本校は,全校児童28名,1・2年,3・4年,5・6年の3複式学級で構成される小規模校です。学年を超えた関わりが日常的に見られる一方で,教育活動では一人一人の実態に応じた工夫が求められます。英語教育においても,限られた授業時数の中だけで英語に親しませることには難しさがあり,英語の学習を特定の学年や担当者だけのものにするのではなく,学校生活全体の中で自然に位置付けることが大切であると考えてきました。
廊下であいさつを交わす児童
そこで本校では,外国語(活動)の授業に限らず,学校生活の様々な場面で英語に触れる機会を意図的に設けるとともに,学級担任だけでなく全教職員が英語教育に関わる体制づくりを進めています。英語を「特別な教科」としてではなく「日常の中で使われることばの一つ」として捉えられる環境づくりを目指しています。
本実践では,授業以外の場面で行っている取組を中心に紹介します。特別な教材や高度な英語力を必要とせず,本校のような小規模校はもちろん,規模の異なる学校においても,英語教育を学校全体で進める際の一つの参考になれば幸いです。
本校では,英語を「正しく話すこと」だけを目的とするのではなく,英語に親しみ,楽しみながら使うことを大切にしています。英語を通して相手に思いを伝えたり,相手の言葉に反応したりする経験を重ねることで,自然なコミュニケーション力を育むことを目指しています。
さらに,英語を通して人と関わることそのものを楽しめる児童を育てたいと考えています。言葉が十分に分からなくても,身振りや表情,簡単な英語表現を使って関わろうとする姿勢を大切にしています。そのため,英語を使う場面を特別な時間や場所に限定せず,学校生活の中で日常的に英語に触れる機会を設けています。
また,英語教育を特定の教員だけが担うのではなく,学校全体で取り組むことも大切にしています。3複式の学級編成であっても,教職員全員で児童の英語体験を支え,学校全体で学ぶ環境を作ることを意識しています。
① 日常のあいさつと校内放送
日常のあいさつや校内放送の中に英語を取り入れています。廊下や職員室でのあいさつ,教室での会話など,様々な場面で英語によるやりとりを行っています。また,校内放送も,可能な範囲で英語で行っています。
繰り返し耳にすることで児童は英語の音や表現に慣れ,自然に使う意欲を見せています。
② イングリッシュ・デー
毎週火曜日と水曜日を「イングリッシュ・デー」とし,テーマに沿った簡単な英会話を行う日としています。本校にはALT(外国語指導助手)が週1回来校し,教職員と協力して児童の英語学習を支えています。
会話内容は,あいさつや学校生活,好きなものなど身近な話題が中心です。正確さより「伝えようとする気持ち」を重視し,英語で話す心理的ハードルを下げることをねらっています。
③ イングリッシュ・チャレンジ・タイム
月1回,業間の長い休み時間に全校児童が参加する英語活動を行っています。ゲームやコミュニケーション活動を通して英語を楽しむ時間です。
3複式の学級編成のため,学年を超えた活動では上級生が下級生を自然に支え,児童同士の活発な関わりも生まれています。英語を使った活動を「楽しいもの」として経験することが,英語活用への前向きな気持ちにつながっています。
イングリッシュ・チャレンジ・タイムでゲームを楽しむ児童
④ イングリッシュ・コーナー
校内に「イングリッシュ・コーナー」を設置し,児童が自分のペースで英語に親しめる環境を整えています。
毎週,英語のクイズやワークシート(ワードサーチなど)を用意し,自由に挑戦できるようにしています。
主体的に取り組むことで,英語に対する関心を高め,学ぶ姿勢を育てています。
⑤ 羽田イングリッシュ・チャレンジ・デー
年に数回,市内のALTを集めて行う特別イベントです。8名のALTが来校し,児童と一緒に活動します。当日は,英語活動だけでなく,ALTと給食を共にしながら英語で交流する時間も設けています。多くのALTと関わることで,児童は様々な英語表現に触れ,コミュニケーションの楽しさを実感しています。
⑥ 校外での英語体験
11月には,全校英語研修として,福島県にあるブリティッシュ・ヒルズを訪れ,一日を英語環境の中で過ごします。非日常の環境で英語を使う必然性を感じながら活動し,学校で学んだ英語が実際に使えるものであることを実感します。
⑦ 教職員向けミニ・レッスン
火曜日のALT来校日に,15分程度の教職員向けミニ・レッスンを行っています。教職員が英語に親しむことで,児童への声かけや日常のやりとりにも英語を自然に取り入れられるようになります。英語教育を全教職員で支える体制づくりにもつながります。
「羽田イングリッシュ・チャレンジ・デー」で,ALTとの交流を楽しむ児童
本校の児童は朗らかで人との関わりを楽しむ姿が多く見られますが,英語に対しては,当初抵抗感をもつ児童も少なくありませんでした。しかし,日常生活での教職員からの声かけや様々な活動を重ねることで,英語であいさつや会話をする姿が増えました。低学年の児童に高学年の児童が英語表現を教えるなど,学年を超えた関わりも自然に生まれています。授業でも,間違いを気にせず発話しようとする意欲が高まり,多くの4年生以上の児童が英語検定5級に挑戦し合格しました。
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| ブリティッシュ・ヒルズでの全校英語研修 | イングリッシュ・コーナーでクイズに取り組む児童 |
教職員数が少ない本校では,英語教育を特定担当者だけに任せるのではなく,学校全体で無理なく取り組める形を整えることを意識しています。全教職員で共通理解を図り,児童の学びを支える体制をつくることを大切にしています。
一方,活動の準備や運営の負担も課題です。管理職も積極的に関わりながら,取組を継続していきたいと思います。
本校では,授業だけでなく学校生活全体の中で英語に触れる経験を積み重ねることを大切にしてきました。特別な取組ではありませんが,日常に英語を位置付けることで,児童が英語を身近に感じ自然に使える環境が整ってきたと感じています。
3複式の小規模校であっても,教職員全員で関わることで英語に親しむ学校文化をつくることができます。
5・6年生は,啓林館の小学校外国語教科書『Blue Sky』 を使用しており,授業で学習した内容を授業外でも活用しています。また,啓林館ホームページ「小学校英語サイト」や KEY magazine も参考に,児童にとって魅力的な活動を工夫しています。
本校の取組を進める上で大切にしてきたこと
・学校生活の中で英語に触れる機会を日常的に設けること
・英語を「正しく話す」ことより「伝えようとする気持ち」を大切にすること
・英語教育を特定教員だけでなく全教職員で支える体制をつくること
こうした小さな取組の積み重ねが,児童が自然に英語に親しむ環境づくりにつながっています。
これからも,児童も教職員も共に英語を楽しみながら,学校の実態に応じた英語教育を継続していきたいと考えています。