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数学

第2学年「連立方程式」-ICTを活用した授業の実践と発展-

東大阪市立長栄中学校 政岡 晃平

1.はじめに

昨年,GIGAスクール構想に伴い,生徒に1人1台タブレット端末(iPad)を貸与され,個別最適化された学びや,互いに高め合う学びとなるような,授業が必要とされた。

学習到達度調査(PISA2015)の結果や,新学習指導要領の改訂に伴い,主体的・対話的で深い学びの視点から,学習評価の新たな観点も示された。

これまでの自分の授業展開では,新時代を生きる生徒たちに,必要な「生きる力」を育むことは難しいと考え,昨年度,タブレット端末を使用した授業に踏み込んだ。

毎回の授業でタブレット端末のロイロノート・スクールを使用し,授業を展開した。自分自身知らないことの挑戦でもあり,最初は慣れない指導に戸惑い,焦りに感じた。しかし,通年使ってみて良かった点が多く感じ取れた。しかし,まだまだ,改善が必要な点も同じくらい見えてきた。それを踏まえて,今年度では,良い点を残し,改善を図った授業の展開と,その成果と今後の展望を伝えていく。

『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 数学編』より

第4章 指導計画の作成と内容の取扱い

●1 指導計画作成上の配慮事項

(1)主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善

(1)単元など内容や時間のまとまりを見通して,その中で育む資質・能力の育成に向けて,数学的活動を通して,生徒の主体的・対話的で深い学びの実現を図るようにすること。その際,数学的な見方・考え方を働かせながら,日常の事象や社会の事象を数理的に捉え,数学の問題を見いだし,問題を自立的,協働的に解決し,学習の過程を振り返り,概念を形成するなどの学習の充実を図ること。

「主体的・対話的で深い学び」の授業展開を考えるときに,生徒の「問い」をどのように引き出すか,その問いを学級全体で解決し,さらに新たな問いに向かう,このような問いの連続が主体的・対話的に深く学ぶ生徒の姿といえる。

授業作りにあたっては,生徒たちの思考を深める発言を促したり,気づいていない視点を提示したりするなど,ファシリテーターとしての役割が求められる。主体的に関わりたくなるような問いかけや教材と提示の仕方などを工夫し,生徒の多様な考えを引き出しながら課題を焦点化していき,生徒の言葉の中に働いている見方・考え方を価値づけ,学級全体に広めていくことが大切になる。このような学びを継続していくことで,粘り強く考えようとする態度も育まれていくと考えている。

授業展開で,大切にしたいのは,ICTを活用した「主体的・対話的で深い学び」であり,誰一人取り残されない「個別最適な学び」と生徒の個性を生かす「協働的な学び」である。そのため,授業の見直しや修正は,毎年必要だと考えている。

2.昨年度の授業展開について

3.昨年度の実践から今年度の発展

<昨年度の良かった点>

<昨年度の改善が必要だと感じた点>

4.今年度の授業展開について

【単元】

2章 連立方程式 1節 連立方程式 1連立方程式とその解,2連立方程式の解き方

【本時の目標】

連立方程式の必要性を理解し,簡単な連立方程式を解くことができる。

【授業展開】

(1)前時の授業で,本時の宿題カードの提示を行う(授業の予習・AIドリルQubenaを10分以上行う)。

(2)前回の復習を生徒のノートを使用して行う。

(3)黒板にプロジェクターで投影し,ロイロノート・スクールでめあての提示(生徒はノートを書く)。

(4)導入の問題を考える(個人活動)。

『啓林館「未来へひろがる数学2」P39 ひろげよう』より
鉛筆3本とノート1冊の代金は250円,鉛筆1本とノート1冊の代金は150円です。
このとき,鉛筆1本とノート1冊の値段は,それぞれいくらでしょうか。

(5)生徒の挙手で,考えを発表する(プロジェクターに生徒の考え方を書き込む)。

⇒鉛筆1本を 本とノート1冊の値段 本として方程式を作る考え方だけでなく,鉛筆2本で100円となる考えを引き出すよう支援を行う。

(6)説明を黒板に板書し,生徒はノートを書く。

(7)問題をプロジェクターに提示する。

(8)生徒はまず個人で考える,その後,3・4人班を作り,その班で教え合いを行う。

⇒わからない場合は,同じ班の生徒に聞く。聞かれた生徒は,その生徒がわかるまで,工夫し,粘り強く教える。教師はその様子を観察し評価する(主体的に学習に取り組む態度の観点)。

(9)解説は,生徒が黒板を使用し,説明を行う(班で協力し2人で解説も可)。

⇒解説を行う生徒には「では,○○先生解説お願いします」と伝える。

⇒解説を聞いた生徒は,わからない場合に質問をして,解説している生徒が答える。

(10)授業の最後はノート学習をタブレッド端末のカメラで写真を撮り,ロイロノート・スクールの提出箱に送る。

(11)振り返りを記入する(項目は5つ)。

[問題1] 授業の内容は理解出来ましたか?

[問題2] 友だちとの交流で,自分の学びは深まりましたか?

[問題3] 今日の自分の授業の取り組みの状況はA~Eのどれですか?

[問題4] 上の質問(A~E)を選んだ理由を書きましょう。

[問題5] また,どうすれば満点になると思いますか?

5.成果と今後の展望

≪大切にしていること≫

昨年度は,タブレット端末(iPad)をとにかく使うことにシフトを置いていたが,今年度は,良い部分は残し,改善を図った。

私自身が「授業の中で大切にしていること」として,授業始めに必ず伝えていることがある。「授業を通じて,認め合い,良い集団を作ること」である。コロナ渦にある今の中学生は,様々な活動が制限され,関わることが少なくなってしまっている。クラスメイトの名前も知らないなんてこともあるほどに,人と関わることに不安に感じている生徒もいる。そんな中では,良い集団は生まれづらい。

その為にまず,相手を知り,出来る範囲で関わりを普段の授業から作ることは,とても大切だと考えている。昨年度では,自由に教え合う活動から,4人班での活動に変更した。目の前にわかる人がいて,わからない生徒を放っておかない環境を作り,自分なりに工夫した説明を苦労しながらも説明する姿は,それぞれの生徒にとって最適な学びとなる。

≪成果≫

今年度は,問題の解説や説明を生徒が先生となり,黒板を使用し,自由に解説を行っている。生徒には年度初めに,「2年生の1年間の中で1回先生になってみよう!」と目標設定を行った。

驚くことに,1学期で,学年のほとんどの生徒が前で先生になることが出来た。その中には,前に出て言葉に詰まる生徒もいれば,声が小さくなってしまう生徒もいる。それを誰一人遮らず,みんなで見守り,時には支援を行う生徒もいて,優しさに溢れる授業が出来たこともあった。

時間がかかって,計画通りにいかない授業はよくあるが,昨年度には出来なかった授業を展開が出来たと感じている。

また,今年度は,ノートによる指導を行っているが,これには,試験が現在,紙での実施だということが大きい。また,個別に整理されたノートを共有することで,ノートを整理するのが苦手な生徒には,良い見本となる。また,生徒のノートを復習と使用し保護者から直々に,「数学が苦手だという子どもが自分のノートを先生に褒めてもらった。」と連絡を頂いたことがある。意識した訳ではなかったが,結果,生徒を認める活動に繋がっている。繰り返し,毎回別の生徒を紹介していくことで,自分の学びを整理するといったような学習の手助けになっている。

≪今後の展望≫

今後は,タブレット端末による試験も行われていくことも想定して,時代に合わせた学習が必要だと考えている。また,数学において,計算問題などの反復練習は,紙に書くことは大切である。

クラスメイトと協働し,解答を導くことや,表やグラフなどは,タブレット端末は便利なので,単元ごとに使い分けが必要だと考えている。

また,今後の展望としては,ノートにスペースを作り,それにデジタルで作成した表やグラフのページを保存したノートを張り付けるなど,アナログとデジタルのハイブリッドなノートの作成を考えている。

<引用・参考文献>