中学校の教科書・教材|知が啓く。教科書の啓林館
数学

データに基づいた思考力・判断力・表現力の育成
~第1学年「データの活用」の指導を通して~

碧南市立西端中学校 上野 智大

1.はじめに

令和元年に発表されたGIGAスクール構想に伴い,授業の中でもタブレット端末を導入する機会が増えた。本学年の生徒は,ICT機器を使用することには意欲的で,学級活動の際,タブレットを使ってルールを説明したり,発表したりするなど,ICT機器を使って自分の考えを表現しようとする姿が見受けられる。しかし,数学的根拠に基づいて,事象を説明することには苦手意識を抱いており,挙手・発言する生徒が少なくなってしまう。また,問題文の中から必要な情報を読み取ることができず,どのように解けばよいかわからなくなってしまう姿も多く見られる。
全国学力・学習状況調査等の結果からも,「数学的な表現を用いた理由の説明」に課題が見られる。特に中学校第1学年では,一部の学習内容が小学校から中学校に移行する中,「数学を学ぶ楽しさ」や,「実社会との関連」に対して諸外国と比べると低い状況にあり,数学の学習に対し肯定的な回答をする生徒の割合が低下する傾向にある。
学習指導要領では,主として日常生活や社会の事象にかかわる過程と,数学の事象にかかわる過程の二つの問題発見・解決の過程を重視しており,「思考力,判断力,表現力」を身に付けるのにあたり,多くの場面でこの二つの過程が活動を通して実現されるよう示されている。
以上のことから,生徒には確定的な答えを導くことが困難な事柄についても,数学的根拠をもとにして,自分の考えを表現してほしいと考え,本研究の主題を「データを基に,自分の考えを表現することのできる生徒の育成」と設定した。

2.実践事例

(1)単元 データの活用

(2)指導計画(8時間完了)

学習課題 授業内容
卒業生を送る会で使う紙ふぶきをつくろう
  • 卒業生を送る会に向けて,最も滞空時間の長い紙ふぶきの形や大きさについて予想し,グループで話し合う。
  • 1,2個ほど候補を決めて,個人で数回測定し,次時にグループで測定できるようにする。
紙ふぶきの滞空時間を測定しよう
  • 前時で予想した紙ふぶきを作成し,実際に滞空時間を50回測定する。
  • 測定する際の,統一すべき条件について確認する。
測定したデータを表にまとめよう
  • 代表値について復習する。
  • 測定したデータを分かりやすくまとめるために,度数分布表について学習する。
測定したデータをグラフに表そう
  • 度数分布表をもとに,ヒストグラムや度数分布多角形について学習する。
  • ヒストグラム,度数分布多角形のそれぞれのよさについて考える。
紙ふぶきの形や大きさをもう一度考えよう
  • 測定したデータをもとに,更に滞空時間の長い紙ふぶきの形や大きさについて考え,40回測定する。
  • 前回測定したデータと比較するために,相対度数について学習する。
  • 他グループの測定結果を見ることで,どの班の紙ふぶきが一番ふさわしいか個人追究する。
データをもとにして,1A(クラス)のベスト紙ふぶきを決めよう(本時)
  • 各班のデータをもとに,どの班の紙ふぶきが,卒業生を送る会に使う紙ふぶきとしてふさわしいかグループで考える。
グループ後半の発表を聞き,考察してみよう
  • グループの考察について,どの代表値が根拠としてふさわしいか,分析した結果から得られる結論が妥当かなどを話し合う。
ものごとの起こりやすさについて考えよう
  • 相対度数のばらつきや変化について読み取り,その事柄のおこる確率について学ぶ。

(3)実践した授業

時間 生徒の学習活動と内容 教師の支援・留意点
1 本時の学習課題を知る。

データをもとにして,1Aのベスト紙ふぶきを決めよう

5分

2 各班のまとめたデータを見て,どの班の紙ふぶきが一番ふさわしいか,グループになって,考えたことを発表し,考えを共有する。

  • 最大値が一番大きい班がよい。
  • 平均値が最も大きい班の紙ふぶきがよいと思う。
  • 平均よりも滞空時間の長い回数が一番多い,紙ふぶきがふさわしいと思う。
  • 紙ふぶきを選んだ根拠が明確になるよう,各班のどのデータに着目したか示すよう指導する。
  • 発言の進まないグループには,話し合いが活発になるように,紙ふぶきの形による度数分布多角形の山の様子や,代表値のちがいについてグループで再検討させる。
15分

3 グループ全体の意見をタブレット端末にまとめる。

  • 複数の生徒が編集することができるようにするために,タブレット端末の「Sky Menu」にある「発表ノート」の機能を使用させる。
  • グループの意見をわかりやすく説明できるようにするために,まとめたデータの写真を使ったり,話し合った内容を整理させたりする。
30分

4 グループの考えを発表する。

40分

5 全体の意見をまとめて,1Aのベスト紙ふぶきを決定する。

  • 滞空時間の平均が一番長い○班の紙ふぶきが一番よい。
  • 滞空時間の長いデータの最も多い△班の紙ふぶきにしよう。

3.授業の実際

本時では,まず第5時で作成した「発表ノート」をもとに,グループで発表した。「発表ノート」を作成したことで,生徒が自分の考えに自信をもって発表する様子がみられた。発表を聞く生徒も,図を見ながら発表を聞くことで,発表する生徒の意見を十分に理解することができており,「発表ノート」を使用したことの有用性を感じることができた。発表する生徒も,「4班の3.7cm×7.5cmの長方形が,一番長い時間で安定していて,どの度数の滞空時間も長くていいと思った。」などと,タブレットを見せながら話すことができた。
次に,グループで1つの「発表ノート」を作成するために,タブレット端末内のグループ機能の使用方法について説明した。どの班でも,誰の「発表ノート」をもとに編集をするかや,発表内容などについて,「最大値」という言葉を付け加えて説明することを話し合うなど,活発に意見交換ができていた【資料1】。

グループでまとめた意見を,クラス全体で発表する時間では,「4班の長方形がいいと思います。最大値が,クラスで一番大きく,平均値も他の班に比べて一番大きいです。安定して長いので,運任せにならないためいいと思いました。」と,数学的根拠だけでなく,代表値が表すデータの意味について触れながら発表する様子がみられた。発表の結果,8班中7班が,「4班の3.7cm×7.5cmの長方形」が最も滞空時間の長い紙ふぶきであるという結論に至っており,クラスのベスト紙ふぶきについて,全員が納得することができた。最後に,別のクラスのベスト紙ふぶきのデータ【資料2】【資料3】を,タブレット端末を使って配布し,どちらのクラスの紙ふぶきがよいか考える時間を設けた。「最大値が大きく,50回中2回も最大値が出ているから,B組の方がいい。」「最大値は大きいけど,A組の方が全体の記録がいい。」など,グループ内で様々な意見が飛び交った。生徒Aは,「A組の方が良いと思っていて,階級の高い数値より低い数値に注目すると,B組の方が低い階級に度数が多いから,記録が安定していない。」とグループの中で意見を話した。代表値がほとんど同じデータを比べる時間を設けることで,ヒストグラムや度数分布多角形の形から,データの分布の様子について考えることができた。クラス内のデータだけでは,記録の良いデータが明らかであったため,この時間を設けたことは有効であったと感じた。全体発表では,どの生徒からも,「データの分布から,自分たちのクラスの方が滞空時間の低い記録が少なく,安定している。」といった意見が出てきた。

4.成果と今後の課題

(1)研究の成果

(2)今後の課題