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理科

新科目・理数探究に向けた授業づくり

土佐中学校・高等学校 川端 康之・利岡 幸信

1.はじめに

2020年度よりはじまる新テストは,『知識・技能を十分有しているかの評価も行いつつ,思考力・判断力・表現力を中心に評価を行う』試験へと移行される。これからの複雑化した社会を生き抜いていくために必要な力の一つは,理数探究という新たな科目が新設されることからも,多様な文章や図表などをもとに,複数の情報を統合し構造化して考えをまとめたり,その過程や結果について,相手が正確に理解できるよう根拠に基づいて論述したりする力ではないだろうか。

新テスト対策にとどまらず,科学的・数学的な見方,考え方を豊かな発想で活用したり,組み合わせたりする能力を身に付けることは,今後様々な場面で求められることから,中学校・高等学校のうちからその力を定着できるよう努めるべきである。そこで,理科と数学の科目の枠を超え,生徒自ら探究を深め,分析・考察・推論・表現・伝達(報告書作成,発表等)のプロセスを構築できる授業を展開しようと試みた。

【授業の流れ(4時間)】

①関数の総復習と関数を用いた課題(クイズ)⇒②③浮力の実験⇒④理科の分析・考察
※具体的な内容については,こちらの資料をご覧ください。

2.授業展開について

中学2年生の3月に実施した。(本校数学科では,中学校2年生3月で中学内容の一通りの学習は終了)最初の説明の際,基礎的な知識を定着させる授業とは違うという印象を強くもたせたかったため生徒たちに問いかけた内容は以下の通り。

≪テーマ≫関数

① 答え・考え方は一つとは限らない。

② 相手にどのように説明すればわかりやすいかを常に考えて進める。
 →どんな場合も説明の際,文章のみで説明するのがわかりやすいか?

※入試制度が変わることもあり,今以上に論理的思考力・表現/説明力が必要

③ 個人の考え→グループでの議論・考察→個人でのまとめの順に進める。

※グループ議論の際,結論を発表しあうだけではなく疑問点・困っている内容も共有する事

授業の本論に入り,授業展開で留意した事項としては,『考え方が複数ある(答えが複数ある)問題を選択』『基礎知識を定着させる授業とは異なり,班ごとに楽しく取り組める課題を設定』『教員側の発言は必要最低限』にすることである。また,理科の教員と考えを共有したことは,生徒たちがこれまでに未習の内容の実験を取り扱ってほしいということである。既習の実験であれば,結論が判明している分,今回の授業で最も大切な『考える』ということが疎かになってしまうと考えたからである。
制動距離に関するクイズでは,「テーマは関数である」ということだけ言い,「速度と制動距離の関係はである」ということは言わずに進めた。二次関数として考えた班,新たな関係性を構築した班,データが少なすぎて判断できないとした班など各班によってユニークな解答(こちらの資料を参考)が出揃っており,非常に興味深いものとなった。

浮力は,中学1年で概念を履修し,高校1年で定量的に扱う。したがって,中学2年生は浮力という言葉と物体を浮かす力という知識が朧げにある程度というのが実態であろう。

実験の概要は,ビーカーに入れた水の中に物体をつるし,初めのビーカー+水のおもさから変わった分を測定し,その原因を探るといものである。実験の冒頭で,
「ビーカー+水のおもさが100g,物体が10gだとして,一緒に秤に載せると110gを示しますね。では,10gの物体を水中でつるすと110gと比べて,(1)110gより重くなる,
(2)同じ110g,(3)110gより軽くなる,のどれになるでしょう。」
と予想させると,おおよそ(3)が9割,(2)が1割,(1)が若干であった。“110gと比べて”と質問したので,“軽くなる”という概念だけが独り歩きをして,実際に実験をしてみて初めのビーカー+水より重くなっていることに戸惑っている生徒もいた。

実験1は密度測定用体を使って,『ほぼ同じ体積で重さが異なるおもりを水中でつるすと,全体の重さは初めのビーカー+水の重さと比べてどうなるか。』

実験2は密度測定用体や米粉粘土を組み合わせて30gや40gの立体を作り,『ほぼ同じおもさで体積が異なるおもりを水中でつるすと,全体の重さは初めのビーカー+水の重さと比べてどうなるか。』
という目的で実験を行った。(米粉粘土はアレルギーが少ないという理由で購入した。)

実験1は数多くデータを取るために班でどのような工夫をしたらよいか考えるように促し,役割分担など工夫をしている姿が見られた。実験2は体積をどのように測定するかがポイントであるが,「必要なものがあれば相談するように」という程度の指示をした。教員の立場としてはメスシリンダーに気づいてほしいという狙いがあったが,もちろん直方体や錐体,球の体積のように辺などの長さを測り,数学の知識を活用して体積を求めることも必要であると考えていた。生徒は,ある班がメスシリンダーを借りるとそれに便乗して使うという傾向もあったが,“ギョーザ”の立体を作るなど純粋に粘土工作を楽しむ一方で,体積を測ることに苦心しながら工夫をして行っていた。

考察は,数学で履修した関数のような“きれいな”傾向が見られないデータから何を考えればよいのか,中学2年生には高いハードルであり,考察にも,「ジグザグのグラフになりよく分からなかった。」という文章も少なくはなかったが,春休みに親子で考えた生徒もいたようで,答えがないものに対して必死に取り組んだ跡が見られた。

なお本実験は2000年名古屋大学入試問題物理より知恵を拝借した。その点では大学入試にもつながる理数探究としても意義があったと考える。

また9月に,浮力を定量的に履修した高校1年生で同じ実験を行った。こちらは“理想の答え”をもったうえでの実験であったが,中学2年生以上に『教員側の発言は必要最低限』にとどめたので苦心したようである。その中でも力の観点から定性的かつ定量的に考えようとした姿が多く見られた。

中学2年生の生徒の考察と感想および,実験結果をまとめたものをこちらの3点の資料(「浮力実験の考察」「生徒の感想」「実験結果の一例」)にて,高校1年生の実験内容,考察および感想をこちらの資料2点(「高校一年生実験テキスト」「高校一年生の実験結果」)にて紹介する。

3.今後

本年度の3学期に本授業のまとめを行うことを予定している。実験1でおもりの素材の種類ごとに「変わった分‐おもりの体積」グラフを書くときれいな比例グラフになるので,そのことと生徒たちが実際に行った実験結果を比較し,誤差について議論できればと考える。また,中学3年理科で力を履修しているので,浮力に関して次のような問い(啓林館 物理基礎p.71問21に計算問題がある。)に対して個々の考えを議論し合い発表等を行うことで本授業のまとめとする予定である。

“氷山の一角”とはどれくらい “一角”でしょうか?
それは,「大きい(多い)」のでしょうか, 「小さい(少ない)」のでしょうか。

1㎤あたりの氷の質量は0.917g(氷の密度が0.917g/㎤という。)〔水は液体に固体が浮く不思議な物質である。〕,1㎤あたりの海水の質量は1.028g(海水の密度が1.028g/㎤という。)である。図のように,南極大陸にあった氷(以下,氷山と呼ぶ。)が海に崩れ落ちて海面に一部姿を見せて静かに浮いているとき,氷山全体の重さ(重力)と,海水中にある氷山の体積分の海水の重さに相当する浮力がつり合っている。この考えをもとに,海面上に見えている氷山の体積は氷山全体の体積の何%になるか有効数字3桁で答えよ。氷山は氷のみで構成されていると考えてよい。

その上で,冒頭下線部のように,求めた“一角”があなたにとって大きいと感じたか小さいと感じたか,理由と共に述べなさい。

体長約51㎝~90㎝のジェンツーペンギン(目と目を結んでいるような白い帯模様が特徴)
出典;ぺんたあずhttp://platinum-white.com/
Newton 2016年12月号

また,以前に行った『数学の同位角・錯角』と『理科の光の反射・屈折』を結び付けた授業やその他の(数学と理科に限らない)探究授業も模索中である。

例えば「いろ」は物理,化学,生物,地学,美術,家庭科,日常の生活,伝統芸能など様々な形で存在する。それぞれの立場での「いろ」について教員と生徒で議論するのも楽しいと考えられる。

4.参考文献