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理科

(2年)鉄と硫黄の混合物を加熱する実験について

(令和3年度以降用教科書「未来へひろがるサイエンス」2年p.176,177の実験3)

本実験につきまして,実験中および実験後に以下の点をご注意願います。

①鉄と硫黄の混合物の加熱で発生する気体につきまして

鉄と硫黄の混合物を加熱すると,硫黄の蒸気や二酸化硫黄(亜硫酸ガス)のような有毒な気体が発生します。以下のことにご留意いただき,安全に実験を行ってください。

○ 実験の前に,生徒に有毒な気体が少量発生すること,正しく行えば心配がないことを伝えるとともに,次のことを十分に説明し,注意を促す。
・加熱時に発生する気体を深く吸い込まない。
・反応させる量については,厳重に守る。
・加熱の際は,試験管の口に脱脂綿でゆるく栓をする。

○ 理科室を密閉した状態で実験を行わない。
・常に十分な換気を行う(換気扇を回す,窓を開けて行うなど)。

○ 実験後は,試料をすべて回収し,室内に置いたままにしない(生徒に廃棄させない)。
・特に,試験管内の物質は実験後,試験管ごと速やかに回収する。

においに過敏に反応する生徒がいることも考えられますので,硫黄の刺激臭が発生することを事前に注意するなどのご配慮をお願いいたします。

万が一,異常を訴えた生徒に対しては,ただちに新鮮な空気を吸わせるなど,適切な処置をお願いいたします。

なお,以前の教科書では,反応前後の物質の性質の違いを調べるために,それぞれの物質を少量ずつ取り出して,5%塩酸をそれぞれ2,3滴加え,発生した気体のにおいを比べる方法を掲載していました。しかし,硫化鉄と塩酸の反応で発生する硫化水素の毒性を鑑み,令和3年度以降用教科書では,この方法を除外しました(結果のみ,教科書2年p.178の本文および側注に掲載しています)。

②実験後の試料につきまして

鉄と硫黄の混合物やその反応物は,実験後,必ず先生方が回収していただき,完全に反応させてから廃棄してください。

鉄粉と硫黄粉末の混合物は,加熱しなくても,水分を加えることによって反応し,発熱します。

未反応の試料を可燃物とともに放置しますと,条件によっては発熱して,火災の起こる危険性があります。また,硫黄をスチールウールなどの鉄分と一緒に廃棄しますと,同様のことが起こる可能性があります。

これらのことによって,実際に小火が起こったという事例もあります。

したがいまして,これらの試料は,可燃物の近くに置いたり,可燃物と一緒に廃棄したりしないようご注意ください。

ご指導にあたりましては,十分ご留意くださいますようお願い申し上げます。

<未反応の「鉄と硫黄の混合物」の処理例>

実験3で残った未反応の「鉄と硫黄の混合物」は試験管に入れて,ガスバーナーで加熱して硫化鉄にし,温度が下がるまで十分に放置してから廃棄します(p.177実験3のステップ2方法2参照)。

試料を回収した際,多量の混合物や反応物が出た場合は,ある程度小分けにして反応させたほうが安全です。