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理科

天気の学習における手軽な実験・工夫とその実践

栃木県 A教諭

1.はじめに

「天気の学習」これは自分が新採教員のときから,授業の進行が教師主体(いわゆる講義形式になりがち)の,あまりやりたくない単元でした。極力退屈させないためにもできる限り実験など,自分の手足を動かす活動を取り入れていきたい,しかも手軽で予算があまりかからないものが何かできないか考えてきました。幾度かの試行錯誤を繰り返して,紹介するに恥ずかしくないものができたので紹介したいと思います。ご存じの活動かもしれませんが,私なりに工夫した点もありますので,あわせて紹介したいと思います。

2.実験・工夫とその実践

① 班ごとで観察できる前線の観察実験

教科書の写真等で見られる前線のできかたについては,冷たい色水,ドライアイスの冷気等いろいろな手法で掲載されたもの,映像なども見てきました。どれもおもしろそうで興味を引くのも確かです。「この実験をコンパクトにして班ごとでできないか。しかも手軽に安くできないか。」と思い,まずは容器です。横長の,小さくもなく大き過ぎもなく透明感のある容器を探したところ,100円ショップにフィギュアなどを飾るケースがありました(図①)。色水用には100円あたりの体積が一番多い墨汁を購入しました。これで湯や氷を使えばと思い,予備実験を行いました。

ア 寒冷前線モデル

図①の容器に湯(半分熱湯,半分水道の水)で,氷水で3から5倍程度にうすめた墨汁で大丈夫と思いました。色水の方が水よりも確実に密度が大きいので心配はありません。しかしこれでは色水の進みが思いの外速いです。そこでそれぞれにPVA洗濯のりを混ぜ,粘性を与えました。最終的に以下の用具,条件で図②-1~②-4の流れで寒冷前線モデルのようすが数秒にわたり見られます。

用意するもの: 横長透明ケース(21×7×8cm)に熱湯半分,水半分,PVA 洗濯のり30~40ml(アバウトで十分です。この量で寒冷,温暖前線2つの実験を通して一クラスにつき1本分(百円程度)です。)
ケミカルピペット(10ml),氷水で3から5倍程度にうすめた墨汁
(一班分:ケミカルピペット1本分半ぐらいで十分です。また,PVA洗濯のりを少量入れるとよいです。)
方法:

(1) 墨汁をケミカルピペット1本分ほどとります。持ち方を指導しないとたれてしまいます。

(2) 墨汁を図②-1のような位置で一気でない程度にていねいにしぼります。

(3) 墨汁をすべてしぼりだしたらそのまま湯から離します。そのときケミカルピペットを押している指を離してしまうと吸い込んでしまいますので注意してください。

※ケミカルピペットから出てくる墨汁は一度容器の壁に当たりますので右向きに冷たい空気が進むイメージであると,実験前に生徒には伝えています。

イ 温暖前線モデル

色水が浮くのですから,寒冷前線のようにはうまくいかない要素は多いです。授業では墨汁を極力うすめ,熱くし,図③-1のような角度で一気に絞り出して実践していましたが,寒冷前線ほどのインパクトはありませんでした。2度目である以上に説明を加えないとわかりづらかったようです。そこで改良を試み,最終的に以下の用具,条件で図③-1~③-4の流れで温暖前線モデルのようすが数秒にわたり見られます。

用意するもの: 横長透明ケース(21×7×8cm)に氷水(水道水に氷を数個入れ,かき混ぜます。溶け残った氷は観察しにくくなるので外します。),PVA洗濯のり30~40ml(アバウトで十分です。)
ケミカルピペット(10ml),熱湯で15~20倍にうすめた墨汁
(一班分:ケミカルピペット1本分半ぐらいで十分です。また,②の実験で余った墨汁があったら,それを熱湯で薄めて調整してもよいです。)
方法:

(1) 墨汁をケミカルピペット1本分ほどとります。持ち方を指導しないとたれてしまいます。

(2) 墨汁を図③-1のような位置で一気でない程度にていねいにしぼります。(一気でなくても結果は出ます。)

(3) 墨汁をすべてしぼりだしたらそのまま湯から離します。そのときケミカルピペットを押している指を離してしまうと吸い込んでしまいますので注意してください。

※ケミカルピペットから出てくる墨汁は一度容器の壁に当たりますので右向きに暖かい空気が進むイメージであると,実験前に生徒には伝えています。

② 班ごとで観察できる水滴の観察実験とその活用方法

空気中の水蒸気が冷やされて水滴ができる実験があります。容器の壁などにつく現象は日常生活でもよく見られるのですが,空気中に漂う小さな粒などにも付着し,それが霧であり雲であるということに気づかせる工夫を施してみました。

ア 実験への工夫

ぬるま湯を入れたビーカーに氷を入れた金属製の皿を置き,それだけでビーカーの内側の壁面や,皿の下側に水滴ができるわけですが,容器の中に線香の煙を少量入れるだけで(図④-1)霧のようなもの(図④-2)が上下にうごめいて見られます(図④-3)。

イ ワークシートの工夫

上述の実験では,煙があるから中が白くなったと思われがちです。それで,「煙だけで行なった場合」,「ぬるま湯だけで行なった場合」,「煙,ぬるま湯の両方を入れて行なった場合」で比較させて変化の最も大きかったもの,またどのような変化が見られたかを記録させるようにワークシートを用意しました(図⑤-1)。また,実験を行なわせている際,「煙は変化なかったか」「煙が増えた感じがしないか」と見どころを意識させると良いかと思います。ここでは煙の粒に水滴がついたことを言わずに,実験の後に,もう一枚のワークシートに図と文章で自分の考えたことを記述する方法で授業を展開しました。「科学的な思考・表現」の評価で参考にしています。期待する記述として図⑤-2のようなものが生徒から得られました。

図⑤-1

図⑤-2

図⑤-2のように,期待できる記述ができた生徒は半数程度で,煙の粒に気づかせるのにはいくつかのヒントが必要でした。「煙の粒も物質だから・・」「物資は何からできている」などのヒントの投げかけを行なった結果でした。図や表,文章を用いて自分の考えをまとめさせる展開は今年一年多く行なってきました。1学期よりは空欄は少なくなり,積極的にまとめる姿も見られるようになりました。

3.おわりに

「授業を退屈させない」ためになるべく手短なもので簡単な実験を行なわせたり,実験ができない場合は観察した事象の原因を以前に習ったことをヒントとして投げかけ,班で話し合ったまとめを掲示させるなど,"手作業"を努めています。予算,年間時数の問題を多く抱えているのは言うまでもありませんが,これが自分自身の課題と思っています。