを理解するためには,質問したり確認したりすることができるようになる必要があると考えた。そこで,やり取り名人「あ(アクション)し(質問)か(感想)くん(繰り返し)」と称し,伝え合うための視点を提示し,活用を図ることにした(図1)。
(1) Small Talkによる「あしかくん」の活用
対話の充実を目指すために,帯活動であるSmall Talkで積極的な活用を図った。
図2 Small Talk後の「あしかくん」の振り返り
SmallTalkでの活用を図っていくことで,「あしかくん」を意識しながらコミュニケーションを図ったり習慣付けたりすることができるようにした。また,Small Talkについては,最初は「あしかくん」のそれぞれの回数や対話の回数を振り返ることで定着を図った(図2)。そして,徐々に定着が図られてきたら,Small Talkの内容についてフィードバックする機会を設けることで,「あしかくん」を活用することでやり取りが充実することが実感できるようにした。
(2)「あしかくん」の視点で振り返る中間指導
ア 「あしかくん」を教師が示す明示的指導
「あしかくん」の視点を教師が示す明示的指導を通して,グッドモデルをイメージしながらコミュニケーションを図ることができるようにした。教師が「あしかくん」を活用した発表やAEAとのやり取りを示すことで,イメージをもちながら考えや気持ちを伝え合うことができるようにした。
イ 子供の気付きを大切にする暗示的指導
明示的指導だけではなく,気付きを大切にする暗示的指導も積極的に取り入れることにした。友達の発表について全員で見て,良い点について子供から意見をもらい共有する機会を設定した。教師が提示するだけでなく,子供自身の気付きの機会を設けることで,自身の内容と比較し,自身の内容を振り返ることができるようにした(図3)。
図3 全体共有の場面
(3)「あしかくん」を活用して伝えている実際の子供の姿
【5年 マイヒーローを紹介するスピーチで 「話すこと[発表]」】
【5年 ALTに日本文化を紹介する場面で 「話すこと[やり取り]」】
(4)「あしかくん」を基にした振り返り
図4 動画も保存している振り返りシート
振り返りの際は,記述による振り返りに加えて,動画撮影も行うことで,自分の様子を客観的に評価することができるようにした。動画を通して,言語面とともに,非言語面について,自身の「伝え合うための力」の定着について課題を明確にし,これからの学習へとつなげることができるようにした。言語面について着目する際は,「あしかくん」の視点を示すことで,より互いの考えや気持ちが伝わることができるようにした(図4)。
(5)考察
「あしかくん」を意識した実践を行うことで,子供がコミュニケーションを図る際の語彙量が増えた。それは,「あしかくん」という伝え合うための視点を明確にしたことで,情報のみを伝えていたやり取りから,この四つの視点を意識したやり取りへと高まり,互いの考えや気持ちを伝え合う機会が増えたからではないかと考える。そして,感想やアクションなどを通して,自分の考えを伝えることを意識したり,質問してそれに応じてもらったりすることで,やり取りする楽しさを実感し,会話量が増えたことにつながったのではないかと考える。また,友達の話す内容を共感的に聞くなど,グッドリスナーも増えた。聞く際にも「あしかくん」の視点で聞くことは効果的であることが分かった。
今後は,学習した語彙量がより少ない中学年段階において,伝え合う活動の充実を目指した取組を行っていきたい。
外国語の学習を通して,コミュニケーション活動を充実させることは,学級経営においてもよい影響があることを実感している。今回は「伝え合う力」に着目して実践をしたが,AIが台頭している現代において,言葉を学ぶ意味は何なのか,今一度問い直し,外国語教育が担う意味についても考えていきたい。そして,他者と協働しながら問題を解決できる子供の育成を目指し,日々精進していきたい。