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数学

活用力を育てる数学指導
~数学的な考え方を明確にする活動を通して~

愛知県名古屋市立大曽根中学校 高橋 寿典

1.はじめに

数学の学習場面において,問題解決に数学的な考え方を用いることができる力,すなわち,活用力を育てる必要があると考える。

活用力は,既習内容を用いて問題解決する際に発揮される。そして,数値を変更したような類似問題よりも,異なる場面で既習内容を用いるときに活用力がより発揮されると考える。さらに,「何をどのように用いているのか」など,問題解決の基となっている数学的な考え方を生徒に意識させることが活用力を育てるために必要であると考える。

そこで,解決方法の発想の着眼点を明確にする【発想の着眼点を明確にする場面】,解決方法の基となっている数学的な考え方を明確にする【数学的な考え方を明確にする場面】,さらに,明確になった数学的な考え方を活用する問題を提示し解決させる【数学的な考え方を活用する場面】を学習過程の中に位置付ける。なお,今回の実践では,活動の中に,どのような問題にどのような数学的な考え方が用いられたのかを記録する「活用図」を取り入れる。これらにより,活用力を育てる数学指導の実現を目指すことにした。

2.活用図の形式

活用図は右図のような形式にした。

  • ヒントには,提示問題を解決する上で,解決の糸口になる内容を全体で確認して記述をする。
  • 発想の着眼点(アイデア)には,提示問題を解決後に「どうしてそのように解こうと思ったのですか」と発問することで,その内容を記述する。
  • 問題の特徴には,提示問題がどのような問題なのかを全体で確認して記述をする。
  • 考え方には,発想の着眼点を比較・検討させることで,数学的な考え方として記述する。
活用図の形式

活用図を完成させた後に,解決方法の基となる数学的な考え方は同じであるが,場面が提示問題とは異なる活用問題を提示し,完成した活用図を確認しながら解決に取り組ませる。そうすることで,既習内容が様々な場面の問題解決に用いることができることを実感させる。

3.授業実践

  • T: まず何をしようと思いますか。
  • S: 速さを調べてみようと思います。
  • S: 傾きを調べてみようと思います。
  • S: 変化の割合を調べてみようと思います。
  • T: それでは,自分で考えてみよう。
ヒントとして活用図に記述される。

≪生徒の解決方法≫

店に着く前の速さ 3÷20=20分の3 同じ速さになる。
  店を出たあとの速さ 3÷20=20分の3
店に着く前のグラフの傾きは 20分の3 で,出たあとのグラフの傾きも 20分の3 で同じになる。

店に着く前の変化の割合を調べると

店を出たあとの変化の割合を調べると

よって,同じになる。

発想の着眼点(アイデア)として活用図に記述される。

【数学的な考え方を明確にする場面】

問題の特徴として活用図に記述される。

考え方として活用図に記述される。

≪完成した活用図の例≫

活用図

【数学的な考え方を活用する場面】

T:活用図を確認してから次の問題を解こう。

【活用問題】
Aさんは家を出てから2500m離れた図書館まで1時間で行きました。途中,疲れたので公園で20分間休憩しました。家から公園までは分速50m,公園から図書館までは分速150mで歩きました。家から公園までの距離を求めなさい。

≪生徒の解決方法≫

4.おわりに