中学校の教科書・教材|知が啓く。教科書の啓林館
英語

生徒の学びを深め,発信力を高める指導の工夫

中野区立明和中学校 大竹 希依子

1.はじめに

新たな教育振興基本計画において,次期計画のコンセプトとして2040年以降の社会を見据えた持続可能な社会の作り手の育成が掲げられています。「将来の予測が困難な時代において,未来に向けて自らが社会の作り手となり,問題解決などを通じて,(中略)Society5.0で活躍する,主体性,リーダーシップ,創造力,課題発見・解決力,論理的思考力,表現力,チームワークを備えた人材の育成」が我々教員に求められています。予測が出来ないこれからの社会を生きるうえで,現在の生徒が身に付けるべきとされる力は非常に多く多岐にわたっています。日本のみならず,世界に目を向けても様々な課題や困難を抱えており,解決法はおろかどう考えていけばよいのか難しい問題もたくさんあります。そのような社会をこれから主体的に生きていく力をつけられるよう,授業の中で主体的に学習に取り組み,クラス全体で学びを深めていくことが重要であると私は考えています。

2.指導計画にあたって

単元の指導計画を立てる際には,単元のゴールから考え,その後一単位時間の授業の中でどのように目標を達成していくかを計画していきます。単元のゴールは具体的に生徒がどのような発信をするのかを予想し,書き出してみます。教科書の題材によっては,クラスで考えさせたい課題を設定するので,生徒の意見が偏りそうな場合は,異なった側面からの意見や情報を事前に用意しておくこともあります。授業の中で「何を」「どのように」学び合いたいのか,目標を見据え計画を立てることを大事にしています。

3.授業実践

「BLUE SKY English Course1 Unit10 Plastic Waste」の単元では,海洋プラスティックごみについて学習します。単元の始めでは,その問題点について理解を深め,中盤では具体的な解決策を調べたり考えさせたりしました。生徒同士の発信を通して,さらに,単元の後半ではその解決策を実際に実行する上で課題はないのか,何が必要なのかについて意見を述べたり疑問点をやりとりしたりと学びを深めていきました。教科書の中にもその解決策として,”First, don’t litter. Second, use eco-friendly materials such as bioplastic. Third, use recycled products.” というヒントがあるので,そこから3Rsについて紹介したり,その紹介を聞いた生徒が5Rsについて発表する等学習が深まっていきました。では実際に5Rsを実践するためにはどうしたらよいのかという問いでは,解決策は理解しているが実際に行動に移すとなると難しく腰が上がらないという意見を踏まえて,”All the schools and companies must have a cleanup day three times a year.” という意見や”We must put plastic bottles in the recycle box and then we can get some money. I want to make this system around Japan.”という意見も出ました。

意見を述べる際には,写真やグラフを用意して,クラスメイトに分かりやすく伝える工夫をしたり,質問や疑問点が出た場合は黒板を使って補足説明を加えるなど生徒によって異なった工夫が見られます。自分の考えやアイディアが,クラスメイトの学びになったり,考えを再度まとめるときに取り入れられたり,また興味を持って聞いてもらえること,そして質問やコメントがもらえることが生徒も嬉しいようで,工夫をしながら自分の考えを発信しています。

生徒の学びを深めるには,主体的そして対話的な活動を授業に取り入れることが不可欠ですが,すぐに自分の言いたいことや相手に質問したいことを即興で英語で表現できる力を身に付けている生徒はそんなに多くはありません。1年生の始めから,学習・練習の場を設けコツコツと力を付けていく必要があります。

例えば,同じく「BLUE SKY English Course1 Project 2 好きな人や尊敬する人を紹介しよう」というプロジェクトでは,好きな人や尊敬する人についてクラスメイトに紹介するだけでなく,やりとりを通して,相手の好きな人について質問したりコメントしたりという場も設けました。最初は,英語で何と表現したら良いか分からないことも,回数を重ねる内に身に付いていき,即興で表現できることも徐々にですが増えていきます。このような活動を積み重ねて,生徒同士やりとりできる力を継続して付けていきます。

4.おわりに

英語学習に終わりはなく,既習表現であっても間違いが見られたり,即興で表現できなかったり,身に付けるためには練習が必要であり時間もかかります。その学習過程において,深い学びを教室に生むために,生徒が主体的に考える発問の工夫,仲間とやり取りを通して対話的に活動する機会,様々な観点や異なった視点からの見方考え方に出会う場,そこからまた自分の考えを再構築する指導の工夫,試行錯誤しながら授業を計画し日々実践しています。そこでは,検索しても出てこない新たな解決策や考えを生徒が話したり書いたり発信してくれることがあり,私自身も学ぶ日々です。今現在のそしてこれからの社会で,生徒たちが考え解決していかなければならない課題はたくさんあります。生徒と共に考えより良い未来を創っていけるように授業での学びを深める視点,発信力を高める指導の工夫をこれからも続けていき,さらに他の先生方とも共有・対話し,私自身も学びを深めていくことができれば嬉しいです。今回はそのための発信の場をいただき,貴重な機会をありがとうございました。

【参考文献】