英語で伝え合う楽しさを実感できる小学校外国語科の指導
宮崎市立大塚小学校 藤原 綾子
1.はじめに
- 本校は市内の中心部に近く,児童数も700人を超える大規模校である。英語教育推進加配教員などを経て,現在は外国語専科加配教員として5年生,6年生の外国語科,3年生の外国語活動を指導している。本校に赴任してまだ日が浅いということもあり,本稿では前任校等の実践を含めて課題の多い実践であるが,何かのお役に立てればと思い紹介させていただきたい。
2.本校高学年(外国語科)の課題から
- 高学年になると,間違いを恐れるあまり外国語を話すことに恥ずかしさや抵抗を感じる児童も少なくない。そこで,年度初めの授業開きに合言葉を決めて児童と共有している。今年度は,「間違いOKドンドンチャレンジ,助け合う。」と決めた。このようなキャッチフレーズがあることで,なんとなく緊張がほぐれたりチーム力が喚起されたりするものである。また,「情意フィルタ―仮設」と言って,外国語を学ぶ際に緊張感があってはインプットが効果的に行われないという研究結果があると学んだ。これは,現職で宮崎大学の英語科で学び直しをさせていただいた期間に影浦 攻先生の研究室の書籍などから学ばせていただき,今でも意識して指導している。また,スモールトーク本来の目的は,既習表現の定着と会話の継続であるが,友達と楽しく英語でやり取りをすることで,緊張もほぐれ,助け合い学び合いながら,楽しく学習をする構えができると考える。以下で具体的な実践事例を紹介したい。
①児童を本気にさせる単元構成の工夫
- 6年生の教科書におすすめの国を紹介する単元がある。いつも人気の国は大体決まっていて,内容も似たようなものになりがちであったので,導入を工夫することにした。まず,教師が,ツバルという児童にあまり知られていない国についてプレゼンテーションを行った。次に,その国のよさや問題点をタブレットで詳しく調べる活動を設けた。そうすることで,地球環境に目を向け,SDGsに関心を持たせる狙いもあり,世界には様々な文化や素晴らしい歴史があることだけでなく苦境に立たされていながらも素晴らしい文化を有している国があることに気づかせることができた。結果,児童はあまり知られていないけれど,ぜひ,おススメしたい国を紹介することができた。
②ALTを活用しつくす 結果的に児童もALTも満足!
- ALTが長期の休みを取ることになり,どうしようかと考えた。市教委にお願いをして毎回違うALTを派遣してもらうことができた。児童はそれぞれの国の文化を知り,各国の英語のアクセントを体感することができ,とても楽しく学び合うことができた。このように,行政と繋がることで,大きなサポートを受け,ピンチをチャンスにすることができる。
③チーム友達 友達作戦
- やり取りをしていると,いつも同じ友達とばかり会話をしている児童がいる。指導する立場としては,誰とでも会話を楽しむ児童を育てたいものである。そこで,「チーム友達作戦」を通して,会話をした友達のメモをとりながらお互いのことをよく知ってもらおうと考えた。好きなものや誕生日など,相手に応じた話題を見つけ,やり取りをしてメモするだけだが,児童には全員とやり取りする機会が与えられているので,年間を通して,友達作戦を楽しんでいる。
④見方考え方を鍛える
- 英語のスキルをまだ多く持たないであろう小学生の段階だからこそ,方略的なコミュニケーションが大切になってくると思われる。例をあげるならば,ジェスチャーや上手な言いかえなどである。また,児童には適当にわかったふりをするのではなく,もう一度教えてと食い下がるくらいのタフさを育てたい。
⑤中間指導は教師の腕の見せ所
- 授業研究会に参加した時のこと,ある先生から話しかけられた。聞けば中間指導に自信がないということであった。私自身も自信があるわけではないが,場数は踏んでいる。目的ごとにいくつかの例をお伝えしたことを覚えている。よく,指導案に中間指導のタイミングを明記している先生方が多いように思われるが,そればかりではなく,即興的なその場に応じた中間指導がとても重要であると考える。ある時は計画的に,ある時はその場に応じた指導を行いながら単元のゴールを目指したいものである。まさに,中間指導は教師の腕の見せ所である。
⑥進化トークしてる?
- 授業中,楽しそうにやり取りをしている児童を観察しながら,上手になってきたなあと思っていた。ところが,あることに気づいた私は,冷や汗がでるほど猛省した。ずっと上手だなあと思っていた児童は,誰と話すときでも同じことしか言っておらず,相手意識を持てないままだったのである。私はそのことに気づかず申し訳なく思ったことを覚えている。それ以来,私は児童一人一人が学び合い,進化し続ける様子を見届けることを怠らないように心掛けている。そして,中間指導では「進化トークしてる?」と尋ね,誰のどんな表現で進化したのかを共有している。
⑦オリジナルのポケットを膨らまそう
- 数年かけて児童は多くの単語やフレーズを学ぶ。出会った単語や使いたいフレーズをロイロノートに入れて,好きな時に使えるようにしておくことは,児童のコミュニケーションの力をつける効果的な方法である。それぞれが自分のお気に入りの表現を少しずつ増やしていけるように工夫したい。
⑧本物の学びの場を用意する
- 以前,ある学校に兼務していたことがあり,そこはとても自然豊かな学校であった。兼務校との英語でのやり取りがとても楽しかったことを覚えている。6年生同士が中学校で頑張りたいことや将来の夢を英語で書いて伝え合うだけであるが,本当に心温まる交流が生まれた。学んだ英語表現を使って心を込めて書いた手紙を大切に持ち帰った姿を覚えている。目的をもって書くこと,目的をもって読むことで心温まる経験ができる。
また,自然の豊かさを生かして,町の活性化を図ろうと,まちづくり協議会の方の力も借りてランチを考案し,回覧板でその記事を掲載していただいたことがあった。児童にとって,外国の方も最近はよく見かけるようになったので,食材を英語で紹介する練習なども行い,地域参画の良い機会となった。
⑨目的をもって書く
- 上述したように,目的を持って書いたり読んだりするということは大切なことである。書いたものを読み合う時間は,児童にとって楽しい時間である。読むことと書くことは適切に関連付けて指導したい。
⑩中学校の先生と仲良くなる
- 堅苦しい形式ばかりの小中連携ではなく,中学校の先生と顔見知りになって挨拶し合う仲になっていると,中学校の情報や取り組みなどを教えてもらえたり,逆に小学校の取り組みや指導について興味を持ってもらえたりする。一つの事例として,中学校の先生にお願いすると,小学校を卒業する直前の6年生に向けて,動画で歓迎のメッセージ(ウエルカムメッセージ)を送ってくれたことがあり,児童がとても喜んでいた。年度末には,児童の作品などを持って簡単な引継ぎもさせてもらっている。小中の連携は無理なく,こつこつでいきたい。
終わりに
- 今回拙い,課題の多い実践を紹介させていただいた。目まぐるしく変化する世界に,自分がついていけるのか不安になるが,今回自分の取り組みを整理する機会をいただけたことで,また,新たな学びの一歩が踏み出せそうである。
この実践例は課題の多いものであるが,自分ならこうするなどと皆様のインスピレーションを刺激するものになるとありがたい。