中学校の教科書・教材|知が啓く。教科書の啓林館
数学

自主・自律を育む授業実践 ~生徒が主役の自由進度学習~

(元)東大阪市立布施中学校 中西 孝仁

1.はじめに

本校の最上位目標である「自主・自律」の達成に向け、学力向上部、生徒指導部、人権教育部で連携し、すべての教育活動を行っている。全員担任制、単元テスト・到達度テスト、ルールメイキング導入と学校改革にも取り組み、学級活動、生徒会活動、部活動など、どの場面においても生徒の活躍が見られる。授業においても、1人1台端末を活用することで個別最適な学びと協働的な学びの一体化の充実を目指している。その1つに自己調整力を育む自由進度学習がある。

2.ねらい

各自がワーク、ロイロ演習問題、Qubena、参考書、プリント等を用いて自身の進捗状況や習熟度に応じて選択することができる。自らで計画を立て、自己調整力をつけることができる。
複数の解法がある問題や、他者への説明が求められる問題を取り入れることで、自身の課題を明確にすることができる。
他者に説明することによって理解を深めるとともに、さまざまな考え方や視点を理解できる。

3.1人1台端末を用いたクラウドの活用

Google ClassroomおよびGoogle スプレッドシートを活用し、自身の学習状況を可視化・把握する。
クラス全体で共有されたスプレッドシートを他者参照できることから、同じ課題に取り組んでいたり、既に課題解決したクラスメイトを確認したりしながら、自発的に助言を求めることで、主体的に学ぶ姿勢を養う。

(学びの進め方の提示)

(Can Do リスト)

(進捗状況を教員も生徒も一緒に把握)

(日毎の振り返りシート)

4.活用したICT機器・デジタル教材・コンテンツ等

Google スプレッドシート、Google Classroom、Qubena、ロイロノート・スクール

5.授業の展開

学習の流れ 主な学習活動と内容 ICT活用のポイント・工夫
導入
(5分)
本時の学習課題:自由進度学習のため、個に応じて取り組む課題はさまざまとなる。
  • 前時の学習を、Googleスプレッドシートをもとに確認する。
  • 本時の目標・めあての設定を生徒自身で行い、それらを達成するために、本時では何に取り組むのかを記入する。
【写真1】
  • スプレッドシートをもとに前時までの学習状況を確認する。

  • 残りの総授業時間と進捗状況を照らし合わせて、どのように本時の学習を進めていくのかスプレッドシートに記入する。
展開
(40分)
  • 教科書、プリント、ワーク、Qubena等をもとに、自身で設定した目標・めあての達成へ向けて学びを進める。教科書の問題を解き進める生徒もいれば、プリントを解く生徒、ワークやQubenaに取り組む生徒など、自身の習熟度や進捗状況に応じて学び方を選択している。
【写真2】【写真3】
  • 学び方を自己選択する。

  • 電子黒板等を活用しながら、教員から説明を受けたい生徒に対しては、教卓前に来て個別指導を行う。
まとめ
(5分)
  • 授業の最初に設定した目標がどれぐらい達成できたのか、1時間の学習の振り返り (何が理解できたか、どのように学習することができたか、次回どうするのか)をスプレッドシートへ記入する。
  • スプレッドシートはクラウド上で全体共有しているため、他者参照が可能である。
  • 前回までの自身の振り返りや教員からの評価を参照しながら、他者の表現方法や進捗状況を確認できる。

6.自分で設定しためあてや進捗状況等に応じて、各自が学びを進める様子

【写真1】

【写真2】

【写真3】

7.児童・生徒の反応や変容

スプレッドシートを全体で共有したうえで、誰とどのように学ぶかを常に自己選択しているため、自己調整力が身につき、様々な学び方で学習を進める姿が見られるようになった。子どもたちは、これまでのコンテンツベースの学習ではなく、コンピテンシー(資質・能力)を育成する学びが身についてきており、自ら学びを進める生徒が増えてきている。

8.参考にして欲しいポイント

「学習の流れ」を示すことで、自ら学習を進める生徒が増えた。
クラウド活用することで、全員の学習状況を教員も確認することができ、必要な生徒に、必要な支援を行うことが出来ている。

9.自由進度学習における他の活動

(1)生徒による解説動画づくり

(2)大阪府チャレンジテストの解説と分析

(3)模擬テスト作成