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教師の方へ

私の実践・私の工夫(算数)

パターンブロックを数の指導に活かした学習指導の工夫

1年

成城学園初等学校 篠田 達也

1学年 「大きい数」

1.児童の実態

本校では,歴史的に学校独自のカリキュラムを編成してきている。過去の研究の成果から,長年,2年生を学習の始期として,2年生から6年生までの5年間で指導を行ってきた。

1年生においての指導では,本校のカリキュラムにある,「遊び」「散歩」という教科の中で身の回りの数や形の指導を子どもたちの自主性に即しながら行ってきた。ここでの指導は,適時性の問題はあるが,とてもよく機能していて,子どもたちは楽しみながら,数や形に親しんできた。

この精神を活かすことを前提にしながら,昨年度より実験的に1年生での「すうがくあそび」という時間を設けて,授業実践を行った。「遊び」「散歩」の教科では,偶発的に指導の機会が生まれるのに対して,「すうがくあそび」の時間では,ある程度子どもたちに場面を仕掛けて指導を行った。ただし,子どもたちの活動する姿や,楽しんで数に親しもうとすること,そして自由な発想を大切にして展開を考えることにした。

以上のようなことから,児童の実態としては,のびのびと遊びの感覚で,物事をとらえていこうとする子が多いことがあげられる。また,規定の枠にとらわれずに発想しようとする姿をほめて,よい意見がでると皆でほめることができる。その結果,ほめられることをうれしいと感じる子が多いことが,特色としてあげられる。

2.教材観


【形の学習で利用したパターンブロック】

本単元は,学習指導要領では第1学年の内容A「大きい数」にあたるが,上述のように,本校では独自のカリキュラム編纂を行っているため,その内容を考慮しながらも,かなり自由な場面設定を行い,大胆に教材を使ってみることにした。

まず,「パターンブロック」という教材を用いることにした。これは,通常は形の学習において用いられる教材である。それを数の認識において使う試みをしてみた。

パターンブロックは,数種類のピースで構成されている。形や大きさ・色が,ある原理で作られていて,主に図形の「しきつめ」に用いられるのが一般的である。しきつめる時に便利なように,平面に置いた時の「厚さ」が均一になっていて,模様を作る時などに机の上に並べておくときれいに出来る。この特性を活かして,何種類かのパターンブロックの数を比較するという課題を出した時に,子どもたちからこれを利用する考え方が出てきやすいように授業の展開を考えた。

3.指導計画(全3時間)

上記のように,本校においては学校独自のカリキュラムを編纂して指導を行っているため,実験的に様々な試みをしてきている。この実践においても,数の指導の初期に入れて,数を数えなくても視覚的に大小比較が出来ることを示している。

従って,単元名としては「大きい数」になるが,数の指導の導入として,本校では「くらべてみよう」という単元名で指導を行った。

本校のカリキュラムとしては,全体の中でも,最初の方に指導する内容となる。これは,子どもたちの実態調査を踏まえた上で組んだものである。

4.本時の指導について(2時間目/3時間)

○ 本時の指導においては,数の指導の入門期において,数の大小を比較する課題を出して,そこで視覚的に解決する方法に気づかせたい。そのために,入門期としてはあえて大きな数を扱って,数える方法ではなくて,並べてみたり,縦に積んでみたりして,比べる方法によって数への豊かな見方を広げたい。

○ 子どもたちが,算数的な活動を通して,理解を深められるように,的確な意見を引き出し,実際に並べてみることでの把握を促していきたい。

○ 数について数える方法も子どもたちの中からは発想として出るかもしれない。その時に,適切な指導で数えなくても比較できることに気づかせたい。

5.授業の実際

(1)目標 いくつかのパターンブロックの種類で大小の比較をし,多い順に並べることが出来るようにする。

(2)展開

学習活動及び学習内容 指導上の留意点
①パターンブロックを班ごと(6人~8人)に,「つかみ取り」させる。 班ごとに,パターンブロックの各種類が30~60こ程度になるように調整してとらせる。 一見して,大小の差があるので数の比較が難しい状態にしておくことが望ましいので,準備の段階でよく混ぜるなどの配慮をしておく。
②パターンブロックの数を比べるにはどうしたらよいかという課題で,考えさせる。
③「数えてみる」「ならべてみる」などの意見をやってみる。 一年生の段階では,数えることが難しいので,ある段階で時間をみて,ストップする。
④うまく比べるためには,どうしたらよいかを,さらに考えさせる。
⑤「厚み」が一緒であるため,重ねて積んでいって数を「高さ」に置き換えるという意見をとりあげる。 ここで,考えが出ないようなら,パターンブロックを前でよく見るように促し,「厚み」が一緒であることを見つけさせる。
しかし,高すぎると倒れてしまうので,これでもうまくいかないことに気づく。
⑥パターンブロックを「ねかして」並べる。
この方法だと,きれいに並べることも出来,数の大小の比較も簡単にできる。
⑦各班ごとに結果をまとめて,発表する。
⑧並べてみる方法の「よさ」を発表する。

(3)評価

  • 数の大小の比較を,視覚的に並べることにより認識することが出来たか。
  • 並べてみることの「よさ」を発表することが出来たか。

6.成果と課題

(1)成果

  • ① 児童が数の指導の場面においてもパターンブロックを使って活動しながら数の大小の比較について考えることが出来た。
  • ② 実際には,数えることの指導をしなくても,数の認識について豊かな体験をすることが出来た。
  • ③ 並べてみることの「よさ」を感じ取る場面を設けることで,算数の思考過程においての道筋について,一年生の段階での方向性を示すことが出来た。

(2)課題

  • ① 各班で作業をさせていったが,2つの班では数えることに夢中になり,どうしても数えてみたいという,子どもたちの意欲を止めることが出来なかった。結果的に,その班では数の大小比較にまで至らなかった。授業の展開での,さらなる工夫が必要である。
  • ② 「よさ」の発表に関しては,個人差がとてもあり,良く発表できる子と,うまくよさを表現できない子との隔たりが大きく感じた。一年生の成長段階では難しいかもしれないが,さらに配慮を加えたい。