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理科

密度の概念形成を深めさせる授業実践
~協働的問題解決を生起させる「知識構成型ジグソー法」を用いて~

広島大学附属東雲中学校 龍岡 寛幸

1.はじめに

2つの物理量を同時に比較できるような概念,例えば小学校6年生で学習する速さであったり,今回紹介する密度であったりは,本質を理解させるには難しく苦手としている児童・生徒が多い学習内容である。そこで,密度について理解を深めさせるために,既存の密度の実験を行う前に,比較する物理量に着目できるような協働的問題解決の課題を設ける授業を実践した。ここでは,協働的問題解決を生起させる手法として「知識構成型ジグソー法」を用いた。

2.知識構成型ジグソー法とは

知識構成型ジグソー法は,生徒に課題を提示し,課題解決の手がかりとなる知識を与えて,その部品を組み合わせることによって答えを作りあげるという活動を中心にした授業デザインの手法である。一連の活動は,以下の5つのステップで構成される。

(1)自分のわかっていることを意識化する

資料を受け取り,思いつく答えを個人で考える。

(2)エキスパート活動で専門家になる

同じ資料を読み合うグループを作り,その資料に書かれた内容や意味を話し合い,グループで理解を深める。この活動をエキスパート活動と呼ぶ。

(3)ジグソー活動で交換・統合する

違う資料を読んだ人が1人ずついる新しいグループに組み替えて,エキスパート活動でわかってきた内容を説明し合う。課題についての理解を深めた後に,それぞれのパートの知識を組み合わせることで,問いへの答えを作る。この活動が,自分の理解状況を内省して,新たな疑問を持つ活動につながる。同時に他のメンバーから他の資料についての説明を聞き,自分が担当した資料との関連を考える中で,さらに理解を深めていく。

(4)クロストークで発表し,表現をみつける

答えが出たら,その根拠も合わせてクラスで発表する。互いの答えと根拠を検討し,その違いを通して,一人ひとりが自分なりのまとめ方を吟味する。

(5)一人に戻る

課題に再び向き合い,問いに対する答えを個人で記述する。

3.授業実践

(1)学習の展開

中学校第1学年「いろいろな物質とその性質」の単元において,密度についての学習を2時間で実施した。

1時間目の目標を「密度の概念からものの浮き沈みを説明できる」として,学習課題を「ものの浮き沈みの原因を探ろう」に設定した。まず,既習事項である水の中の氷やペットボトルの分別など身近にみられる浮き沈みの現象について演示実験を行って,それらの現象について理由を考えさせた。次に,密度を導くための4つのエキスパート資料(別添)を班の各個人に分担して自分の意見が言えるように読み解かせた。その後,同じ資料を持っている他の班の人とグループを作り,話し合いによって資料の内容について理解を深めさせた。さらに,各グループで話し合ったことについて,もとの班に戻り班員に説明させた。また,それらの意見を総括して,密度の概念を用いることで,ものの浮き沈みが説明できることに気づかせた。各班の意見を,他の班と交流させることで,密度に対する理解を深めさせた。最後に,ものの浮き沈みついて個人の言葉でまとめさせた。

2時間目の目標を「物質の密度を算出する実験を考案できる」として,学習課題を「1円玉を構成する物質を調べよう」に設定した。まず,前時の学習から,物質を区別するためには体積と質量に注目すればよいことを見出させた。次に,それらの物理量をどのように扱えばよいか考えさせて,単位体積当たりの質量を比較すればよいことに気づかせた。これをもとに,1円玉を構成する物質を特定する実験を考えさせた。最後に,様々な金属の密度を提示して,実験結果と比較することで,1円玉がアルミニウムでできていることを導かせた。さらに,実験誤差に注目させて,より文献値に近づけるためにはどのように工夫すれば良いか考えさせた。

(2)エキスパート資料の視点(別添

資料1では,鉄1kgと綿1kgの重さを比較することを取り上げた。ここでは,異なる物質を同じ質量集めたときの体積の違いに注目させた。

資料2では,水に溶けやすい気体の捕集方法を取り上げた。ここでは,捕集したい気体が空気より軽いか重いという比較は,同体積の気体の質量の違いに注目していることに気づかせた。(授業の都合上「いろいろな気体とその性質」を先に扱い,捕集方法の区別の際は,空気との密度の比較を空気より軽い重いで取り扱った)

資料3では,アルキメデスの行った金の見分け方を取り上げた。ここでは,物質の質量と体積をどのように扱うことで物質を見分けているのかに注目させた。

資料4では,真水と海水での人の浮き方の違いを取り上げた。ここでは,比較の対象となる基準(真水と海水)の何が変化しているのかに注目させた。

どの資料も4問の構成として,段階的に各資料のテーマを考えていけるように作成した。また,理科を苦手としている生徒でも,各資料の2問目までは到達できるような問いとして,話し合いの場で発言できるよう工夫した。また,各資料は生徒の経験や既習事項を考慮して,興味が持てるテーマを準備した。

4.結果と考察

2時間の学習活動を通して,生徒は自分の意見を持ち寄り,活発に話し合えていた(図1)。
図2に,話し合いの中で使用したホワイトボードの記述例を示す。密度の概念の鍵となる「体積」と「質量」を導けていることがわかる。従来の学習過程では,計算式に実験から得られたデータを挿入することで,物質の密度を算出することを重視していたため,作業としての理解になっていたと思われる。そのため,協働的問題解決の過程によって,密度は単位体積当たりの質量を表していることを気づかせて,新たな単位を導かせる過程を体感させることで,理解を深めさせることができたと考えられる。また,密度の実験を計画させて取り組ませることで,密度の有用性を体験することができ,より学習内容が定着したと思われる。さらに,この学習で得られた密度の概念を活かして圧力について学習した。密度と同様に,本質を理解させるには難しい学習内容であるが,これらの経験を活かして圧力の概念を容易に導かせることができた。このように,「知識構成型ジグソー法」のような協働的問題解決は,2つの物理量を合わせて比較するような概念形成の一つの手段として有効であると考えられる。

図1 話し合い中の生徒の様子
図1 話し合い中の生徒の様子
図2 話し合い活動での記録
図2 話し合い活動での記録

5.おわりに

2つの物理量を合わせて比較するような概念形成には,協働的問題解決の一つの手段として「知識構成型ジグソー法」を用いることは有効であった。しかし,話し合い活動の初期段階において誤概念で説明していく班もみられた。今後は,簡単な観察・実験をエキスパート資料の中に組み込み,その結果から誤概念を防ぐような工夫やジグソー活動からクロストークに移行する過程で,観察・実験を考案させる学習活動を取り入れるなどの工夫を考えていきたい。

注)この実践報告は,龍岡寛幸, 磯﨑哲夫(2015), 「協働的問題解決を生起させる理科授業の特徴 -知識構成型ジグソー法に着目して-」, 広島大学附属東雲中学校研究紀要「中学教育第47集」, 35-40.の一部を引用して紹介した。